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【Ken Yamamotoの腰痛ゼロ革命】第3回=Ken Yamamoto、 直角おばあちゃんと対峙する

 

”世界を股にかける治療家”Ken Yamamoto(ケン・ヤマモト)の連載『腰痛ゼロ革命』の第3回は、彼がこれまで出会った患者さんの中でも、とくに印象的だった「タイの直角おばあちゃん(腰が直角に曲がっている高齢者)」。世界のKen Yamamotoは、「痛みに悩む人」に常に温かい視線を注いできたのです。

※画像をタップすると治療の動画に飛びます

 

1年の大半を海外で過ごすKen先生。拠点としているタイの首都、バンコクに滞在中「田舎のおばあちゃんが『体中のあちこちが痛い』と苦しんでいる。Ken先生に「ぜひ診てもらいたい」というオファーが舞い込んできた。

 

バンコクから車で2時間半。田園風景の中にポツンと建っている家で、Ken先生を待っていたのは、背中が直角に曲がってしまった老婆だった。

※写真はイメージです(モデルは別人です)。

 

「体を起こしてみて」

 

そう言うと、腰が曲がったおばあちゃんは懸命に体を起こそうとするものの、わずかに上体が起きる程度だった。

 

 

Ken先生が当時の状況を振り返る。

 

「田植えや雑草取りとか、長時間の『かがんだ姿勢』での作業を続けているうちに、その姿勢で固まってしまった、おばあちゃんだったんです。日本でもかつては珍しくなくて、僕は古き良き時代の日本を思い出させてくれる『働き者の背中』が好きなんですけど、治療家として見たら解剖学的肢位から大きくズレている姿勢なので、体のあちこちに痛みを抱えていることがほとんどです」

 

早速、Ken先生はおばあちゃんの治療に取り掛かった。

 

「簡単に言うと『頭と足を引っ張る』とカーブした背骨が真っ直ぐになるんですが、両足を掴んでグイッと引っ張ると1発でアウトです。ああいう背骨が直角に曲がった姿勢のお年寄りは、だいたい圧迫骨折といって背骨がどこか潰れているんです。

だから、まずどこか背骨が潰れているところがないか、あったらどこが潰れているのか確認をします。それをせず、ただ引っ張ってしまったら再起不能になってしまうでしょう」

 

Ken先生は、KenYamamotoテクニック(KYT)を駆使しながら、おばあちゃんの体を丹念に調べた。背骨の圧迫骨折はなかったが、腰部と股関節をつなぐ筋肉、大腰筋が縮んで、固まってしまっていた。

 

骨盤が大きく前傾して「おじぎ」している状態も問題だった。

 

「大腿四頭筋は、人体で一番強いと言われる筋肉なんですが、これが短く、縮んでしまっている」

 

 

「おじぎは楽にできるけど、体を起こすことが難しい、というのが直角おばあちゃんの症状だったんです」

 

おばあちゃんの曲がっていく背中を心配し、家族は「体を伸ばしたら」と言ってきたが、いったん縮んでしまったものを自力で「伸ばそう」とすれば痛みが走る。

 

「足を引っ張れば『痛い!』となります。だから『縮んでいるところを拡げてあげる』というのがセオリーです。まずは大腰筋をゆるめてあげる。それから大腿四頭筋をゆるめてあげる。それをすると、比較的、体を起こしやすくなります。ココで硬いからといって大殿筋や背筋をゆるめてはいけない」

 

 

Ken先生は、お婆ちゃんに仰向けに寝てもらい、ヒザを曲げさせた。そうして、足を押さえて、ゆっくりと後方に力を掛けていく。

 

 

「縮んでいる関節を『もっと縮ませること』は可能なんですよ。だから、ヒザを抱えられるなら、抱えてもっと縮ませて、そこに抵抗を加える。

それをすると、先ほどよりも足が伸びていきます。それをじっくりと時間を掛けて、いろんな角度から力を加えて『縮ませて自分の体の方に引っ張って』を繰り返していきます。そうすると、逆に伸びてくるんです」

 

高齢者は「背中が曲がった」と指摘されることを嫌う。高齢男性の中には、指摘されて怒り出す人もいるとか。それほど「背中が曲がった=老い」のイメージが強く、忌み嫌われている。

