少量でも筋肥大に効く「HMB」




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養に関する疑問を解決する連載。第16回は、今話題の「HMB」について。

■食薬区分の改定で「サプリメント」扱いに

今トレーニング界で話題となっている物質に「HMB」があります。

HMBはドーピングの対象ではなかったものの、以前は国内では医薬品扱いであったために、サプリメントとしての製造販売はできませんでした。それが食薬区分の改定も手伝って、また国内でのボディメイクのブームもあって、一気に浸透していった感のある素材です。

これはBCAAの中のロイシンの派生物。ロイシンの5%ほどがHMBになると言われています。

そしてその機能については、m-TOR(エムトール)と呼ばれる筋肉を合成に向かわせるスイッチのようなものをHMBが活性化させるということから、筋肥大にとって有効であることがわかっています。

摂取量が一日あたり1~3g程度と少量で済むという点も、手軽に摂取できることにつながり、結果として人気の理由のひとつになっているかもしれません。

よく、「HMBを飲んでいればプロテインやBCAAは不要か?」という質問を受けますが、それに関してはまったくの別物であると考えたほうがいいでしょう。それぞれの役割が異なるからです。

プロテインはほぼ栄養という役割であり、機能についてはあまり期待できません。BCAAは栄養に加えて機能を持ちますが、BCAAの機能に関しては第14回の説明の通りで、エネルギーとしての活用であったり、集中力の維持であったりという要素が大きいのです。そして、それ以外のごく一部の機能として、BCAAの中のロイシンがHMBをつくり出し、それが筋タンパク質合成のスイッチを活性化するという役割があるのです。

ロイシン=HMBのように考えられがちですが、ロイシンが分解される主要な場所はミトコンドリア内に局在し、一方HMBがつくられる代謝経路はミトコンドリアの外側の細胞質ということになります。したがって、そこはロイシン分解の主要経路ではないのです。それがゆえに、ロイシンのわずか5%程度がこの細胞質の経路によって代謝されるということになっています。

効果については筋肥大ということになるのですが、単に摂取をすれば筋肥大が起こるかと言えばそうではなく、やはりトレーニングという要素が必要不可欠となります。一方で、減量などの際に筋量が落ちてしまうという点に関しては、HMBの摂取によって抑制の効果が得られる可能性は高いと思います。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。