自粛中も骨の健康を守る「巣ごもり骨活」のススメ




コロナウイルス感染拡大を避けるため、家で過ごす時間が増えています。そんな“巣ごもり”の弊害として気になるのが運動不足です。

骨粗鬆症学会認定医で、そしがや大蔵クリニック院長の中山久德先生は、「入院患者さんは1週間もベッドに寝たきりだと、とたんに足腰が弱ってしまいます。それと同じように、家にこもりがちで運動量が減るとたった1~2週間でも筋肉や骨の衰えにつながることがあります。一般的に20~44歳くらいまでがその人にとっての骨密度のピークであり、それまでにどれだけ骨貯金をできるかが、その先の骨の健康を左右すると言われています。とくに女性の場合は閉経前後からは何もしなければ下がる一方。それまでせっかく骨貯金をしていたとしても、生活スタイルが変わることで一気に下がってしまい、それを元に戻すには何倍も時間がかかります。そのような時期こそ、自宅でも手軽にできる“巣ごもり”骨活に取り組んでみてはいかがでしょうか。身体を支えてくれる骨について見直す良い機会かもしれません」と話しています。

丈夫な骨を作るポイントは、骨形成ホルモン「オステオカルシン」


それでは、この状況下でもできる、“巣ごもり”骨活とはどのようなものなのでしょうか。

「骨は重力の負荷がかかること振動を与えてあげることで丈夫になっていくという性質を持っているので、骨の健康に一番いいのはジャンプすること。お子さんや若い人だったら、手軽に自宅の前でできる『なわとび』がおすすめです。そして、体力に自信のない人や高齢者でも家の中で簡単にできるのが、つま先立ちでかかとを上げた後に床にドスンと落とす『かかと落とし』と呼ばれる運動。ドスンと振動を与えることで、骨の形成に関わるオステオカルシンというホルモン物質が効果的に分泌されます。オステオカルシンは神経細胞のネットワークをよくする働きもあるため、認知症予防にもよいということが解明されています」と中山先生。

<自宅でできる「かかと落とし」運動のやり方>

「姿勢をよくして真上に伸び上がるようにつま先立ちになり、ドスンと一気にかかとを床に落とす。ヒザを伸ばし、かかとから頭までが一直線になっていることが大切。1度に10回を朝昼晩の3セットで30回くらいを目標に。転倒の危険がない安全な場所で行ないましょう」と中山先生。

※膝などに疾患がある人、すでに骨粗鬆症の診断を受けている人などは、運動を行なう前に医師にご相談下さい。

カルシウムだけでは不十分!? 効率的にカルシウムを吸収する栄養素とは?


運動に加えて、食事ももちろん大切。骨を丈夫にするのに大切な栄養素と言えばカルシウムが真っ先に思い浮かびますが、そこには意外な盲点があると中山先生は言います。

カルシウムは吸収率が悪い栄養素です。吸収率が一番良いと言われている乳製品でも含まれているカルシウム量の50%くらいしか吸収されず、小魚30%程度とさらに少なくなります。野菜の中では小松菜に多く含まれますが、食物繊維が含まれていることでカルシウムの吸収を邪魔してしまうため、20%くらいしか吸収されないと言われています。せっかく食べた栄養素をより効率的に体内に吸収するためには、調理の際にひと工夫することがおすすめです。レモンやお酢に含まれるクエン酸カルシウムのイオン化を促進して吸収しやすくする『キレート作用』を持っています。レモンは果物の中でもクエン酸含有量がトップクラス。ですから、カルシウムを多く含む乳製品などと一緒にレモンを取りいれるといったひと工夫をすることで、より効果的に摂取できます。ビタミンDもカルシウムの働きをサポートするので、ビタミンDを含むきのこ類などをさらに加えてもいいでしょう。カルシウムとレモンを一緒に摂ると、カルシウムの吸収がよくなるばかりでなく、骨を壊す働きが抑えられるという研究結果もあります。

県立広島大学の飯田忠行先生らが行なった研究では、閉経後の中高年女性40名を対象にレモン果汁(レモン1個分の果汁)とカルシウム350mgを含むレモン果汁飲料を6カ月摂取してもらった結果、骨吸収マーカー(骨が壊される指標)が摂取1カ月後より減少、飲み続けていた6ヵ月後まで有意に低い値を示しました。レモンは骨の材料であるカルシウムの吸収を高め、さらに骨を壊す細胞の働きを抑え、結果的に骨密度を増加させることが期待できるのではないでしょうか」と中山先生。

