【石森太二の「TAIJI THE WORLD」第6回】トレーニングとモチベーション




プロレス界でも屈指の筋肉美を誇る石森太二選手の連載コーナー『TAIJI THE WORLD』。プロレスという見られる職業柄、コンディショニングには相当な気を使う。トレーニングもほぼ毎日欠かすことなく行なっているという石森選手のモチベーションを高める方法とは!?

何かを得るためには
何かを捨てなければならない

プロレスという仕事は人に見られる職業であり、魅せられる体であることは当然こと。常にいい状態でありたいと思っているので、毎日トレーニングするのは特別なことではなく、自然なことです。ただ、トレーニングは当たり前である一方で、惰性でやるようになってしまっては、成果は上がりません。トレーニングをする上でのモチベーションは、プロレスラーでもボディビルダーでも一般の人でも、とても大事だと思います。

連載第2回でも書いたように、自分のトレーニングの師匠は山本義徳さんです。あのものすごい体を見て、自分もあんなふうになりたいと思ったので、一目で見て驚かれるような体を目指しています。「十分すごい体をしている」と言ってもらえることもありますが、自分ではそうは思っていません。肩は小さいし、上腕二頭筋ももう少し膨れ上がっていたほうがいいし、上腕三頭筋や背中もまだまだ弱く、パーツ、パーツで見たら足りないところだらけです。

ボディビルダーの方たちは、筋肉という部分だけを見たら理想的だと思います。しかし、第一人者である鈴木雅さんもおっしゃっていたように、ボディビルダーの筋肉はあくまでも見せる筋肉なので、スポーツ選手が競技で使う筋肉とは必ずしもイコールではありません。筋肉が大きくなりすぎると、それだけ可動域が制限されてしまうこともあり、競技に支障をきたす場合があります。

自分の体づくりの目標は、ボディビルダーに近い感じで筋肉をつけて、それでなおかつ動ける体です。筋肉をつけて筋力がアップすれば、どんな競技でもプラスに作用することは間違いないと思います。問題はその筋肉をどのように競技に生かしていくかということ。走ったり、飛んだり、取っ組み合ったりということに生かせるように、普段のトレーニングから意識することが大事だと思います。

クロスフィットの選手はパーツ、パーツの筋肉が大きくても、走るのが速かったり、バク宙も軽々とできたりする選手がいます。体操の選手も筋肉が発達していても素早い身のこなしができます。プロレスとは違う部分も多いですが、筋肉が大きくて動けるという部分では理想に近いのかもしれません。自分は肩甲骨や肩関節が硬いので、現在は可動域を広げたり関節を柔らかくするようなモビリティムーブメントも取り入れています。

「何かを得るためには何かを捨てなければいけない」という持論があって、理想の体を手に入れるために、飲みに行きたいというような欲求は捨てて、普段はまったくお酒を飲みに行くということはなくなりました。誘われて飲みに行くときは翌日のトレーニングは休みにするなど、メリハリをつけるようにしています。

毎日トレーニングをしていれば気持ちが乗らないことも当然あります。そんなときは無理してやるのではなく、休むことにしています。休養日をとると、次にトレーニングをするときは、「休んだぶんも今日は頑張るぞ」というやる気につながります。モチベーションは体調にも影響されると思うし、ケガにつながるリスクもあるので、体調が良くないときは無理をしない。これが一番大事だと思います。

石森太二(いしもり・たいじ)
1983年2月10日、宮城県出身。闘龍門に入門し、2002年5月11日、メキシコ・アレナ・コリセオでの橋本史之戦でデビュー。2006年からNOAHに参戦し、GHCジュニアヘビー級王座最多防衛記録となる10度の防衛を記録。2018年にNOAHを退団し、現在は新日本プロレスを主戦場として、ジュニアヘビー級戦線で活躍している。プロレス界でも屈指の筋肉美の持ち主。