通勤・通学時、あるいは買い物に出かけるときの必須アイテムと言えば、バッグです。ビジネスバックやトートバッグを一方の肩にかけて歩く。これはもう日常において見慣れた光景です。
多くの人の場合、バッグをかけているほうの肩というのは、子どもの頃からだいたい決まっているのではないでしょうか。つまり、感覚的にかけやすいほうに、個性=型として定着しているということです(反対側の肩にかけてみると、なんとなくしっくりこないという感覚ありますよね?)。
若いうちはそれでもいいかもしれません。しかし、年齢を重ねてくると、筋力の低下に伴い、ねじれ(左右差)が生じ、さらにねじれの方向につぶれていくことによってそれとは反対側の腰や膝、あるいはかかとに痛みが生じてくるケースが少なくないのです。
最近では、両肩にリュックサック(バックパック)を背負っている人たちをよく見かけます。もしかすると、片側にかけることによる体の歪みの誘発を気遣っている人が少なくないからかもしれません。
さて、肩にかけているほうの状態に注目してみると、肩が斜め下方に落ちていることが気になるものですが、私は、むしろ肩関節が内側(内旋)に入り込んでいることのほうが気になってしまいます。
実際、バッグを肩にかけたり(写真1・2)、腕に提げたり(写真3・4)したときは、ほとんどの場合、上腕が回旋しているので、それがまた肩の内旋を生みやすい要因ともなっています。
バッグの負荷によって肩が斜め下方に落ちる(=側屈状態)。それに対して、肩だけを上方に持ち上げてバランスを保とうとするのではなく、肩の内旋と体幹の前方への回旋によって、バランスを保とうとしているケースが多いのではないかと考えます。
したがって、左右のバランスと整えるためには、体幹の後方への回旋と肩の外旋が求められます。逆に反対側は、内側に押し込んでいかなければなりません。そこで、写真5のような肩関節の内外旋ストレッチでバランスを整えていきます。
なお、両肩にリュックサックを背負う場合には、軽量のものを除き、できるだけ背中にピタッと密着させておくことがポイントです。
ところが、ファッションの一環なのでしょうか、ストラップがピーンと張り、後方にぶら下がったような状態で背負っている若者が少なくありません。リュックが重い場合、これでは骨盤の動きを妨げやすく、それに対する代償動作としてかえって猫背を誘発しやすくなってしまいます。
したがって、体のことを思えば、ストラップはできるだけ短く調整して背負うことをお勧めします。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
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取材/光成耕司