まさに達人の体幹。1試合45得点、“精密機械”を生み出す日常とは【金丸晃輔(前編)】




190cm越えの大男がひしめくBリーグ(男子バスケットボールリーグ)において、約12年間3Pシュートを沈め続ける選手がいる。金丸晃輔選手、34歳。学生時代から数多のタイトルを獲得してきた男は、今日も淡々とゴールを射抜いている。

本企画ではバスケ選手のフィジカルに迫る企画として、そんな金丸選手の秘密に迫っていく。外角シュートを得意とするシューターポジションとして活躍する彼に注目するには、爆発的得点力をなしには語れない。

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【フォト&ムービー】まるで“リアル・三井寿”。入りだしたら止まらない金丸選手の連続3P

2020年シーズンには1試合45得点(うち3Pシュート11本)という驚異的な数字を残し、Bリーグにおける日本人最多得点記録を更新。学生時代から1試合40得点越えをマークしているなど、その得点力は日本人選手の中でも群を抜いている。

そんな彼の真骨頂は、とにかく“ブレない”。相手選手にぶつかられようとも、全力ダッシュからのストップシュートであっても、まるで何の影響もないかのようにボールをリングに放り込んでいく。“精密機械”のような凄みを見せつける彼は、その秘密は「体幹力」にあると語る。

「体幹をしっかりしないと空中のボディバランスが保てないので、どんなに体制を乱されてもシュートの腕と体の中心が一直線になるように意識しています。そのためには強い体幹が必要不可欠ですね。上体が斜めになろうと、足がぐちゃぐちゃになろうとそれは同じです。極論、ゴールに正対できればどんな体制でも決めます」

そんな彼のブレない軸をつくるトレーニングは、まず体幹から始まる。まずはベーシックなプランクを1分3セット、さまざまな姿勢に変えながらさらに数セット行なうという。体幹トレをウォーミングアップとし、そこからウエイト種目に入る形だ。それだけでなく、いかなる時も体の軸を意識することで“達人の体幹”はつくられる。

「特別にトレーニングをするのはプランクくらいで、あとは他の部位を鍛えながら体幹も意識するようにしています。ランジをするにもベンチプレスをするにも、腹筋に力を入れながらやるんです。そうすれば体幹が鍛えられますし、ケガも予防できるので一石二鳥です。日常生活でも腹圧を意識しているので、たとえば下に落ちているものを取るとか、そういう時にも体幹を意識していますね」

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日常からの意識の積み重ねが、本番で見せるブレないプレーにつながっているのだ。それほどに体幹を重視する理由は、金丸選手が理想とするシュートシーンに起因する。

「フォーメーションを使って、チームとしてつくり上げたシュートであればノーマークで打つこともあると思うんですけど、実際はよほどのことがないとフリーでは打てないです。だから僕は自分でどんどん動いて、チャンスをつくってシュートを打ちます。そうすれば相手の守りも乱れて、チャンスを広げることができるので」

仲間にお膳立てしてもらうシューターではなく、自らチャンスをつくれる存在でありたい。そのためには激しい動きの中でも決め切る体幹力が必要不可欠というわけだ。そういったプレーを長年続けた結果「体に染みついてきました」と金丸選手は笑う。

「大学までは体幹はまったく鍛えていませんでしたよ。やっても“見せ筋”ばかり鍛えている感じでした(笑)。ただプロに入ってから多くケガを経験して、このレベルでタフなプレーを続けていくには体幹を鍛える必要があると思いました。トレーニングに取り組み始めてから、プレーの精度が上がってケガも減りました」

(後編では金丸選手の集中力の秘密に迫る)

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