心身健康俱楽部・枝光聖人の 「これならできる! はじめての筋トレ」 ~第5回 40〜50代男性の手抜き筋トレの極意〜

運動習慣のない人にもできる筋トレ法を紹介するこの連載。今回は実践編として、40〜50代の運動がニガテな男性に向けたトレーニング法を紹介します。体力でのりきった30代を終え、疲れを顕著に感じるこの年代。仕事や家庭生活で忙しくても、継続できるコツを、パーソナルジム『心身健康倶楽部』代表の枝光聖人さんが紹介します!

シャツからのぞく盛り上がった上腕二頭筋。
筋トレは「上半身」から!

「私が代表を務める『心身健康倶楽部』では、上半身の小さな筋肉からトレーニングを行ないます。特に腕から始めます。男性の場合はそれが特に大事です。日本全国の他のジムでは、スクワットのトレーニングからスタートしているので、私のやり方は、フィットネス業界の常識とは真逆のものだと思います。一般的なトレーニングでは、大きな筋肉から鍛えていって、腰、足、胸、背中、肩、腕といった順番で行ないます。大きな筋肉ほど体力を使うからエネルギーがあるうちにやらないと、後半、バテて、トレーニングができなくなるからです。そのため、最後のほうに負荷の少ないパーツを鍛えていくわけですが、それでは、運動不足の中高年は挫折してしまいます」

下半身の大きな筋肉を鍛えると基礎代謝がグンと上がるが、継続しなければ意味がない。また、男性は上半身の筋肉に比べて、下半身が弱い傾向にあるという。どこのジムでも男性は上半身のトレーニングを好んで行なうため、モチベーションを保つ意味でも、“上から攻めること”が大事なのだ。

「鍛えた上半身は目立つので、人に褒めてもらいやすいというメリットもあります。それを表すかのように、巷では、ボディビルからフィジークに人気が移ってきています。ユーチューバーの動画も多いですし、フィジークのレッスンをすると、すぐに定員が一杯になります。特に若者の間で流行っていますね。

ボディビルは筋肉の体積を大きくして、体を大きく見せる競技ですが、フィジークは、体の筋肉のバランスを重視しています。また、フィジークは、逆三角形のラインに重きを置いていて、上半身を鍛えて自分が憧れる体になるということに、関心が持たれています。逆に、下半身の筋肉をトレーニングで作ったとしても、ズボンに隠れて見えず、人に褒めてもらえる機会はそうありません。そういう意味でも、上半身へのアプローチはまだまだ元気な40代に良いと思います」

上半身の中でも、まず1番に鍛えて始めるのが、「腕」だ。TシャツやYシャツからたくましい上腕二頭筋が出ていると、つい目が行くというのが理由の1つだという。

「腕は非常に象徴的なパーツです。鍛えれば鍛えるほど、『良い腕をしていますね』と声をかけられて、周りから注目されます。たしかに、初心者の方に『腕から鍛えましょう、余裕があったら肩もやりましょう』と言うと、『えっ』と驚かれます(笑)。でも、腕のトレーニングはそれほどキツくないし、鏡で見ても、良くなってきたなと実感できます。たくましい腕が出来上がって、そこにバシッとした肩幅もできてくると、会員さんのモチベーションが変わってきます。次に胸や背中をトレーニングして、厚みのある胸や広い逆三角形の背中が出てくると、どんどん先もやりたくなっていきます。」

 

実践編1 筋肉の位置を把握する

 

では上腕二頭筋のトレーニング方法を紹介しよう。まず大切なのは、『筋肉がどこから生えて、どこにくっついているか』ということを知ること。なぜならば、筋肉というのは、神経の指示によって動くからだ。脳が『筋肉の正しい位置』を知っていると、筋肉を動かしたり伸ばしたりするときに、より正確な位置に刺激を与えることができる。そうするとパフォーマンスがより上がる。

「トレーニングに慣れていない人は、筋肉の位置について意外と把握していません。筋肉というのは、『骨と骨とを結ぶゴム』のようなものです。さて、お腹の筋肉はどこから始まって、どこにつながっていると思いますか? 腹筋というと、おへそ周りだけと思うかもしれませんが、腹部にある『腹直筋』は、肋骨の下から恥骨まで長くつながっています。筋肉がどこから生えて、どこまでつながっているかという起始停止を理解すること。筋肉のイラストでも写真でも良いです。トレーニング前に、上腕二頭筋の正確な位置を知っておきましょう」

(C)dissoid-stock.adobe.com

 

実践編2 適度な負荷がかかるものを持つと、脳への刺激が増す!

