定期的なサイクルで発生。インフルエンザで紐解くパンデミック




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新型コロナウイルスの世界的な流行は必然だった!? インフルエンザに関する素朴な疑問に答える中、大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知氏が現在のパンデミックを見事に予見。第1例目の感染者が報告される約1年前の記事を抜粋して再録する。(2018年10月18日、『VITUP!』掲載)

Q.インフルエンザの予防接種って受けたほうがいいの?

厚生労働省の発表によるとワクチンを接種してのインフルエンザの予防率は60パーセントと言われています。逆に言うと予防接種をしても40パーセントはかかるということ。予防接種をすればインフルエンザにかからないというわけではなく、ある程度はかかりますというのが、厚生労働省の見解です。

つまり、インフルエンザの予防というよりは、重症化の予防というふうに考えたほうがいいかもしれません。とくにご高齢の方はインフルエンザにかかると重症化して、最悪の場合には亡くなるケースもあるので、予防接種をしておいたほうがいいでしょう。

インフルエンザは水鳥から始まるものです。大前提としてウイルスは種特異性があるため、普通は人間にかかるものは他の動物にはかかりません。もちろん、鳥にかかるものも人間にはかかりません。しかし、遺伝子が突然変異を起こすことで、鳥にかかるウイルスが人にもかかるという事態が起こります。

鳥に対しての感染性を示すA型インフルエンザウイルスの人への感染を鳥インフルエンザと呼んでいます。基本的に人間には抗体がないため、ウイルスが体に入ってくると病気を発症してしまいます。ウイルスを防ぐ抗体をつくるためのものがワクチンなのです。あらかじめワクチンを接種して抗体をつくっておけば、インフルエンザを発症しても軽症で済むという考え方ができます。

ただ、つくるのには時間がかかるため、ワクチンはインフルエンザが流行る時期よりもだいぶ前につくり始めます。予測をもとにつくっていることもあって、必ずしもその年に流行る型と完全に一致するものをつくることはできません。そのため、予防接種をしても完全には防ぐことはできないのです。

インフルエンザの治療薬としてはタミフル、リレンザ、イナビルといった名前を聞いたことがある人もいるでしょう。これらはウイルスが細胞から離れないようにする薬です。感染してしまったウイルスが周りの細胞に広がるのを防ぎ、とどめておけば免疫ができてウイルスを退治して治るというものです。

また2018年2月、前述の薬と異なるメカニズムでインフルエンザの増殖を抑える「ゾルフーザ」という薬が国の承認を受けました。この薬は、リレンザやイナビルのような吸入剤ではなく、経口による1回のみの服用で治療が完了するので利便性が高い上、経口薬であるタミフルより抗ウイルス効果が高いことが臨床試験で示されています。

いずれにしても、発症して早い時期に薬を飲むことができれば、治りも早くなるので、インフルエンザかも?と思ったときはすぐに病院に行くようにしてください。

決まったサイクルでパンデミック発生