世界最高!? モスクワの極上ジム CROCUS FITNESS<後編>




世界各国のジムを紹介する本連載「世界のジムから」。前回は『モスクワ CROCUS FITNESS ПЕРВЫЙ』の”一般エリア”についてお伝えしたが、後編となる今回は”専門エリア”と”リカバリーエリア”について紹介する。

一般エリアを抜け、施設内の奥に進むと、いくつかの専門エリアが出現する。
まず目に飛び込んで来るのは、格闘技エリアだ。


MMA(Mixed Martial Arts:総合格闘技)用のケージが鎮座している。どうやら、MMAのレッスンも行なわれているらしい。

東京都内では、客席を確保した上で、プロの試合で使用する大きさのケージを場内に設置できる会場が少なく、MMA興行を行なう会場が限られている。格闘技専門ジムではないにも関わらず、ケージが常備されているこの環境。日本の格闘技関係者が羨む充実ぶりだ。

ケージだけではない。さらにはリングも複数置かれている。

しかも、そのリングの1つは、各種サンドバッグを吊り下げた、打撃打ち込みコーナーとなっている。

斯くも充実した格闘技施設があるかと思えば、その付近には卓球台も。

卓球強国と言えば中国だが、過去にロシアは、1969年世界選手権で女子団体、女子ダブルス優勝などの実績を残したゾーヤ・ルドノワを輩出している。総合体育館に卓球スペースは定番かもしれないが、ジムに卓球台とは、流石スポーツ大国ロシア、懐が深い。

ジムに卓球台は珍しいように思うが、スタジオを併設することはジムの経営において常識的なことであり、これまたジムの充実度を測るバロメーターの1つと言えよう。

CROCUS FITNESSのスタジオは、1つだけではない。多目的スタジオにバレエのスタジオ、さらにはポールダンス用のスタジオまでもが、独立して設置されているのだ。

こうした格闘技やバレエなどの競技特化型のスペースとは別に、さらに異なるエリアが存在する。

近年、ラグビーなどの競技では、S&C(Strength and Conditioning)という用語が常識となりつつあり、その指導を行なうS&Cコーチの存在が注目を浴びている。筋力、持久力、スピード、柔軟性などの様々な体力要素を統合的に向上させ、怪我を予防し、競技パフォーマンスを向上させることが、S&Cの目的だ。

ファンクショナルトレーニングや、パフォーマンス向上を主目的としたハイパフォーマンストレーニングを行なう場合、一般のウエイトトレーニングの機材とは似て異なるマシンや設備が必要になることがある。各競技のチーム専用施設には置かれるものの、一般のジムには設置されないものだ。

ところが、その需要を満たすエリアが、ここCROCUS FITNESS ПЕРВЫЙにはあるのだ。



ウエイトトレーニング用チェーン、巨大タイヤ、ランドマインベース、プライオボックス、吊り輪、雲底、クライミングロープ、スレッド、バトルロープ、カーディオローイングマシンなどなど、トップクラスの競技選手の需要にも対応できる、高次元かつ幅広いラインアップだ。

心肺機能向上や有酸素運動目的のマシンとしては、エアロバイクやトレッドミルが一般的。プロチームであれば、カーディオローイングマシンも活用している。

しかし、これらは足を怪我している時、その怪我の部位や状態によっては、使用することができない。そんな時は、上半身を使って心拍数を上げることが理想的だが、そのマシンもCROCUS FITNESS ПЕРВЫЙには備えられている。

CROCUS FITNESS ПЕРВЫЙの売りが、敷地面積の広さではないことは、既に前編で記した通りだ。このジムがいかに多様性に富み、しかも高い次元の要求に応える機材と設備を揃えているか、ご理解頂けたことと思う。

トレーニング後に必要な設備も充実している。シャワーはもちろん、ジャグジーやソルトルームなどなど。CROCUS FITNESSのロゴには、“Sport & Spa”という文字が併記されているが、SPA-салонと表記される、美容系の、いわばエステのようなサロンも用意されている。

なお、入場の際、フロントで手続きをすると、磁気反応式と思われるロッカーキーを渡される。ジムのレンタルタオルを利用すると、もれなく古くて匂い付きのタオルが渡されるという、不運かつ残念な事態に見舞われる可能性がある。だが、CROCUS FITNESS ПЕРВЫЙに用意されたタオルは、極めて清潔だ。

ラウンジは、独立したカフェを思わせる造り。もちろん、メニューにはプロテインも並んでいる。筆者も、この日のトレーニングにプロテインで乾杯。

なお、ロビーとラウンジ付近には、50mのプールもある。

見るからに清潔なこのプール、それ自体の利用を目的としても、トレーニング後のリカバリーを目的としても良さそうだ。

気になる費用だが、正直に告白すると、全くわからない。ロシア語がわからないために料金体系を把握できていないこともあるが、運良く招待状を得ていたため、少なくとも自分では支払っていないのだ。各種会費料金と思しき表を見ているが、結構高額だったような記憶がある。翻訳機能を使いつつHPを閲覧したが、どうやらワンデイ利用は可能ながら、料金は明記されておらず、問い合わせて回答を待つ必要があるようだ。

斯くも充実したジムであるため、少し高いと感じる金額を要求されるかもしれない。だが、それでも利用してみたいと思わせる、極めて充実したジムであることは、本稿内容からご理解頂けることだろう。

なお、ロシア語がわからないなりにHPを閲覧してみると、CROSCUS FITNESSは、2020年2月時点で、モスクワに7、サンクトペテルブルクに1、計8店舗を展開しているらしいことが伺える。筆者が利用したCROCUS FITNESS ПЕРВЫЙは、英語のfirstに当たるПЕРВЫЙが付くことからわかるように、最初にできた店舗のようだ。

本連載で最初に選んだ、CROCUS FITNESS ПЕРВЫЙ。モスクワ訪問の際には、是非お勧めしたいジムである。

 

CROCUS FITNESS ПЕРВЫЙ
住所:66-й км МКАД, ТРК Вегас Крокус Сити, ст. м. Мякинино
営業時間:月~金06:00~24:00(?)/土日08:00~24:00(?)
Tel: +7 (495) 236-11-00
E-mail: info@crocusfitness.com
HP: http://crocusfitness.com/
Facebook: https://www.facebook.com/crocusfitness/
Instagram: https://www.instagram.com/crocusfitness/
vk (ВКонтакте): https://vk.com/crocusfitness

 

取材・文/木村卓二(きむら・たくじ)

本業はTVディレクター。複数言語に通じ、ラグビー日本代表スクラムコーチ通訳(フランス語)、ラグビーW杯Broadcast Venue Manager、FIFA W杯Broadcast Liaison Officerなども歴任。世界各国のStrength & Conditioningコーチに感銘を受け、究極のトレーニングを求め、取材と研究に勤しむ。認定フィットネストレーナー資格を持ち、格闘家などへの指導も行なっている。