筋肉トレをするときは、自分の体重の他にも、「負荷がかかるもの」を持ってトレーニングすること。ダンベルでも、ペットボトルの水でもOK。何かしらの負荷があるものを持つことで、トレーニングの効果はより上がるからだ。

「筋トレというのは、脳にどれほど刺激を与えられるかが勝負です。筋肉に負荷をかけてストレスを与えると、脳は『その重りを持てるようにその筋肉を発達させなさい』という指令を神経から出します。神経から指令が出て内臓に届くと、内臓はタンパク質をアミノ酸に変えて、栄養として吸収します。また、脳からの指令により、骨を強くしたり、骨と筋肉を結ぶ腱を強くしたり、さらに血液を循環させて、酸素を供給するなど、さまざまな仕事をします」

自分の体重プラス、ダンベルなどで刺激を与えると、脳から体に伝わる筋肉の刺激の量は変わる。ムリのしすぎはNGだが、10kgの重りを持ち、さらに持つ角度を変えたりすることによって、体の筋肉に伝わる刺激が変わっていくという。

 

実践編3 筋肉は「伸ばすこと」で増える!

 

さて、ここでちょっとした実験をしてみよう。「腕を曲げたとき」と、「腕を下ろしたとき」、どちらがより刺激などの感覚を感じただろうか? 多くの場合、下ろしたときに、伸びるような刺激を感じたはずだ。

「実は、脳からの刺激は、筋肉が縮むときよりも、伸びて下ろしたときのほうが強いのです。ストレッチでも、体を伸ばしたときに痛みや気持ち良さを感じますよね。一般的には、筋肉を縮めたときには感覚が薄くて、伸びたときのほうが強い。つまり、脳から筋肉への刺激の量を増やすには、『伸ばすこと』に注目することが重要なのです。ジムのトレーニングでは、『ダンベルを何kg上げたか』を数えますが、そうではなくて、『何kg下ろしたか』。そこに注目してトレーニングを行なうと、より少ない回数で結果を出せます」

伸びて下ろすときに脳への刺激が強い

●上腕二頭筋のトレーニング

(1) 上腕二頭筋の起始(開始部分)と、停止(終了部分)を確認する。
上腕二頭筋は、長頭と短頭の二頭で構成されている。

長頭の起始:肩甲骨の関節上結節
長頭の停止:結節間溝

短頭の起始:長頭の内側の烏口突起
短頭の停止:橈骨の上端

長頭と短頭に触れて、開始位置と、終わる位置をそれぞれ確認する。

(2) 筋肉に負荷をかけるために、ダンベルなど(ペットボトルでも可)を用意する。

(3) 上腕二頭筋に力を入れる。1秒かけて、力を入れたまま、ゆっくり曲げる。上腕二頭筋は普段体の内側に入りこんでいるが、伸縮させると、くるっと回転する。

(4) 上腕二頭筋に力を入れたまま、3秒かけて、ゆっくりと降ろしていく。筋肉が伸びる感覚をしっかりと感じる。

(3)〜(4)を3回繰り返す。

 

まとめ 筋肉は「伸ばすこと」で増える!

 

このように、ゆっくり、じわーっと筋肉を伸ばしていくと、体が温まり、心地よさが感じられるようになる。自宅で継続できるように、週1回から始める。ムリのない範囲でトレーニングすればOKだ。

「上腕二頭筋は、筋肉が小さいので運動をする上でラクです。足のトレーニングなどのキツい内容は、効果も出やすいですが、モチベーションが必要なので、おすすめできません。息切れもするし、メンタル的にもきつく、体も呼吸が荒くなってしまいます。ハアハアするし、エネルギーもたくさん使うし、メンタル的にもきついわけですね。そういえば、一時期流行なった加圧トレーニングはすぐに廃れてしまいました。つまり、一般の人には負荷の高いトレーニングは向かないわけです。どんな人であれ、やはり、ベーシックなトレーニングに勝るものはないと思います」

 

取材・文/三島衣子


枝光聖人(えだみつ・まさと)
心身健康倶楽部代表取締役。パーソナルトレーナージャパン株式会社。人間総合科学大学人間科学学士。心身健康科学修士。厚生労働省認定ヘルスケアトレーナー等。ゴールドジムでアスリート向けのスポーツトレーナー等を経験した後、中高年へのトレーニング指導へと転向、「心身健康倶楽部」を設立。以後15年に渡る経験トレーニング指導を持つ。東京に四谷店、新宿御苑店、あざみ野店、イオン西新井店、神奈川に横浜元町店、大阪に高槻店の6店舗がある。著書に『毎日の不便を「喜び」に変える筋力アップの方法 老筋トレ』(法研)、『はいはいエクササイズ』(ベストセラーズ)等。
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