ヨガだけどヨガとは言わない。積極的に取り組んでもらうために【ヨガインストラクター・山内やよいの「ヨガで日本を元気に!!」vol.2】




ヨガに対して、あなたはどんなイメージを持っているだろうか。女性が行なうもの?美容のために行なうもの……?今回、ヨガインストラクターとして、アスリートの疲労回復の促進やがんサバイバーの支援など、多方面で「リカバリーヨガ」の指導を行う山内やよい先生のインタビューを全4回でお届け。第2回は、ヨガの魅力について少し深く語ってもらった。
★第1回は→こちら

ヨガのとっつきにくさを解消したい

――山内先生は多様なアスリートにヨガ指導を実施しているかと思います。近年では、さまざま競技でヨガが取り入れられはじめていますよね。

山内 そうですね。例えば、ラグビーをやっている学生などの指導も行なっているのですが、そのチームにいる外国から来ている選手なんかは、怪我予防のためにヨガをやっている選手もたくさんいますね。第一線で活躍しているトップ選手にとってどれほどヨガが有効かというのはまだ見えていない部分もありますが、ヨガの良さは、海外のほうがよく知れ渡っているみたいで、個人的に続けている人が多いようです。

――NFL(=ナショナルフットボールリーグ。アメリカのプロフットボールリーグ)の選手もヨガを導入していると聞きました。

山内 NFLもですし、NBA(=ナショナルバスケットボールリーグ。アメリカのプロバスケットボールリーグ)も導入しています。野球のイチロー選手もやっていましたね。こういったものはアメリカの方が日本より早く進んでいる傾向にはあるので、海外のアスリートにヨガが浸透していっているように、日本のアスリート界でも、これからもっと流行り出すのかなと期待しています。アメリカでは、90年代後半にはすでに多くのアスリートが実施していたので、もうそろそろかな、と。

――「がん患者」にもリカバリーヨガを教えられているとのことですが、具体的にがん患者の方にはどのような効果がありますか?

山内 女性のがん患者の場合は、治療により「女性性」の喪失や、子育てや介護の真っ只中にいらっしゃる方も多く、精神的なインパクトがとても大きいので、そこからのメンタルの復活が急務になってきます。そのために、呼吸が安定してくるとメンタルも安定するという人間生理を用いて、ヨガで体を動かしながら、体を整える呼吸を意識して、深く呼吸が入りやすい状態をつくっていきます。実際やってみた方からは、体がどう変化したというよりも、「気持ちがポジティブに変わった」という感想を言ってくださる方が非常に多いですね。何かに追われている焦燥感とか、焦りとか不安がなくなったという方がたくさんいらっしゃいます。

――男性の場合はどうでしょう?

山内 男性のがんサバイバーの場合ですと、力強さが一つのポイントになりますね。特に前立腺がん患者の方は男性ホルモンを抑える治療をされているので、体が女性化していくというお悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。そこで、男性の力強さを再獲得することを目標にプログラムをつくっています。下肢を鍛えるために筋トレをしっかりと行って、パワーを取り戻せるような指導を心掛けています。リカバリーという意味では、疲労回復という身体的な側面もあるかもしれませんが、「社会復帰に対してのリカバリー」という意味合いが、がんサバイバー(=がんを経験した人のこと指す)としては大きいかもしれません。

――男性にとって、ヨガは少しとっつきにくさがあるのでのはないかと思います。指導する上で、何か工夫されていることは?

山内 おっしゃる通りで、特に高齢の男性などは、ヨガが苦手な方が多いです。なので、私が担当している男性のがんサバイバーだけのクラスでは、ヨガ教室とは謳わずに、「体づくり教室」と銘打っています。実施している中身は、リカバリーヨガのような感じですよ。

――そうすることで、実践してもらいやすくなっていますか?

山内 特に年齢が上の方には、ヨガと言わない方が良いと聞きますね。ただ、若い男性は意外にもそんなことはないんですよ。私は大学でヨガのクラスを受け持って今年で6年目になるのですが、教えはじめた頃は女子が8~9割、男子1~2割だったのが、今は半々ぐらいになっています。若い男の子はヨガにすごく興味があるみたいで、最近では男子の方は食いつきが良いですね。

――ヨガは女性がやるもの、というイメージが変わりつつありますね。

山内 日本ではなぜかヨガは女性のものという雰囲気になっていますよね。実は、ヨガ発祥のインドでは男性のほうがたくさんヨガを行なっていて。逆に女性のヨギー(=ヨガを行なう人)はほとんどいないみたいです。昔よりは増えたみたいですけどね。いざ日本にヨガがやって来たら、いつの間にか女性の美容のものという感じになってしまっているので、「男女問わずみんなが取り組める楽しいもの」というイメージに変えていきたいです。

第3回は、ヨガの効果を高めるアイテムについて聞いていく。

取材・文/中野皓太 写真/木村雄大

山内やよい
早稲田大学グローバルエデュケーションセンター/杏林大学保健学部非常勤講師。
2006年より、主宰のヨガ教室を開きながら、母親と子どもの健康について都内幼稚園・小学校等で講演活動を行う。その後、都内フィットネスクラブのトレーナー兼所長として、高齢者や障がい、既往歴のある方への運動支援にも取り組む。現在は、大学で教鞭をとる傍ら、国内トップアスリート、学生アスリートのリカバリーサポート、がんサバイバーのレッスン、障がいの者向けのレッスンや、企業向けの講演など、ヨガと瞑想、人の健康についての啓蒙活動に取り組んでいる。
【資格】
・博士(スポーツ科学)
・健康運動指導士
・介護予防運動指導員
・全米ヨガアライアンス認定講師
・国際総合生活ヨガ指導員
・龍村式指ヨガインストラクター 他
【最近の活動】
・湘南ベルマーレトップチームヨガ指導
・早稲田大学水泳部競泳部門ヨガ指導
・早稲田大学ア式蹴球部(男子/女子)ヨガ指導
・亜細亜大学駅伝部リカバリーヨガ指導
・ラグビートップリーグ選手ヨガ指導
・前立腺がん/乳がんサバイバー向けヨガクラス
・病院医療従事者向けヨガクラス
・その他、ヨガのオンラインクラス指導 他

ヨガの効果を最大限に!オススメアイテムとは?【ヨガインストラクター・山内やよいの「ヨガで日本を元気に!!」vol.3】