生涯楽しめるスポーツを見つけてほしい~スポコレ代表・八所和己②




さまざまなスポーツイベントを開催するNPO法人スポコレ(以後、スポコレ)。ウォーキングタグラグビーやリングビーを使ったスコアーズなど独自のスポーツを行いながら、誰でも気軽にスポーツを楽しめる場を提供している。代表理事である八所和己さんのインタビュー第2回は、スポコレが大切にしていることについて伺った。
第1回は⇒こちらから

ラグビーを教えるという考え方じゃダメ
参加者みんなが楽しめる空間を作る


――スポコレがスポーツイベントを開催する目的を、もう少し詳しく教えてください。

八所:まず、競技の普及が真の目的ではありません。たまたま私がラグビーをやっていたからコンテンツとしてタグラグビーをやっているだけであって。参加してくれた人たちがどれだけ楽しい時間を過ごせたか、に焦点を当てています。スポーツは勝ち負けがすべてな面もありますが、そこはまったく重要視していません。

――大切なのはそこではないと。

八所:どれだけ楽しくその空間にいられたか、を求めるのが私たちの理念であり目標です。競技の経験者も未経験者も同じように楽しめる空間を作りたい。

参加者は名札を貼りニックネームで呼び合う

――そのためのコンテンツはある意味なんでもいいということですね。

八所:ただし、ルール作りは大切ですね。あえて不平等なルールにすることで、逆に誰もが平等になるとか。全員が楽しむためには、“上手い人が下手になる”スポーツである必要があります。小学校に出張授業へ行くときも、それを前提にしています。

――なるほど。現在の体育の教育にも、改善すべきことがあるとお考えですか?

八所:上手い子が楽しめる体育はもう何十年もやってきて、その弊害がいろんなところに起きているように思います。私たちが目指すのは、体育が苦手な子でも楽しくできるような授業。それが本来の姿になっていってほしと思っています。

――小学校の体育の授業が楽しくないと、スポーツ自体を嫌いになってしまう。

八所:そういうことが多いと思います。そうなると、大きくなってもスポーツをやらないんですよね。もちろんスポーツをやらなくても生きてはいけるでしょうけど、なんとなく損をしているんじゃないかと感じています。

――スポーツをやりたいけど、やれない状況にもなっているように思います。

八所:スポーツ離れにつながっているんじゃないかと。だから小学生へのアプローチは大切にしています。タグラグビーをやるにしても、みんながボールを触れるように。リングビーなら、みんなが得点を取れるように、という授業をしています。

――そう考えると、今の体育の授業は考え直さなくてはいけないですね。

八所:体育の授業にサッカーとかバスケットボールは必要ないと正直思っています。そういうスポーツは、クラブチームでやっている子たちには絶対に敵わないし、その子たちだけが楽しい、となってしまう。みんなが体育を楽しめて、みんながスポーツを好きになるような体育の授業というのを目指したい。そう考えると、誰もやったことのないような競技を体育でやったほうが絶対に良いんじゃないかと思います。

――そういう風に考えるようになったのはいつごろからですか?

八所:スポコレで最初に活動をはじめたときは、当然のようにラグビーを教えていたんですね。“パスはこうやるんだ”“パスをしたらこう動くんだ”と。でもやっていて、違和感があったんですよ。なぜかって今立ち返ると、みなさんはちょっと身体を動かしたいっていう思いで時間と場所を見つけて、ここに来たんですよね。

――ラグビーを教えてもらいに来たわけじゃないと。

八所:その通りです。ラグビーを教えたところで、もともとやっていた人たちに適うわけがないんですよ。じゃあ何が必要なのか?と考えて、ラグビーボールを使って身体を動かす、という考え方にシフトしたんです。

――そうすることで変化が生まれてきたと。

八所:その考えを持つと、いろいろなメニューが浮かんでくるんです。私自身はスポーツプログラマーという日本体育協会公認の資格を取得して、その勉強をしていくなかで、面白いプログラムやメニューを考えられるようになりました。そうしたら、参加者みんなが楽しめるようになっていた。あぁこれなんだな、と。

――新しい一歩を踏み出せたわけですね。

八所:最初は自分も混ざってやって、満足しているところがあったのですが、それがダメなんだなとも気づきました。そこから、自分はやらずに、ファシリテートする側に回りました。自分が中に入ると見えない部分もたくさんあるので、外から見て、楽しめてない人がいるなとか。そこから参加者が増えてきたんです。スポーツをファシリテートする。スポーツファシリテーションこそスポコレが基本とする考え方です。

次回は、八所さんがスポコレとしてさらに目指していることに焦点を当てます。

取材・撮影/木村雄大

★ウォーキングタグラグビーの紹介記事は⇒こちら
★編集Yによる体験記は⇒こちら
★次回のスポコレ ウォーキングタグラグビーは8/20(月)に開催。詳細はスポコレホームページまで!

八所和己(やところ・かずみ)
1970年1月生まれ、東京都出身。NPO法人スポコレ代表理事。一般企業で働きながら、スポコレではさまざまなスポーツイベントの開催、学校での出張授業などを行っている。
スポコレで活動の際のニックネームはヤディ。
スポコレホームページはこちら→http://www.spocolle.com/