スポーツ深読みシリーズ~スポーツクライミング【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第91回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 先日、スポーツクライミングの第一人者で、東京2020オリンピックのメダル候補でもある野口啓代選手を取材させていただきました。野口選手のインタビューは別媒体での掲載となりますが、ここではスポーツクライミングの競技の魅力を紹介していきましょう。

スポーツクライミングは自然の岩場での冒険的な挑戦にそのルーツを持ち、身体的な可能性を追求していく過程で愛好家が増え、「競技としてのスポーツクライミング」が確立されました。競技の歴史は新しく、1989年に開催されたワールドカップが最初の国際的な規模の正式な大会。1991年には世界選手権がスタートし、2016年8月に、東京2020オリンピックでの正式採用が決定しました。

東京2020オリンピックでは、3つの種目(スピード・ボルダリング・リード)の複合種目として実施されます。通常は単種目として行なわれるスピード・ボルダリング・リードをすべて行ない、3種目の合計で順位がつけられます。日本はこの3種目のうち、ボルダリングで圧倒的な強さを誇るボルダリング王国です。

それでは各種目の特徴を紹介しましょう。まずはスピード。この種目はその名の通りスピードを競うもので、予めホールド(壁にある人口の石)の配置が周知された15メートルの壁をいかに速く登るかのタイム勝負です。トップ選手になると男子は5~6秒、女子は7~8秒で駆け上がります。

続いてボルダリング。こちらは高さ5メートル以下の壁に設置された複数のコース(課題と呼ばれる)を制限時間にいくつ登れたかを競う種目です。ルートセッター(※人工壁にクライミングルートを設定する有資格者)が作った壁を選手が見ることができるのは競技直前で、選手はわずかな時間で観察してコースを読み解きます。どのような手順で登ったら良いかコースを読むことがポイントであり、「体を使ったチェス」と呼ばれるように、体力だけではなく考える力も必要となります。

最後にリード。こちらは12メートル以上の壁を登り、制限時間内での到達高度を競う種目です。他の種目よりも長い距離を登るため、ルートを見極める力と体力も大事になります。

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種目の特徴に続いては、スポーツクライミングの雑学を紹介します。一つ目はボルダリングの壁。この壁は大会の直前につくり、大会が終わるとすぐに壊してしまいます。ボルダリングはコースを読み解きながら登っていくところがポイントであり、選手がコースを事前に知っていてはいけません。そのため、一度大会で使用した壁は使えないので、せっかくつくり上げたものをすぐに壊してしまうのです。もったいない!

続いての雑学はシューズ。スポーツクライミングのシューズは、他のスポーツのシューズと違い、指が曲がるほどきついものを使用します。ホールドを足の指でつかみやすくするためというのがその理由で、履いたときにシューズの中で足の指が曲がるほどのきつさ。靴底がやわらかくて滑りにくい特別なクライミングシューズを使用します。きついシューズを履くため足の指にタコができやすいそうです。

以上、簡単ではありますが、スポーツクライミングを紹介させていただきました。現在は野口選手のほか、男子は楢﨑智亜選手が東京2020オリンピックへの出場権を獲得。楢﨑選手は今年の世界選手権で金メダル、野口選手は銀メダルと、どちらも東京大会は優勝候補。日本は他にも実力のある選手が数多く揃い、メダル量産の期待がかかる種目でもあります。ぜひ注目してみてください。

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。