薬を飲むと眠くなるのはなんで?【ドクター長谷のカンタン薬学】




話はそれましたが、では、なぜ抗ヒスタミン薬では眠気が起こるのでしょうか? 一言で言いますと、H1は脳にも存在しているからです。H1の脳での役割は、アレルギー反応の場合とは異なり、覚醒の促進や食欲の抑制、かゆみの促進などです。抗ヒスタミン薬が脳内に移行しますと、H1を阻害し、覚醒の促進の反対、即ち、鎮静状態を作り出します。

簡単に言いますと、眠くなってしまうのです。風邪のときなどは、ゆっくり休むことができるので、抗ヒスタミン薬の副作用がプラスに働くかもしれません。

ただし、仕事があったり、車を運転したりする時は、眠くならない薬を使用したいと思うものです。最近では、アレルギー部位だけで作用して、脳内に移行せず眠気をほとんど引き起こさない抗ヒスタミン薬も増えてきています。

春になるとよくCMで見かける「アレグラ」は、脳内にほとんど移行しないことが証明されており、アレルギー症状は抑えてなおかつ眠くなり難いということで広く使用されているようです。

今回は抗ヒスタミン薬を取り上げましたが、眠気の副作用が知られている痛み止めなどの処方薬がありますので、医師や薬剤師の説明をきちんと聞くことをお勧めします。


長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社