「使える筋肉」の作り方を広める伝道師 ②ワークショップを体験




ホグレルでは定期的に自社機器を置いたジム、「ホグレルスペース」でワークショップを開催している。最終的には自社機器・「ホグレルマシン」の販売促進が目的だが、ユーザーにも使い方を学んでもらうため、地道な活動を続けている。今回のワークショップには、整形外科や介護施設のスタッフとして働く人たちが10名弱集まった。元独立リーグの投手の相原さんが担当とあって、野球経験者も何人かいた。

ワークショップはまず、相原さんによる投球動作の解説から始まる。まずは、ボールを投げるという複雑な動作において体のどの部分がどう動くかを理解し、その上で、それに必要な部分を「ほぐす」運動をホグレルマシンで行おうということだ。

「まずは腕を大きく回してみてください」と相原さん。一同思い思いのやり方で腕を回す。左右の腕を同じように回す人が多い中、記者は左右の腕を交互に回した。「それ、いいですね」と相原さん。この方が肩甲骨がスムーズに動く。

今度は、90度に曲げた両腕を下から持ち上げるようヒジを外側に回し、額の前くらいで両ヒジをつけながら真っすぐに下ろして、掌が顔の前に来るくらいで両方の前腕がぴったりくっつくようにし回旋運動を繰り返すよう相原さんの指示が出る。これが投球の基本的な腕の動きだそうだ。意外だったのは、この際ヒジはあまり体の後ろにもっていかず、両肩を結ぶ線の30度程度前くらいでいいことだった。この時点でこれ以上後ろにもってこようとすると、僧帽筋を使い過ぎてしまうらしい。

「僧帽筋は結局知らず知らずのうちに使ってしまうんです。だから使い過ぎると力が入りすぎてしまいます」

要するに肩こりの原因だ。確かにこのワークショップの後にいつも通っているジムのトレーニングプログラムに参加したが、参加者の後姿を見ていると、腕を動かす運動ではほとんどの人の肩が上がっている。これでは肩甲骨はスムーズに動いてくれない。

記者の場合、かつて筋トレにハマってしまった経験があるため、腕を前にもっていったときに窮屈になる。早い話、体の前で両前腕をくっつけるのが難しいのだ。バーベル好きの人がよくなる現象で、こうなると肩が胸筋に引っ張られ、いわゆる「猫背」になり肩こりを引き起こす。つまりここが私の「ホグレル・ポイント」なのだ。

そして次は下半身。「6歩半」。これがピッチャーの標準的なステップ幅と言われている。まずは自分でその6歩半を測り、その幅に足を広げる。

ピッチャーのステップ幅に足を開く

 

「広っ!」。 率直な感想だ。

「ではそのまま背筋を伸ばして、それから左右の足に体重を乗せ換えてください」と言われ、実行しようとすると、ほとんどの人がよろめいてしまう。正直この幅に足を広げて真っすぐヒザを曲げるだけでもしんどい。ついつい上半身が前のめりになる。この幅で、いわゆる軸足に体重を乗せきり、その後、今度は反対側の踏み出し足に体重を移し替えるのが投球の際の基本的な体重移動でこれがうまくいくと球に体重が乗り、軽く投げてもスピードが出る。

そしてそれが終わると、足を広げたまま背筋を伸ばした姿勢に戻り、両腕を地面と平行に大きく開くよう言われる。そして、「では皆さん。グローブを持つ手の方を向いてください。それで、投げる方の掌を水平に動かして目の前にあるグローブを持つ方の掌と合わせてください」という相原さんの指示が飛ぶ。

ほとんどの人は、グローブを持つ側の掌の位置はそのまま、利き腕の肩を体の中心部に寄せるようにして上半身を捻り、両手の掌を合わせようとする。その様を見て、すかざす相原さんから指摘が入る。

「下半身を使いましょう」

一度利き腕側の足、つまり軸足に体重を乗せ、骨盤ごと踏み出し足に体重を移動させる。このとき、軸足は元の位置から離れてもいいのだ。というより踏み出し足に勢いよく体重を乗せ切ると、自然に軸足は踏み出した方に骨盤の回転とともにもっていかれる。

「ねっ。投球動作になるでしょう」

続いて、踏み出し足側の掌を斜め上方に向け、利き腕の掌をボールを投げる角度まで上げ、振り下ろしながら骨盤を回すと、それはもう投球フォームの一歩手前。その下半身の動きのまま、最後はいちばん最初の腕の回旋運動を組み合わせれば、それはもう投球フォームそのままということになる。

教えられたとおりに体を動かす記者に相原さんは、「いいですね。これで10キロは球速が増しますよ」。さすがにいい歳をこいたオッサンにそれはないわと思いながらも、悪い気はしない。

「でも、皆さんこの動作をするのに、窮屈な箇所があるでしょう。今度はそれをマシンほぐしていきましょう」

筋肉を強化するのもいいが、まずは固くなって動きが悪くなった筋肉や腱をほぐすことによって、現状の筋力のパフォーマンスを高めよう。そのため器具が「ホグレルマシン」なのである。

動作を実演する相原さん

相原さんがこのマシンと出会ったのは、独立リーグ時代。

「それからは、重いウェイトを使ったトレーニングはしませんでしたね」

独立リーグ入団2年目、相原さんは17勝でリーグ最多勝に輝いた。
つづく

 

取材・文/阿佐智

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