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コンテストデビューイヤーの新星・柿夏芽がビキニで優勝。「これからも進化を続け、愛される選手に」【ゴールドジムジャパンカップ】




五味原領との出会いをきっかけにコンテストの舞台へ

11/29(日)に東京・品川区立総合区民会館(きゅりあん)にて開催された『ゴールドジムジャパンカップ』。女子選手50名がエントリーした激戦のビキニで見事に頂点に立ったのは、日体大バーベルクラブ3年生の柿夏芽だ。

彼女がこの競技をはじめたのは、今年に入ってから。きっかけは、同クラブOBの五味原領との出会いだった。

「大学ではストレングスコーチを目指していて、特にフリーウエイトのトレーニングを指導する勉強をしているときにゼミの説明会で領さんにお会いしました。そのときは、自分の身体を変えたいというよりは、部位別のトレーニングスキルを磨きたいと思って領さんにトレーニングを教わるようになったんです。そうしている中で、『コンテストを目指してみないか』と声を掛けていただきました」

五味原との出会いもあり、2月にバーベルクラブに加入。当時は新型コロナウイルスの感染が拡大する前であり、夏に行なわれる予定だった大会に向けてさっそく減量をスタートさせることになった。しかしそんな矢先、活動自粛の波が押し寄せ、大学もクラブとしての活動も休止状態に。いきなり大きな壁に阻まれることになった。

「領さんの減量中の食事を真似させていただきながら、2月はまだ順調に進めることができていました。その後にジムが閉鎖されてしまい、家でのトレーニングのためにダンベルは買ったのですが、まだトレーニングスキルはなく、どうしようという感じで……。ただ、最初の1ヶ月は初めての減量ということですごく苦しかったこともあり、もし今ここで元の食事に戻して減量をやめてしまったら、自分がかわいそうだなと思ったんです。仮に今年すべての大会がなくなったとしても、一回絞り切っておけば、必ず来年につながるという希望を込めて続けることにしました。できることをしっかりやって、絞りきろうと決めたんです」

・ゴールドジムジャパンカップ ビキニフォトギャラリーはこちらから

横浜オープン大会で鮮烈デビュー

ゴールドジムジャパンカップのオーバーオール審査でも、柿はルーキーとは思えぬ存在感を放った(中央が柿)

強い決意と、五味原を含めたバーベルクラブの仲間の支えもあり続けたボディメイク。徐々にジムも再開し、当初の予定とはずれたものの大会の開催も発表されていった。その中で彼女は、『横浜オープンボディビル・フィットネス大会』(11/15)、『マッスルゲート 東京大会』(11/21)、『ゴールドジムジャパンカップ』(11/29)と、3週連続の大会に出場することを決めた。

「デビュー戦となった『横浜オープン』は緊張しましたし、まず控室が恐くて(笑)。私自身、以前はバスケットボールなどをやっていたのですが、これから戦う相手たちとずっと一緒の場所にいるっていう経験がなくて。こういう場での暗黙の了解みたいなのがあるのかな?ってソワソワしてしまって。待機しているときは、本当にただ体育座りして待っているだけでした(笑)。でも、東京大会、ジャパンカップとだんだんと慣れていって楽しめる余裕が出てきましたね」

ルーキーらしい素顔をのぞかせつつも、ステージに立つとそれは一変。堂々とした姿を披露し、デビュー戦の『横浜オープン』では40歳以下級とオーバーオール優勝。『マッスルゲート東京』では惜しくもオーバーオール優勝は逃したものの、35才未満163cm超級で頂点に立った。いったいその自信あふれるステージングはどこからやってきたものなのかを問うと、出てきたのはある意味ルーキーらしい意識の持ち方と、ビキニの女王・安井友梨の名前だった。

「『なりきる』というのを意識してステージに立っていました。私はまだ学生ということもありポージングとかパーソナルトレーニングもあまり受けられるわけではないので、安井さんや海外選手の動画をたくさん見て、この人になったつもりでいこうと。その人が私に乗り移った気持ちでステージに立っていました。安井さんとは一度、一緒に練習をしてくださったときがあったので、そこでもうすべてを目に焼き付けて、この人になりきろうという思いでした」

進化を続け、愛される選手を目指して

クラス別の審査の表彰式で笑顔を見せる柿(写真右から3番目)

そして迎えた今年最後の舞台、『ゴールドジムジャパンカップ』。クラス別を制してオーバーオール審査へ。そのステージには、東京大会でチャンピオンになった河野安佳里(35歳未満163㎝以下級優勝)もおり、1週間の時を経て再戦となった。1週間で評価を覆すのは簡単ではないのがこの競技の難しさではあるが、それでも彼女は、決して諦めることなく最後の最後までチャレンジを続けてきた。

「身体づくりもポージングも、東京大会ではベストを尽くしましたし、自分の中では満足していました。なので、大会が終わった日は『自分の何がダメだったんだろう?』と、自分のダメなところを見つけては、負のサイクルに陥ってしまって……。ただ、周りの選手を意識することも大切だけど、自分が最終的に何を目指すのかを冷静に考えたときに、『自分がなりたい身体って何だったっけ?』というように考えることのほうが大切だと頭を切り替えました。1週間しかないけど、もっといい身体をつくって、もっと自信を持ってステージに立てるように挑もうと。自分の強みをしっかりと持っておけば、並んだときにも恐くないという思いと気合いで、1週間で約2kg絞りました」

よりベストな状態を追求し続け、自信を取り戻した彼女は『ゴールドジムジャパンカップ』で見事にオーバーオール優勝を達成。執念とも言える努力の賜物ではあるが、不思議なパワーも得ながらのステージだったようだ。

「そういえば……エントリー番号が23番だったのですが、安井さんが去年の『グランドチャンピオンシップ』で優勝したときも、23番だったんです。もうそれでテンションが上がって(笑)。その力もあったかもしれませんね」

これ以上ない素晴らしい結果でデビューイヤーを終えた彼女。最後に、今後の目標を聞いてみた。

「まだ他の選手よりはステージ経験が圧倒的に少ないので、来年は出られる大会は全部出ようと思っています。目標は『オールジャパン選手権』のカテゴリーで優勝して、世界選手権へのジュニア枠の派遣選手になること。海外選手と並べるジュニア世代のビキニ選手がまだ少ないという話を聞いているので、そこを目指して取り組んでいきたいです」

そう話す彼女の根底には、やはりバーベルクラブの師である岡田隆の言葉が根強く張っている。

「いつも先生からは心に響く言葉をたくさんいただいているのですが、その中でも、『現状維持は衰退でしかない!』、『愛される人、応援される人はどんな人間か』という言葉は本当に大切にしています。その言葉を胸に、進化をやめず、人から愛される選手を目指して頑張っていきたいと思います」

取材・文・写真/木村雄大

【大会リポート】11/29(日)開催 ゴールドジムジャパンカップ