 

「若くても猫背の人は若く見えないでしょ? しかし、自分で気にしてストレッチをしても、腰痛を引き起こしたり、再発させてしまう。例えば猫背の姿勢は背筋をストレッチしている姿勢だと言えるでしょ?」

 

背筋を縮めないと姿勢を保てないのに猫背=背筋のストレッチばかりしていると血行不良が起こりいつの間にか猫背が直らない身体になってしまい結果「楽な姿勢」を求めて、背中の曲がった姿勢で定着してしまう。

 

Ken先生は警鐘を鳴らす。

 

「『縮んで、固定した箇所』をそのままにして、無理に背骨をぐっと起こそうとするとケガをします。猫背で固定している人を無理に背骨を起こして姿勢を正そうとすると椎間板にストレスが加わります。

 

背骨の前が縮んでいて背中が丸まっているのだから、お腹側の筋肉を柔らかくしてから姿勢を起こさないと背骨や腰を痛めますね」

 

 

「『伸ばそう』とするよりも、むしろ『縮める動き』に抵抗を加えると、収縮後リラクゼーションという言葉があって、筋肉がだんだん伸びてくるんです」

 

タイの直角おばあちゃんは、10分程度の治療をほどこすと、背筋が伸ばせるようになり、その場を走った。

 

 

「痛みが取れると、みんな走るんですね(笑)。おばあちゃんも『歩けない!』『体が痛い!』と言っていたのが『あら、いけるわ』となって、走り出しました(笑)。

ずっと痛みがあって『痛い。無理だ』と脳がロックしていた人も実際に動けると分かれば『あ、できるんだ』と思わせると、勝手に治っていくんですよ。脳に刷り込まれていた『痛み』が取れて『ダメだ、無理だ』というブロックが外れて、活発になっていきますね」

 

Ken先生の治療で「脱・直角」をはたしたおばあちゃんだったが、数ヵ月経つと「直角お婆ちゃん」に戻ってしまった。

 

Ken先生は再び2時間半掛けて、タイの片田舎に赴き、二度目の施術をした。

 

再び、おばあちゃんは背筋をしっかりと伸ばして、小走りができるほどになったが「しばらくすると元に戻ってしまうだろう」とKen先生は思ったという。

 

「治療をして『立ってみて』というと、クセで直角の姿勢になってしまうんですよ。『ちゃんと立ってごらん』というとちゃんと立てるんです。そこの家は、僕に依頼してきた娘さん夫婦を始め、一家はバンコクで暮らしていて、おばあちゃんは田舎で一人暮らしをしているんです。庭の雑草を取ったり、犬の世話をしたり、前かがみの生活なんですよ。

そばに家族がいて『姿勢を起こして』と言ってあげれば、正しい姿勢で暮らせるんですけど。また一人に戻ってしまうと『クセ』に負けてしまうでしょう。でも不思議なコトにまたあの直角の姿勢に戻っているというのにあれから痛くないというんですよ。きっと脳のブロックが一度壊れたのと関係ありそうですね。

①私は背骨が丸まっているから身体が悪い→②だから腰が痛い→③整体をすると痛みが取れた→④丸まっているから身体が悪いでは無かったと脳が納得→⑤丸まっても痛みが出ない。

『脳がロックを解除したモノに関しては2度と痛みが戻らない』のかも知れませんね。あの直角おばあちゃん、元気にしているのかな。痛みなく過ごしているのかな、と時々思い出しますね」

 

 

(次回に続く)

取材・撮影:茂田浩司

 

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Ken Yamamoto
東京都出身。東海大学体育学部卒業。中学・高等学校保健体育科教員1級免許取得。23歳で治療院開業。27歳で柔道整復師国家資格取得し、整骨院を開業。30歳で目黒区医師会立看護学校卒業し、免許取得。仙骨専門治療院、整形外科、総合病院整形外科、整骨院、介護センターを経て、整骨院開業。現在は、年間300日以上、海外を中心に解剖学を基に作られたKenYamamotoテクニック(KYT)のセミナー講義並びに大学の授業などを行ない後進の育成にも余念がない。腰痛患者さんの施術を招かれる各国で行なっている。KYTは現在40カ国で使われているテクニックとなっている。