1. Home
  2. 連載
  3. トレーナの輪
  4. 【トレーナーの輪】滝口和眞(ろっぽんぎの筋トレ屋さん)

【トレーナーの輪】滝口和眞(ろっぽんぎの筋トレ屋さん)




近年、フィットネスの世界でパーソナルトレーナーが盛況だ。トレーナーを独占するので費用は多少かかるが、トレーニングをしていることを他人に知られたくない人などの需要を取り込んで拡大しているという。そのパーソナルトレーナーになった元野球選手がいる。滝口和眞さん、34歳。大学卒業後サラリーマンになったが、1年で退職し、2009年4シーズンを独立リーグでプレーした。引退後、ジムにトレーナーとして入社、昨年一念発起独立して現在、都内でパーソナルジムを開業している。

六本木のイケメントレーナー

現在、港区のマンションの一室で開業している滝口さん。生まれも育ちも六本木という彼からは「体育会」臭はまったくない。トレーニングウェアを着ると、その胸板の厚さが目に留まるが、その細マッチョな姿は甘いマスクと相まって、それこそスーツを着て六本木界隈を歩けばエリートサラリーマンにしか見えない。しかし、本人は大学卒業後、1年経験したデスクワークは苦痛でしかなかったと言う。退社後、プロ野球目指して独立リーグで4シーズンを過ごすが、今振り返れば、野球選手としても向いていなかったと笑う。

「いわゆるブルペンエースでした。ブルペンでは結構いい球を投げるんですけれども、マウンドだと緊張して変わってしまうんです。プレーヤーとしてやっていくのにそれはしんどかったですね。それに僕は弱小チームでしかプレーしたことなかったですから、強豪校で鳴らした他の選手に対する気負いもありました。そんな感じだったので、現役時代はトレーニングに対する意識も高くなかったですね。独立リーグ時代、チームにトレーナーはいましたけど、個々の選手に指導するということはなかったですし。トレーニングや栄養について知識のある選手もいましたが、当時は僕の方がそれを吸収する意識も力もなかったですね。それにウエイトトレーニングで筋肉をつけても邪魔になるみたいなことも当時はまだ言われていましたし」

だからトレーニングを本格的にし出したのは、引退後ジムに就職してからだという。

「独立リーグ時代にジムのアルバイトをしていたんです。それで人を支えるのは楽しいなと思って、引退後トレーナーになったのですが、そこは個人指導なので部屋があてがわれるんです。だからスケジュールが空いているときは自分でトレーニングできたんです。パーソナルトレーナーの資格や栄養学の勉強もしていたので、自分の体でいろいろ試してました」

その結果、現役時代よりもシェイプアップされた「イイ体」が出来上がったのだ。

 

長期的な健康を目指したトレーニング

 

滝口さんがトレーナーとしてのイロハを覚えたのは、シェイプアップした体をパーソナルトレーナーの指導の下作っていくジムだった。だから滝口さんのトレーニングも「細マッチョ」を目指すものかと思ったが、それがゴールではないと言う。

「六本木という場所柄、あんまりムキムキを目指す人はいませんね。そういう人もいますけど、トレーニングをしながら僕と筋肉談義するのが主ですね(笑)。ウチはダイエットもありますが、どちらかというと、健康増進というか、健康寿命を延ばしていくというような感じです。今会員さんは10数名ですが、若い男性とか、若い女性から、上はもう60代の方もいらっしゃいます。皆さん、基本的には、本当に健康のために来られてます。トレーニングは、ダイエットもそうですけれども、一時的にやってもリバウンドするんで、健康習慣を付けてもらいたいという考えです」

そういうコンセプトで運営されているので、トレーニングの頻度は週1~2回の会員がほとんどらしい。

「維持するのであれば、週一回で十分です。週二回ぐらいだと、ちょっと筋肉が向上していくかたちです」

だから野球経験もあまり表に出すことはないと滝口さんは言う。

「会話の中で独立リーグでプレーしていたことは出てくるので、皆さん知ってますけど。このジムにも現役時代の写真なんかも飾っていません。シンプルな方がいいでしょ(笑)。将来的には野球を念頭に置いたトレーニングの指導もしてみたいですけど、まだまだ先ですね。ただそういうアスリートのトレーニングを見てきて、つけた筋肉をうまく使うのが日本人はうまくないなと思います。僕自身も、ウエイトトレーニングで体を一回り大きくして臨んだシーズンがあったんですけれども、全然でした。力んじゃったんですよ。球速自体は確かに出たかなとは思ったんですけれども。コントロールがダメになりました。筋肉が付くとみんなどうしても使いたくなるんですが、結局力んで結果につながらないんです。本当は、力まなければ筋肉が上乗せされた分、数字は増すはずです。メジャーリーグで活躍しているダルビッシュ投手が言っていましたが、今まで100の力で投げていた球を80の力で投げるためにするのがトレーニングだって。多分、アメリカなんかだと、習慣的にウエイトトレーニングが早期になされているので、自然に筋肉がついて、ウエイトをやったから力むことがないんじゃないですかね。日本では、筋トレをやればパワーが出るんじゃないかと思って、力んでフォームなんかを崩してしまうのかなと思います」

健康維持のために重要な柔軟性

確かにトレーニングでビルドアップしたことが、必ずしも競技成績に反映されるわけではないし、トレーニングによって故障を抱えてしまうこともある。「我流」のトレーニングではそういうリスクは低くない。だからこそのパーソナルトレーナーなのだが、滝口さんは、一般人の健康維持のためには柔軟性が大事だと言う。

「筋力と、姿勢と、柔軟性などが関係してきます。例えば、腰を痛めるパターンというのが結構あって、猫背になっていたり、逆に反り過ぎていたりという姿勢でトレーニングするとかえって故障します。男性に結構多いですね。腰を痛めている人は、お尻が硬くなっています。だから、お尻周りのストレッチと、体幹、腹筋に意識をもっていく必要があります。よくインナーマッスルのことが言われますけど、サイズの原理といって、筋肉は内側から先に固めないと力が入らないんです。だから、普通の腹筋をやっておけば、インナーマッスルはある程度付きますよ。僕の場合は、全体的にちゃんと鍛えれば、細かい筋力は付くかなと考えています。腰痛の原因だって言われるハムストリングですが、ここはもう毎日ストレッチしてもいいですから。スクワットも体が硬いとうまくできないんです」

ジムの経営も軌道に乗り、多忙な毎日を送る滝口さんだが、野球を辞めた後はまった登山には暇を見つけては出かけているという。今は、これまでに培った人脈を生かして店舗を増やすのが目標だ。

「僕は目標を作ってそこに到達していくのが好きなタイプなんです。体作りも一緒。自分の体を追い込んで、食事とかも我慢して。結果、体が変わっていくみたいな。山もそれに似ていますよね」

 

取材&撮影・阿佐智

滝口和眞(たきぐち・かずま)
1985年生まれ。学習院大学野球部でエースとして活躍後、サラリーマン生活を送るが、2009年、ルートインBCリーグの石川ミリオンスターズに入団。以後独立リーグで4シーズンプレー。2012年シーズン後に引退後はトレーナーとしてジムに勤務。2019年6月、独立し、「ろっぽんぎの筋トレ屋さん」を開業。
ろっぽんぎの筋トレ屋さん