佐久間編集長のパーソナルトレーナー百人斬られ(仮)Vol.27 伊田暁人 前編




VITUP!編集長・佐久間が全国のパーソナルトレーナーさんを巡っていく「パーソナルトレーナー百人斬られ(仮)」。今回登場するのは東京大学大学院の博士課程で筋生理についての研究を行ないながら、Bulky Labを主宰する、伊田暁人トレーナーです。前編では“筋肉の専門家”の異名をとる伊田トレーナーの歩みを紹介していきます。

伊田暁人トレーナーは、パーソナルトレーニングジム「Bulky Lab」の主宰であり、東京大学大学院にて筋生理の研究にも励む、多忙な日々を過ごしています。自身がウエイトトレーニングを始めたのは高校時代からで、ラグビーで鍛えた体は筋骨隆々。しかし、元々はガリガリだったと言います。

 

「今の自分を知っている人にはビックリされますけど、元々はすごくガリガリで大きくなれなくて苦労しました。ラグビーをやっている人は体格のすごい人だらけなので、どうしたら立ち向かえるのだろうと考えていました。ウエイトトレーニングを始めたのは高校生のときからで、その頃から筋肉を大きくする方法をインターネットで調べていました。昔から自分でいろいろ調べるのが好きでした」

 

大学卒業後は実業団の横河武蔵野アトラスターズに入団。仕事をしながらラグビーにも取り組む生活をしていくなかで、ケガに苦しめられてきました。

 

「実業団での3年間では、前十字靭帯を3回断裂して、ラグビーをしたというより、リハビリをしていた感じです。プレーできた期間は本当にわずかな時間でした」

 

伊田さんは3度目の前十字靭帯断裂で引退を決意しました。そんなとき、偶然読んでいた本をきっかけに、次なる道へと動き出していきます。

 

「ケガをしたから能動的に何かをやろうと考えたわけではなく、これは本当に偶然だったんです。元々、自分はフィジカルエリートではないので、どうやったら大きくなれるかを考えていて、筋肉に興味がありました。入院中に、お医者さんから現役でラグビーを続けるのは難しいと言われたとき、たまたま石井直方先生の筋肉の本を読んでいました。そこで、筋肉の勉強をする道もあるんだなと思って、病院のベッドから石井先生にメールをして、入試について問い合わせたんです。これがトレーナーの道に進むきっかけとなりました」

 

石井先生と直接コンタクトをとって入試の日程を知った伊田さんは、社会人として仕事をしながら、筋生理学、栄養学、スポーツ医学といった勉強に励み、2020年に東京大学の大学院へと進学します。ところが、新たなスタートを切った矢先に、新型コロナウイルスの影響により、社会全体が生活様式の変化を余儀なくされました。最初の1年間は学校に通うことができず、結果的に仕事とラグビーの両立だったときと比べて、時間にゆとりが生まれることになりました。

 

「大学に行くことができなくて、やれることと言ったら自分で文献を調べて勉強するだけだったので、時間にすごく余裕があったんです。これは何かをやらなければと思って、トレーナーとしての活動を始めました。座学に関しては普通に人よりも勉強していたので、その延長線上でいろいろな資格を取りました。実際の指導に関しては、ずっと自分でトレーニングをしてきたので、過信ではないですが、自分ならできるだろうという自信はありました」

 

こうしてトレーナーの道を歩み始めた伊田さんの武器は、当然、筋肉やトレーニングに関する豊富な知識。「筋肉の専門家」と呼ばれるほどの知識を持ちながらも、それ以上に大事にしているものがあります。

 

「期待されているところは理論的なところ、知識の部分だと思うんですけど、自分としてはそこよりも、根本的なコミュニケーション、お客様が何を求めているかに気づけることが大事だと思っています」

 

コミュニケーションを大事にすることで、トレーニングの楽しさを伝える。伊田さんは、しんどいことを楽しんでもらえるように、お客様の年齢や性別、体格やスポーツ歴などから、トレーニングを工夫しています。

 

「トレーニングって辛くないと体は変わらないので、それ自体はしんどいものなんです。でも、“しんどい”と“楽しい”は相反していないと思うので、トレーニングは苦しいものではないということを伝えていきたい。運動への苦手意識が大きい人もいると思いますが、筋トレは難しいことではないですし、体が変わる楽しさや喜びを味わってもらい、なおかつ運動をして健康になることで、人生が豊かになるということも幅広く伝えられたらと思っています」

 

修士課程1年目の2020年は、自ら筋肉の研究をしながらトレーナーとしての土台つくりに励み、2021年には自らが主宰するパーソナルジム「Bulky Lab」をオープン。現在は大学院での研究、ジム経営、トレーナーとしての指導と、三足の草鞋を履いて奮闘しています。普通ならパンクしてしまいそうな状況も、伊田さんが「まだまだいける」と言い切れるのは、過去の経験や身近な人たちの影響があります。

 

「ラグビーをやっていたことで自分のキャパシティーが広がったと思っています。実業団時代は朝から仕事をして、夕方から夜遅くまで練習をして、土日も練習や試合で、連休には合宿に行ってという生活だったので、すごく大変でした。その経験があるので、どんなに忙しくても大丈夫だって思えるんです。また、石井先生や佐々木先生(伊田さんの指導教員)がやってきたことと比べたら、僕のやっていることなんて全然大変ではないです。そう考えると、まだまだいけると思えるんです」

 

この4月からは博士課程の2年となり、伊田さんの研究の日々は続いていきます。

 

「博士で勉強していることは、パーソナルで指導する上では知らなくてもできることなので、ジムですぐに生きることではありません。でも、できなかったことができるようになったり、知らなかったことを知ったりすることは楽しいです。1やったら10わからないことが出てくることの連続なので、研究は尽きることがありません」

 

研究が尽きることがないように、伊田さんの向上心や好奇心、チャレンジ精神が尽きることもありません。「人生を楽しむために自分を高めていくことが一番楽しいです」という伊田さんは、この先もエネルギッシュな活動で、周囲の人々にエネルギーを与えていくことでしょう。

 

というわけで、今回はここまで。次回は伊田さんのパーソナルトレーニング実践編をお届けします。

 

【トレーナーPROFILE】
伊田暁人(いだ・あきと)
学生時代からラグビー選手として活躍し、2017~2019年には実業団の横河武蔵野アトラスターズに所属。2020年より東京大学大学院にて、運動生理学を研究。現在は博士過程で筋生理について研究を行ないながら、Bulky Labを主宰。ヘルスケアアプリ『OWN,』監修。Testosterone氏との共著『史上最強のダイエット』著。
〔保有資格〕
NSCA-CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)/NASM-CES, PES(コレクティブエクササイズ、パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)/SMART TOOLS血流制限アドバイザー

 

【パーソナル情報】
Bulky LAB
〔住所〕渋谷区元代々木21-9 シルエット元代々木101
★入会金=1万5000円
〔プラン〕
★スターターパッケージ=トレーニング60分
★コンプリートパッケージ=トレーニング60分+食事指導
〔料金〕
★スターターパッケージ1カ月(税込)
ライト(週1)49,800円/レギュラー(週2)79,800円
★コンプリートパッケージ(税込)
2カ月(16回分)260,000円/3カ月(24回分)370,500円/4カ月(32回分)468,000円
詳細はホームページをご確認ください

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。