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運動嫌いの人でも毎日やっている運動【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第86回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? ラグビーワールドカップ(RWC)が盛り上がっていますね。第80回第81回のコラムでRWCについて書きました。このときは「ラグビーなんて興味ないよ」と思っていた方も気持ちが変わっていると思うので、ぜひ南アフリカ戦を前に読んでみてください。

さて、プロ野球の日本シリーズがいよいよ開幕し、Jリーグは終盤戦に突入。大学駅伝のシーズンも始まり、スポーツ界はますます盛り上がっていきます。選手たちのプレーに触発されて、スポーツをしたいと思う人がいる一方で、「スポーツは苦手なのでできません」という人もいることでしょう。“スポーツ”というとハードルが高く感じることもあるのかもしれませんが、難しいものばかりではなく、誰にでも簡単にできるものもあります。東京都はスポーツを次のように定義づけています。

「東京都はスポーツの範囲を、野球やサッカーなどの運動競技だけでなく、健康を目的に行なう身体活動、遊びや楽しみなどを目的に行う身体活動まで幅広く含むものと定義しています」(「TOKYO style 2019」より)

ルールに基づいて勝敗や記録を競うものだけでなく、気晴らしのための散歩や、通勤途中に歩いて階段を昇るといった行為もスポーツとして捉えるということです。エスカレーターやエレベーターを使わず、階段を歩く。雑巾で床の拭き掃除をする。ペットの散歩に行く。これらの行動がスポーツだと考えれば、それほど難しいものではないと思えるはずです。

日常生活のなかで行なう運動とは別に、人間が毎日無意識に行なっている運動があります。それは「呼吸」です。人間が生まれて最初にする運動が呼吸であり、人間はこの運動をしないと生きていけません。呼吸はすごい運動なんです。

(C) Monet-stock.adobe.com

肺の周りの筋肉が動くことで肺が広がったり縮んだりするのが呼吸です。呼吸に関連する筋肉を総称して「呼吸筋」と呼びます。お腹の中にある横隔膜や、背中の僧帽筋、脊柱起立筋などが、これに含まれます。呼吸筋が衰えると、呼吸が浅くなったり、少し動いただけで息が上がったりしてしまいます。逆に呼吸筋を鍛えると深い呼吸ができるようになって、全身に酸素が十分に行きわたるようになり、集中力が増す、疲れにくくなるといった効果があると言われています。

……と、小難しいことを言っても呼吸の何がすごいのかはわからないと思うので、「こんなにすごい!」という実例を紹介しましょう。

過去に何度も書いているように学生時代は試合のたびに10㎏を超える減量をしていました。とにかくラスト1㎏くらいになるとエネルギー不足で体がきつい。試合のたびに減量に苦しんでいた私に、あるときスポーツトレーナーの方が、「計量の24時間前までに1.2㎏オーバーまで落とせばいい」とアドバイスをくれました。聞けば、人間は呼吸という運動をすることで、2時間に100g体重が減るというのです。つまり一日1.2㎏は体重が減るということ。だから計量の24時間前までに1.2㎏オーバーまでもっていければ、確実に計量はクリアできるということです(もちろん飲食はなし)。最後のきつい1㎏はハードな練習をしなくても、呼吸をしているだけで落ちるというアドバイスでした。

当時はスポーツトレーナーという職業が確立されていない時代。「本当かよ?」と半信半疑でありながら、何もしないで体重が落ちるならこんなに楽なことはない。そう思って2時間おきに体重をチェックすると、しっかり100gずつ体重が減っていきました。体脂肪率は5%まで落ち、夏場でも汗がでないほど絞れた状態であるにもかかわらず、です。そんな極限の状況でも2時間ごとに100g減。呼吸は基礎代謝の一つでもあるので、体重が減るのは当たり前といえば当たり前なのですが、これは驚きでした。この減量方法は私の体に合っていて、計量後の回復も早く、手足がつるようなこともなくなり、一日練習を休んだことでエネルギーも湧き出てきて、いい状態で試合に臨むことができるようになりました。

ということで、呼吸はすごい運動なのです。一般の方は極限状態で体重を減らすという機会はないと思いますが、ラジオ体操のような深呼吸を毎日するだけでもちょっとした運動効果を得られることは間違いありません。呼吸は動かなくてもできる運動です。運動嫌いの方はぜひ試してみてください。

 

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。