【カラダ美人講座】たまりにたまった疲労を取り除くべく施術を受けてみました【新春特別編】




新年あけましておめでとうございます。

2020年は、新型コロナウイルスに翻弄され、多くの企業でテレワークや時差出勤が増加し、働き方そのものが大きく変化した1年となりました。では、2021年はと言うと、こうした働き方は今しばらく続きそう、いや年明け早々緊急事態宣言が発令されたほどですから、もはやしっかりと定着してしまいそうな年になる気配さえあります。

コロナは間接的に私たちの心身のコンディションにも負の影響を与えています。そこで、本欄でもコロナ禍におけるコンディショニング法について、これまで様々な観点から紹介してきたわけですが、今回は本欄担当者の特権をフルに活用し、みずからを被験者として総合的な観点からケアの大切さについて皆様にお伝えしたいと思います。自身の体の悪癖を知り、たまりにたまった疲労を取り除くという意味でも、まさに一石二鳥の企画であることはいうまでもありません(笑)。

今後、人々の生活がコロナ禍以前の状態に戻るかどうかはわかりません。だからこそ、もうこれ以上、コロナに翻弄されないよう、ベースとなる心身のコンディションくらいはしっかりと整えておきたいものです。そもそものベースが崩壊してしまっては元も子もありませんし、コロナに付け入る隙を与えてしまうことにもなりかねませんからね。

というわけで、行ってきました。場所は、東京・若松河田駅から徒歩30秒のアードライ治療院。被験者は『カラダ美人』という表題とは真逆の中年オヤジM(「看板に偽りあり」でスミマセン)。施術者はもちろん本欄監修の山本康子院長です。

ところで、これまで数度にわたる取材の中で、いつも山本院長に感じていたのは、優しい微笑みを浮かべながらも、ヒトの体や姿勢に対する鋭いまでの観察眼。実際、職業柄もあってか、例えば上体が左右どちらかにほんのちょっと傾いているだけでもそわそわしてしまうらしく、電車に座っている人、道行く人を振り返っては、この人の場合、体の傾きの原因はここに潜んではいるのではないか、あるいはああいうふうに歩いている人はこういう癖が身についているからではないかなど、いつもあれこれと思考を巡らせてしまうそうです。

山本院長、かえって疲れませんか? 観察眼が優れているのも考えものですね。自分には、そういう能力がなくてよかったとつくづく思います。

とはいえ、当初は私も弱みを見せるのが嫌で、実はいつも「姿勢を正しく!」を心がけていたものです。しかし、無理をすればするほど、化けの皮というのはすぐに見抜かれてしまうもの。そのうちに気取ることなく、ありのままの姿をさらけだすようになっていました(笑)。というわけで、私の体の特徴については、すでにモニタリング済み。

加えて、この日は施術前に「現在の体の状態を確認しておきたい」と、ちょうど腰の高さくらいのテーブルの前に少し広めの足幅で立ち、両手をテーブルの端をつかんで上体を前に倒すよう指示されました。いわゆるラグビーのスクラムを組むときのような体勢です。

「こうすると、体の様々な状態が見えてきます。座骨をもう少し遠くのほうにもっていくことはできますか?」

「む、無理です」

「股関節の伸びが悪いですね。ももの後ろ側もパンパンに張っていることもわかります。あと、肘周辺にも緊張があるようですね。さらに右足のアーチが内側に落ちていて、左足の外側(小指側)、小指外転筋にすごく負担がかかっています。加えて……」

「いいところがまったくありませんね(落ち込む私)」

「今、運動は?」

「まったく……」

「わかりました。それでは施術を開始しましょう」

こうして数々の難題を抱えた体は哀愁を漂わせつつベッドへと移動。うつぶせになり足裏の消毒を受け、いよいよ約1時間にわたる施術がスタートしました。

まず、山本院長がアプローチしたのは、右腕の上腕三頭筋。厳密に言えば、上腕三頭筋と上腕二頭筋の溝の部分だそうです。

「ん~~~硬いなぁ。伸びが悪い。こんな三頭筋ありえない……。え? どうして三頭筋からアプローチしたのかですか? これは施術者としての”触覚‟がそう仕向けたというのでしょうか。まず、ここを触ってみたいな、と。そもそも腕が伸びてこないと、背中は本来の広がりを見せることはありませんからね」

