2015年の大会デビュー以来、国内外の大会で結果を残してきた長澤秀樹さん。歯科医師として多忙な日々を送る中でもトレーニングを欠かさない、国内トップレベルのフィジーカーだ。2021年にはオールジャパン選手権メンズフィジーク40歳未満172㎝以下級で2位と躍進し、年間のオーバーオール優勝(全階級込みの総合優勝)を決めるJBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021メンズフィジークでも5位入賞をはたした。今回は、そんな長澤さんのインタビューを全4回でお届けする。第2回は、日頃のトレーニングや食事について。
筋トレは生活の一部。感覚を研ぎ澄ませることを大事にしている
――長澤さんのトレーニングは自己流だと伺いました。
「そうですね。誰かに教えてもらったわけではありません」
――1週間のトレーニング内容はどのような形ですか。
「1週間で胸、背中、肩、腕、脚を5分割してトレーニングを行なっています。オフは基本的になくて、ローテーションでぐるぐる回す感じですね」
――1回のトレーニング時間はどのくらいですか。
「仕事終わりに90分ほどやっています。やりたくて仕方がないので、自分の中で当たり前になっています。仕事が終わってすぐ帰ると疲れてしまいますが、着替えてジムに行くとスッキリするんです。むしろ筋トレした方が疲れは取れますね」
――自慢の部位はありますか。
「それがないんですよ(笑)。ですけど、自慢の部位がないからこそ、フィジークで評価されているのかなと思います。自慢の部位があるということは特定の筋肉が発達していて、他が弱いということもあると思います。自分は全体的に人並みより少し上くらいの筋肉が、バランスよくついているから評価してもらえているのかなと思っています。一言で言えば、強みはバランスですね」
――鍛える上で、日頃意識していることは何ですか。
「鍛えたい部位にピンポイントで刺激が入るようなフォームや、重量設定にこだわってやっています。高重量を挙げる、前回より1レップでも多くといった意識はあまりないですね。とにかく効かせたい部位をしっかり動かして、ピンポイントで刺激を与えられるように意識しています」
――ご自身の感覚を大事にしていると。
「とても大事にしていますね。今効いている、今負荷が逃げているといったことはわかりますから。とくに高重量を扱うと、挙げることを第一目的にしてしまって、フォームを崩してしまう方もいらっしゃると思います。全身の力で挙げればそれなりに挙がると思うのですが、そうすると狙った部位への負荷が減ってしまいます。そのようなことがないよう、日々気を付けてトレーニングしています」
――最初に自己流でトレーニングを始めて、そこから本格的に大会に出るようになるまでは壁があると思います。試行錯誤しましたか。
「トレーニング自体はそこまで変わらなかったのですが、問題は減量ですね。一般的に見た腹筋が割れているというのと、大会で勝つための腹筋が割れている絞りと言うのはまったく別次元のものなので、最初はやはり苦労しました」
食べる食材を限定することで、絞りの調整が容易になる
――なるほど。絞りとなるとカギは食事ですよね。どのような食事を摂っていますか。
「まったく知識がなかった頃は、タンパク質と炭水化物少々といったメニューでした。それこそ減量末期になると炭水化物は全部カットしていましたね。それこそ鶏胸肉だけで、地獄のような生活をしていました(笑)。結果はそれなりに出ていましたが、それから大会で筋トレ仲間と出会って、いろいろ教えてもらいながら改良していった形です」
――現在の朝昼晩の食事メニューを教えてください。
「1日4~5食を摂っています。朝から肉や白米を食べるのはきついので、朝食はプロテインとお餅にしています。そこからは白米と牛肉の組み合わせを2回。夜だけサバ缶と卵と白米を混ぜたものを食べていますね。それから、毎食写真を撮るようにしています」
――4~5食ということは、3食目は夕方ですか。
「だいたい18時くらいです。お客様がいらっしゃらなければ18時から18時半の間に食べます。院長からも許可をいただいているので、患者さんがいない間にパクパク食べて歯磨きして仕事に戻るといった形ですね」
――ちなみに写真を撮るのはなぜですか。
「食事を何時に食べたのか記録するためです。トレーニング前にお腹がいっぱいだと種目に集中できなくなってしまうので、トレーニングの2~3時間前には固形物は食べ終わっておくようにしています。トレーニングを21時からやるなら、18時から19時の間には食べておくなどですね。トレーニングの時間から逆算して食事の時間を決めるようにしています」
――食事は、大会シーズンになると変えるのですか。
「基本、食事は牛肉と白米で過ごしているのですが、大会シーズンになると牛肉を鶏肉にしたり、もう少し脂質の少ない肉に変えて、炭水化物の量も少し減らすように調整しています」
――食生活の土台は決まっていて、それを微調整していくと。
「はい。食べるものは米・牛肉・鶏肉・卵くらいなので、オンオフに応じて微調整するようにしています。おそらく、味にはもう飽きてしまっていると思いますね(笑)。野菜はサプリメントで摂るようにしていますが、切れてしまったらそのままにすることもありますし、サプリに関しては適当です。プロテインとBCAAだけはしっかり飲んでいます」
――食事管理も意識しているからこそ、バランスのよい体ができていくのですね。
「職場の理解がないと徹底できないことだと思うので、本当に感謝しています。勤務中、夕方の時間帯に食事が摂れていることは本当に大きいですね。食事を筋肉中心に考えるほど、筋トレは自分の人生に欠かせないものになっています」
(第3回は、仕事とトレーニングの両立について)
取材・文/森本雄大
写真/森本雄大
撮影協力/クローバーデンタルオフィス新宿
東京都新宿区百人町1-15-21 レアル新宿3F
長澤秀樹(ながさわ・ひでき)
歯科医師。19歳から本格的にトレーニングを始め、2015年の大会デビュー以来、国内外の大会で多くの実績を残す。2021年にはオールジャパン選手権メンズフィジーク40歳未満172㎝以下級で2位と躍進し、JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021メンズフィジークでも5位入賞をはたした。