ここにいるみんなが戦わせてくれる俺の大切な家族だ。ありがとう!(映画『レスラー』より)【名言ニュートリション】




VITUP!読者のみなさん、こんにちは。

今回の「名言ニュートリション」は、過酷な現実に打ちひしがられながらも、プロレスラーとして生きる男の人生を描いた映画『レスラー』の名セリフをご紹介したいと思います。

そのセリフがこちら。
「多くの人に“もうムリだ”と言われたが、これしかない。時が過ぎれば“あいつはもうダメだ”“終わりだ”と人は言う。だが、俺に“辞めろ”と言う資格があるのはファンだけだ。ここにいるみんなが戦わせてくれる俺の大切な家族だ。ありがとう!(一部省略)」

主人公・ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソンによるこのセリフは、物語終盤の迫力あるプロレスが始まる前に、観客へメッセージを送るシーンで発せられました。

このランディという男は、80年代に大人気だったプロレスラーだったのですが、プロレスと自身の人気の低迷により、小さなプロレス興行の安い出演ギャラと、小銭稼ぎのアルバイトで生活していました。

輝かしい過去とは程遠い生活を送っていたランディでしたが、伝説の試合と言われたライバル・アヤトッラーとの20年ぶりの再戦話が持ち上がり、この試合を快く受けることに。

「もう一度大きな声援を浴びることができるだろう」と胸が躍るランディでしたが、その後行なわれた試合で心臓発作を起こし、医師からはまさかの引退勧告を提示されます。

この引退勧告を渋々受けたランディは、リングを離れ一般社会での生活をスタート。しかし、度重なる大きなトラブルや不運が続き、現実の過酷さに嫌気がさしたランディは、一度断ったアヤトッラーとの試合を受けることに。心臓発作という持病を抱え、いつ死ぬかもわからない中、リングへと再び上がるのです。

華やかな入場シーンの後に発せられた上記のセリフは、リング以外には居場所がない、プロレスへの情熱とレスラーとして生涯を終えたい彼の決意がにじみ出たセリフです。
自分にとっての最良の居場所を見つけることの方が難しいこの世の中で、ランディは最後の最後でその『居場所』を見つけることができたのです。
そして、この後に見せるプロレスのシーンが圧巻。気迫のある男たちの闘いは、まるで目の前で試合を見ているかのような臨場感に包まれます。

はたして、この試合をランディは制することができるのか? そしてレスラーとしての復帰戦に花を添えることはできるのか?
ラストシーンを迎えたあと、しばらくその場に立ちあがることも忘れるほどにあっけにとられるはずです。

本作は「ブラック・スワン」や「レクイエムフォードリーム」などの名作を世に送り出した、ダーレン・アロノフスキー監督による作品。600万ドルという比較的低予算で制作されながら、アメリカ映画としては史上3作目の快挙となるヴェネツィア映画祭の金獅子賞を受賞し、さらに、主人公のランディを演じたミッキーロークは、この作品でゴールデングローブ主演男優賞を受賞。世界的にも多大なる評価を受けました。

現実の厳しさ、人生の転落を題材に作品を描くダーレン作品の中では、比較的希望に満ちた作品になっております。現在配信サービスのU-NEXT、TSUTAYAのレンタルサービスで観ることができますので、気になる方はぜひご鑑賞を。

文/中野皓太