「いたた…」

「全然力入れてないんですけどね。多くの人から『先生、怪力ですね』と言われますが、まったくそんなことはありません(笑)。か弱い乙女なのに。普通に触って痛いと感じるのは、そこに何らかの症状が潜んでいるという証しです。でも、これはまだほんの序の口かも(笑)。いずれにせよ、体の深いところの緊張が強いようですね。体幹も右側屈(左重心ゆえに右に傾いている)となっていて、Mさんの日頃のデスクワーク姿が容易に想像できます。言い換えれば、現在の体の状態は日々の長時間にわたるデスクワークによって形状記憶されたものと言えるでしょう。長年にわたって蓄積されたものですから、一朝一夕に取り除くことはなかなかもって至難の業です」

施術は、右半身を腕、肩・首周辺、背中、股関節周り、そして脚へと降りていきます。すると、山本院長が突然、「膝が痛くなることはありませんか?」と尋ねてきました。

「え? 実は最近、不安に感じることが多いんです」

「なんとなく嫌な感じではないでしょうか? アライメントがよくないですね。これも右足の外反母趾とつながっているのかもしれませんね。また、長時間の座位によって腸腰筋・腸骨筋の不活性化(働き悪い)との関連よる右母趾への影響も考えられます」

実は、右足の外反母趾がずっと以前から気になっていたことを、問診の段階で山本院長に伝えていたのですが、なるほど、膝とも深層筋ともつながっていたのかと納得。

次に、施術は左半身へと移行していきます。

「私は、施術を進めるにあたって、歴史の浅いところから触れていくよう心がけています。そして歴史の古い、根強いこわばりにたどり着くと、現状ではすっかり消えていた痛みが懐かしい痛みとしてよみがえってくる。施術によって、5年前の体にタイムスリップするような感覚と言えばいいでしょうか。そういう意味では、施術とは『体の考古学』、いわゆる疲労の元を探る地道な発掘作業と言えるかもしれませんね。つまり、ここが硬いからと言って、そこにだけアプローチしても、実は原因はそこではなかったということが少なくないのです。だからこそ、ヒトの体というのは面白い。あれ?」

「はい?」

「この右足首の前にある傷はなんですか?」

「あっ、それは子どもの頃に負ったケガの手術跡です」

「前脛骨筋を横断するようにぱっくり切れているので、この古傷も右足で踏ん張りが利かない要因の一つかもしれませんね。ちょっと私の手を右足で押し返してみてもらえますか? 今度は左。やっぱり右足のほうが弱い……」

山本院長の施術は、その人のもつ体の特性に導かれて触れてみたいところを転々としていくと言います。まさに無心の境地。すると、次に触ってみたいと思ったところが、右足首で、ふと見たらそこには大きな傷跡があったというわけです。

「左の股関節周りの状態もよくないですね。大腿骨がはまっている向きがよくない。いびつにはまって定着している感じというのでしょうか。整形外科的にはレントゲンをとっても問題なしの範囲内だと思いますが……」

こうして体を一回りして、山本院長の手は再び私の右上腕三頭筋へと舞い戻り、続いて前腕へ。

写真はイメージで、実際とは異なります

「三頭筋はスタート段階よりかなり弾力性が戻ってきていますね。いつもPCに向かっているそうですが、前腕の状態もよくありませんね。ん~~~、これは私がこれまで診た患者さんの中で間違いなく部位別・前腕部門ではワースト3に入ります」

「マジっすか !? 褒められたわけではないのに誇りに思います(笑)」

「ただ、筋肉の質はいいかも。すごく素直で反応がいいから」

「マジっすか !? 今日、初めて褒められました」

ところが、間髪入れず、

「でも、慢性部門があったら、これもワースト3かな」

と、再び奈落の底へ。

施術は、この後、仰向けになって、胸、腹、脚、そして首から頭部へと移行していき終了。もつれていた糸を一つ一つ丁寧に解きほぐすような施術法によって、体が徐々に生き生きとよみがえっていくような感動を覚えた次第です。体はもちろん、頭もすっきりした感じ。

写真はイメージで、実際とは異なります

最後に、今日の診断結果を改めてお聞きしてみました。

「長年の蓄積、あるいは体の様々な問題同士が複雑に絡み合って、それが慢性的な疲労からなかなか脱却できない要因であるということが診てとれました。とにかく根強くかつ根深いものなので、1回の施術だけで取り除こうとするのは難しいと思います。今後、定期的な施術をすることによって、体を元の状態(自然体)に戻していきましょう。私の願いは、体づくりのための筋トレやランニングをする前に、まず体そのものコンディションを整えることを心がけてほしいということ。体のコンディションがいいと、頭の活動(冴え)もよくなるものです」

確かに、その通りでした。いつもは、PCに向かってもすぐに集中力が途切れてしまうのに、その日から原稿の進捗も快調。というわけで、頭の働きが停滞した頃にまたうかがいます。
山本院長、ありがとうございました!

 

アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司