求める理想がクラシックフィジークにある
11/29(日)に東京・品川区立総合区民会館(きゅりあん)にて開催された『ゴールドジムジャパンカップ』にて、五味原領がクラシックフィジークの175cm以下級、そしてオーバーオール審査を制し、このカテゴリーにおける王者となった。
クラシックフィジークは日本においてはまだ歴史は浅く、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)主催の大会でも、2020年から新たに追加される予定となっていたカテゴリー。五味原も、昨年の『全日本学生ボディビル選手権』で2位、『日本ジュニアボディビル選手権』での優勝など、ボディビルを主戦に戦ってきた。そんな彼がこの2020年はクラシックフィジークに戦いの場を移したのは、五味原の“原点”がそこにあったからだ。
「もともと僕が目指してきた存在、なりたい身体の目標として、フランク・ゼーン(※)というのが明確にあります。JBBFでクラシックフィジークがはじまるということで審査基準などを調べていると、メンズフィジークやボディビルとも違った、フランク・ゼーンのような審美性の高い身体、自分が目指し理想としてきた身体が評価されるとのことだったので、出場を決めました」
※1960年代~1980年代に活躍したアメリカ出身のボディビルダー。『ミスターオリンピア』3連覇を達成した実績を持つ
ボディビルの規定ポーズにはない「クラシックポーズ」、そして、腹筋を助骨の中に引き込みウエストの細さを強調する「バキュームポーズ」などはクラシックフィジークの特徴の一つ。ボディビルの審査においてほぼ披露することはないが、五味原は「フランク・ゼーンがバキュームポーズをしているモノクロの写真を見て、それに惹かれて、ずっと練習していたんです。やっとそれが実を結びました」と話し、いまやバキュームポーズは五味原の代名詞とも言えるものになった。
今大会において五味原は、クラシックフィジーク(175cm以下級)のみならず、これまで続けてきたボディビル(65kg以下級)にもエントリー。両カテゴリーとも決勝審査で1分間のフリーポーズが行なわれるが、そこにも彼がこれまで積み上げてきた経験、そして競技に対する考えが詰め込まれていた。
「似ているとこはあるけど、やはり両カテゴリーには大きな違いがあると思っているので、カテゴリーの違いに対する自分の考えをフリーポーズで表現できたらいいなと思っていました。ボディビルでは迫力、強さといったものを強調するようなポーズを多めにとるように構成しましたが、逆にクラシックフィジークでは、モストマスキュラーポーズは入れずに、流れるようなポージングを意識してそこの差を出そうとしました」
今後はクラシックフィジーク1本で
見事にクラシックフィジークで頂点に立ったが、当然それは、一人の力で成しえたものではない。クラシックフィジークへの挑戦を後押しした存在として、「二人の先生がいましたね」と五味原は話す。
一人は当然、昨年まで所属した日体大バーベルクラブの師である岡田隆だ。五味原の姿を「歩くギリシャ彫刻」と自身のSNSで評しており、五味原も「ボディビルと両方に出るか、1本に絞るかというところからアドバイスをいただきましたし、大会後も、『やっぱりクラシックフィジークが合っている』と言っていただきました」とその存在の大きさを語る。
もう一人は、言わずと知れた日体大の後輩・相澤隼人だ。
「今回の結果は、隼人なしにはなかったと本当に思います。以前から、他の選手とは違うものを持っている、クラシックフィジークに向いているというのをずっと言ってくれていて。僕らしさを出せれば勝てると、自信を持たせてくれました。後輩だけど、二人目の“先生”です(笑)」
この2020年は、コロナ禍の影響で予定していた大会出場が叶わなかったということもあり、『ゴールドジムジャパンカップ』においてはボディビルとクラシックフィジークのダブルエントリーとなったが、今後については「1本でいきます」と宣言。来年はクラシックフィジーク日本一として臨むシーズンとなり、多くのトレーニーたちから追われる存在となる。
「審査員の方々から大会後にフィードバックをいただいたり、このように大会の結果として出たりしたことで、自分にはクラシックフィジークが合っているというのを実感しました。大きな自信にもなりましたし、今後はクラシックフィジークに絞ろうという決意を固めることができました。
SNSや大会で僕を見てくれた方が、『クラシックフィジークに興味を持つようになりました』という言葉をくれることも多かったですし、これから競技人口が増えていくカテゴリーだと思うので、みんなで盛り上げていければいいなと思います」
取材・文/木村雄大 写真/木村雄大、ちびめが