長時間の静的ストレッチは体に悪いんですか?




誰もがおそらくやったことであるであろう、ストレッチ。体を伸ばすこと……と、みんな理解はしているだろうが、実はもっと奥が深いもの。この連載企画では、そんなストレッチのエキスパートである長畑芳仁先生に、ストレッチの奥深さを話してもらう。今回は、長時間の静的ストレッチについて。

A.必ずしも体に悪いわけではありません。

近年になって「運動前に静的ストレッチをやるとパフォーマンスが低下する」「運動前には動的ストレッチをやるべき」と言われるようになり、またその情報がさまざまなメディアを通じて流布されていきました。そこにはもちろん、実験から導き出された根拠があります。

長時間のスタティックストレッチングが瞬発的な競技のパフォーマンスを低下させることは事実のようです。しかし、研究によっては1時間もストレッチをするような物もあります。マイナスの結果を導く研究がある時期に多く行われたために、静的ストレッチを運動前に行うとパフォーマンスが落ちるという説が広ってしまいましたが、それは誤解です

私は長きにわたって、大学の授業で学生にアンケート調査を実施してきました。一つのストレッチにかける時間はだいたい15秒、長くても20秒ほどです。30秒以上行うことは、まずありません。近年のエビデンスをまとめると、一つのストレッチが30秒以内であればマイナスにならないという多くの結果が得られています。

もちろん長い時間伸ばし続けるのはよくありません。30秒以上、1分、2分とやればマイナスになる傾向はあります。ですが、15秒、20秒ではマイナスになりません。15秒を10セットもやるのはよくありませんが、そこまでのセット数を行うことは普通はないでしょう。

多くの人にとって運動前のストレッチとは、静的ストレッチを意味していました。30秒以内で終えればよいのですが、今まで通りのストレッチで問題はなかったのです。残念ながら「運動前に静的ストレッチをやってはいけない」という話が広まってしまいました。私は、その誤解を解いていく必要性を感じています。

※本記事は、2017年に公開した記事に加筆・修正を加えたものとなります

写真/長谷川拓司

長畑芳仁(ながはた・よしひと)
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP