「安井さんに並びたいではなく、越えたい」ビキニ新勢力・廣中れな、絶対女王に挑み続けた2023年と未来の展望




フィットネス競技の身長別日本一を決めるオールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップスにおいて、ビキニフィットネス163cm超級は絶対女王・安井友梨が8連覇を達成している鬼門ともいえる舞台。その階級で2年連続2位と女王に肉薄しているのが、ビキニ新勢力の廣中れな選手だ。磨かれたプロポーションや独自の路線を行くメイクなどスター性は十分、そんな彼女が2023年の挑戦を通してたどり着いた心境とは?

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安井さんと『並びたい』から『越えたい』へ

——2023年を振り返って、どのような1年でしたか。

「オールジャパンで2位というのは2022年と同じ結果でしたが、自分の中ではまったく違う意味を持ったものになりました。2022年は絶対女王・安井友梨さんと並びたいというのが一番で、そのために他の選手を追い越さないといけない。人の3~4倍がんばらないといけないという気持ちがありました。ただ、2023年のオールジャパンまでの1年は安井さんと並びたいではなく『越えたい』と自然に思う自分がいて、強気な姿勢で挑むことができました」

――あこがれから越えるべき存在へと、ご自身の中でとらえ方が変わっていったのですね。

「はい。コンディションがいい状態で挑んで、もしダメだったらもう一回出直せばいいやというくらいの思い切りで安井さんに挑戦できました。なので結果は2位で悔し涙は出ましたけど、スッキリしている自分もいたんですよ。やりきったなという気持ちがあったので、そこは去年の自分より大きく成長したかなと思います」

——安井選手は2023年、フィットモデルの世界大会で優勝されました。その姿を見てどういったことを感じましたか。

「安井さんがすごく笑顔で喜んでいる顔をインスタで拝見して、それだけ強い思いで私の何十倍、何百倍とプレッシャーを感じつつ、それに打ち勝って今の安井さんがあるんだなと痛感しました。オールジャパンで負けた時は悔しかったですが、これまで安井さんが積み重ねてきたものに比べれば私はまだまだ甘いと思います」

——話は変わりますが、廣中選手はシングルマザーとなった30歳からボディメイクを始められて、2024年で4年目を迎えます。競技を始めてからの自身の変化については、どのように思われますか。

「ボディメイクに出会わなければ今の自分はいないと思います。今までピアノとか水泳とかも長く続けることはできましたけど、トップを目指すほどの情熱はなかったんです。会社を経営していた時も同じような感じで熱が入らなくて、『お前に何ができるんだ』と言われながら言い返せないことに悔しさも感じていました。何か一つ、熱い思いを持ってできるものがあればと思ってボディメイクを始めて、ここまでのめり込むことができました」

――廣中選手にとって、熱量を注げるものがボディメイクだったんですね。

「はい。最初に挑戦するには勇気が必要だったんですけど、体が変わるごとに自信もついてきて、だんだんと『いろいろなことに挑戦してみよう』という決断ができてきたので、ボディメイクが私の人生を180度変えるきっかけになったと思います」

——熱い思いでここまで走ってきたと思いますが、2024年のシーズンに向けての目標もお願いします。

「今も安井さんを越えたいと思っていますが、他人と比べることがすべてではないと最近思うようになりました。今年はとにかく自分のステップアップに焦点を当てて、少しでも上を目指したいですね。国内の大会でも順位を落とさないことが最低条件ではあるのですが、アーノルド・クラシック・ヨーロッパやIFBB世界選手権でもどこまでいけるかチャレンジしたいです。2024年の世界選手権は日本で開催されるということで、審査も並ぶ相手も雰囲気もまた変わってくると思います。いろいろな意味で新たな挑戦ですね。自分史上最高の状態で大会に臨めるように調整していきます」

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廣中れな(ひろなか・れな)
1990年6月15日生、鳥取県出身。30歳からボディメイク競技を本格的にスタートさせ、2021年からJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の『オールジャパン・フィットネス・チャンピオンシップス』ビキニフィットネス163cm超級に挑戦する。2022年にはビキニの絶対女王・安井友梨に次ぐ2位、2023年も連続で2位と女王に肉薄する活躍を見せている。

取材・文/森本雄大
写真/木村雄大