“巣ごもり”生活が引き起こす、他のデメリットにも目を向けて

感染予防のことで頭がいっぱいになって、他のデメリットに目が向かなくなることが心配だと中山先生は言います。

「最近の若い女性は、熱心なUVケアでカルシウムの吸収をサポートするビタミンDが不足していることやダイエット志向による食事の偏りで、もともとカルシウムなどの栄養素が不足気味です。そこに、今回のことで拍車がかかってしまうことも考えられます。子供たちも休校で給食を食べなくなることで、毎日牛乳を飲まなくなっているかもしれません。栄養不足は成長期にとってもよくないこと。お母さんたちは、乳製品をとらせる習慣を休校期間にも心がけるといいでしょうね。骨貯金は運動と食事で増やすことができます。家に閉じこもっている間に、災い転じて、毎日の食事を意識的に見直してみるきっかけになればいいですね」


中山久德(なかやま・ひさのり)
骨粗鬆症学会認定医 そしがや大蔵クリニック院長
国立山形大学医学部卒業後、東京大学医学部アレルギーリウマチ内科に入局。2012年4月、世田谷区砧にて『そしがや大蔵クリニック』を開院。リウマチ内科医として、関節リウマチ・膠原病・骨粗鬆症の診療に従事。全身疾患の臨床経験を生かし身体の全般についても診察。テレビ、雑誌などでも活躍。

手間なしかんたん“巣ごもり”骨活レシピ

牛乳ととろけるチーズで簡単! レモンクリームパスタ

[材料/1人分]
パスタ:100g
牛乳:200ml
きのこ:50g
とろけるチーズ:1枚
ベーコン:20g
レモン果汁:大さじ1と1/2
にんにく:一片
塩・こしょう:適量
バター:10g
パセリ:適量

[作り方]
(1)材料は計量する。きのこはほぐし、ベーコンは1cm程度の短冊切り、にんにくはみじん切りにする。パスタはゆでておく。
(2)熱したフライパンにバター、にんにく、ベーコン、きのこを入れ、きのこがしんなりするまで炒める。
(3)牛乳を2,3回に分けていれ、ふつふつとするまで火にかける。
(4)細かくしたチーズを加え溶けてきたら茹でたパスタを加えからめる。
(5)レモン果汁を加えひと混ぜし、塩・胡椒で味を調える。お皿に盛り付けパセリを振ったら出来上がり。

季節の野菜で楽しめる! じゃことチーズのカリカリサラダ

[材料/4人分]
サニーレタス:5〜6枚
ミニトマト:8個
ちりめんじゃこ:20g
プロセスチーズ:4切
オリーブオイル:大さじ1
レモン果汁:大さじ2
しょうゆ:大さじ1
砂糖:適量
こしょう:適量

[作り方]
(1)サニーレタスは洗ってひと口大にちぎり、冷蔵庫で冷やす。ミニトマトは半分に切る。
(2)チーズは7〜8mmの角切りにする。
(3)フライパンにオリーブオイル、ちりめんじゃこを入れ、弱火で3〜4分炒める。
(4)器に(1)を盛り、(2)を散らし、(3)を油ごとじゅっと回しかける。
(5)レモン果汁、しょうゆ、砂糖、こしょうをかけ、全体をざっくりませながら食べる。
※サニーレタスの他に、水菜やサラダほうれんそうなど、季節のサラダ野菜でもおいしく食べられます。
※じゃこは香ばしく炒めるので、子どもにも食べやすくなります。

ビタミンDも一緒に摂れる! きのこと小松菜のソテーじゃこソースがけ

[材料/1人分]
エリンギ:1パック(100g)
しいたけ:4枚
しめじ:1パック(100g)
【A】ちりめんじゃこ:大さじ6
【A】桜えび:大さじ8
【A】しょうゆ:大さじ1と1/2
【A】レモン果汁:大さじ3
【A】ごま油:大さじ3
小松菜:1束
ごま油:適量

[作り方]
(1)エリンギは半分に切ってから放射状に6等分に、しいたけは軸をとって、縦に繊維に沿って厚さ5mmにスライスする。
しめじは小房に分ける。
(2)小松菜は水洗いし、長さ5cmに切る。
(3)フライパンを熱し、ごま油を入れて小松菜を炒める。ひと炒めしたら【1】を加えてさらに炒め、しんなりとしたら、塩、こし
ょう、レモン果汁(各分量外)をふり、皿に盛る。
(4)【3】のフライパンに【A】のごま油を入れ、ちりめんじゃこと桜えびをこんがり炒め、しょうゆとレモン果汁を加え、熱
いうちに【3】をかける。

冷やした牛乳とレモンでおいしく作れる! レモンラッシー

[材料/1人分]
牛乳:150ml
レモン果汁:大さじ2
はちみつ:大さじ1
[作り方]
(1)グラスにすべての材料を入れ、よく混ぜ合わせる。
お好みで氷を浮かべる。
※レシピにははちみつが含まれます。1歳未満の幼児には与えないでください。