新型コロナウイルス感染拡大による身体状態や健康行動の変化に関する調査分析が、企業向け健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」のユーザー(主に企業で働く従業員)を対象に行なわれ、結果がまとめられました。
【調査サマリー】
〇体重:新型コロナの影響でダイエットの成果が現われない
〇体重:体重を記録していない人はコロナ太りしやすい
〇歩数:自粛期間は1日の歩数が1,000歩ダウン
〇運動:有酸素運動が減少、家でできる運動は急増
■調査の概要
〇背景
新型コロナウイルスの感染拡大により、厚生労働省からは2020年2月末より外出自粛の要請、テレワークの促進等の感染拡大防止策が発表されました。また、4月7日には緊急事態宣言が発令され、状況はさらに深刻化しています。このような感染拡大防止策による人々のライフスタイルの変化を受け、企業向け健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」のユーザーを対象に身体状況・健康行動の変化が分析されました。
〇分析期間
2020年2月2日(日)~2020年3月28日(土)、2019年2月3日(日)~2019年3月30日(土)の各8週間。
(体重のみ、当該期間との差を比較するため各開始日の1週間前のデータも利用)
〇分析項目
体重、歩数、運動の種類。
〇分析対象者
「カラダかわるNavi」ユーザーで、分析・発表の許可を得た利用者のうち、
・体重は、分析期間内に2回以上の入力があった人。(n= 2020年 16,857人、2019年 11,552人)
・歩数は、2月以前に平均5,000歩以上だった人。(n= 2020年 8,440人、2019年 4,871人)
・運動は、分析期間内に2回以上の入力があった人。(n= 2020年 14,383人、2019年 12,310人)
■調査結果
1.身体の状況
●体重
<新型コロナの影響でダイエットの成果が現われない>
(図1)体重の変動の比較(n= 2020年 16,857人、2019年 11,552人)
1月の4週目を基準として、2月以降の体重の増減を調査。2019年は2~3月の8週間で0.6kg減少していたのに対し、2020年ではほとんど減少が見られませんでした。アプリユーザーのうち約75%はダイエットやメタボ改善を目的としています。昨年であれば正月後に順調に減量できていましたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大による生活変化の影響を受けているためか、ダイエットの成果が現われにくくなっているようです。
<体重を記録していない人はコロナ太りしやすい>
(図2)体重の入力頻度と体重の変動 2020年 (n=人。このうち体重入力週2日未満の人は46%で7,698人)
アプリへの体重入力が週に2回未満の人は3月後半から他の人に比べて顕著に体重が増加しており、1ヵ月弱で約1㎏の体重増加が見られました。歩数などが減少し運動不足になりやすい今の時期には、体重を記録することが体重管理においてとても重要であることを示唆しています。
2.健康行動の変化
●歩数
<自粛期間は1日のが約1,000歩ダウン>
(図3)歩数の比較(2月以前に平均5,000歩以上だった人を対象に解析。n= 2020年 8,440人、2019年 4,871人)
普段からあまり歩かない人(平均5,000歩未満)はあまり変化がないことが予想されたため、2月以前に1日平均5,000歩以上だった方を対象に解析しました。2020年は2月1週目をピークに徐々に歩数が減少しています。一転、3月3週目では歩数が増加していますが、4週目に入ると再度減少に転じています。2月上旬に比べて自粛要請期間となった2月下旬から3月にかけては、約1,000歩も減少しました。
●運動内容
(図4)運動の種類の比較(n= 2020年 14,383人、2019年 12,310人)
自粛要請期間ではランニングやスポーツ、スタジオプログラムなどの有酸素運動(図4・左)が一気に減っています。一方、自宅内で実施可能な筋肉トレーニング(図4・中)や、ストレッチなどの軽い運動(図4・右)を行なう人が増えました。カロリーを消費しやすい有酸素運動の実施率が減少しているため、体重や体脂肪が増えやすい状況になっています。
■専門家からの意見(東京大学大学院 准教授 近藤 尚己先生)
「外出自粛によって身体活動が顕著に減れば、心筋梗塞や脳卒中の増加、うつ病の発症、認知機能の低下など、間接的な影響も重大になります。今回、ビッグデータ解析により平均して約1,000歩も歩数が減っていることがわかりました。身体活動の減少を放置すれば、新型コロナ感染症が終息したあとの『ツケ』となって国民全体が不健康になってしまいます。自宅にいても身体活動を増やせるための工夫を社会全体で考案して実践していくべきです。また、経済的理由等により、自主的に活動を増やせる人と増やしにくい人がいます。健康格差が拡大しないように、このようなデータを活用した観察と取り組みの工夫も大切です」
◆近藤 尚己 先生(医師・医学博士)
・社会疫学者・公衆衛生学研究者
・東京大学大学院医学系研究科准教授(保健社会行動学分野、健康教育・社会学分野主任)
・日本老年学的評価研究機構理事
・日本疫学会代議員
・日本プライマリケア連合学会代議員
【健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」とは?】
「カラダかわるNavi」は、企業の従業員を対象にAI管理栄養士が食事・運動・睡眠などの毎日の生活をサポート。ダイエット、メタボ対策、低栄養対策、ロコモ・認知症予防を目的に健康診断データ等とも連携して、AIが食事・運動の面から具体的で実践的なアドバイスが提供されます。ランキング機能やポイントインセンティブの機能も充実しています。企業・自治体の「健康経営」サポートを目的に2017年よりサービスを開始、現在約6,000以上の団体が導入しています。