「マッチョゴリさん」の愛称で親しまれ、女子プロレス団体・スターダムで活躍する飯田沙耶。気迫あふれるファイトで観客を魅了し、今や人気レスラーとなっているが、デビュー当初は基礎体力の面でもついていくのが精一杯だったという。加えて145cmと小柄だった彼女は、プロレスラーとして個性をアピールする方法も模索する日々。その中で突破口となったのが筋トレだった。
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トレーニングでたくましいボディを手に入れると、“マッチョなゴリラ”をイメージしたキャラクターや、相手を真正面から受け止めるファイトスタイルも確立していった。2019年には若手のためのシングル王座、フューチャー・オブ・スターダムのベルトも獲得。まさにこれからというとき、彼女を右ヒザ前十字靭帯および外側側副靭帯断裂のケガが襲った。
「つらかったですね。脚が細くなってしまったのを見たときはショックでした。しかも左右で差があるんですよ。それが目に見えてわかるのが衝撃で…。ただ、入院中も上半身は元気なので、できることだけでもやろうと思ってチューブを使ってのトレーニングはやってました。退院してからの1カ月も安静にはしてたんですけど、パーソナルトレーナーのところに出かけて、無理のない範囲で練習はしましたね」
ヒザ裏の筋を表に移植したという飯田。下半身を動かせるようになってからは、負傷個所を意識しながらのトレーニングをするようになった。これがかえって、プロレスとの紐づけにつながった。負傷前と負傷後で、気づいたことがあるという。
「今まではひたすら筋肉をつける、筋肉を大きくするために筋トレをしていました。見た目だけと言うのはイヤですけど、そっちばかりを意識していたところはありましたね。でも、結局はプロレスと絡めないと意味ないじゃないですか。そこに気づいて、ケガを治してからはジャンプで着地した瞬間を意識して脚の体幹を鍛えるようになったし、ラリアットを打つときの筋肉とか、実際に試合で使う筋肉、その筋肉を使う瞬間を意識してトレーニングに連動するようになりました」
飯田は、試合中の動きと筋トレを連結させる練習法を発見したのだ。では、具体的にはどんなメニューを取り入れているのだろうか。
「ジムでトレーニングするのは週に3回から4回。実際には巡業もあったりするので、週3回行ければいいですね。今日が上半身なら次は下半身というように、部位を決めてやってます。それに、有酸素運動中心の日も作りつつ。そのなかでも、一部位に最低4種目はやるようにしています。徐々に負荷や角度、スピードを変えながらやりますね。できる最大の負荷で10回ワンセットの合計3セット。そこからドロップセットでだんだん下げていって、最終的には軽い重さを20回やって終わるとか。筋肉を大きくするのと速く動かす練習とではトレーニングの仕方が違うので、そういうのも含めて、ストレッチを利かせたりなどパターンを変えてやるようにしています」
実際に闘う動きを意識することで、より効率いいトレーニングができるようになった。たとえジムや道場で練習できないときでも、巡業中の会場にチューブを持参。リングの鉄柱にかけてケーブルマシンの代用とし、自重のトレーニングも行なっている。
もちろん、食事にも気を使う。巡業の際には食事が偏りがちだが、彼女は鶏の胸肉とおにぎりでエネルギーを補給し、試合に臨むという。では最後に、これから筋トレを始めてみようという人に対してのアドバイスを聞いてみた。
「ガムシャラにひとりでやるのもいいんですけど、教わることが大事なのかなとは思います。ひとりだとやり方やどこに効いているのかわからなかったりもするので、やっぱり最初は誰かに教えてもらうのが一番だと思いますね。たとえば腕立て伏せならただ回数をやるのではなく、どこに効かせているのか、効いているのかを意識して、脳みそと筋肉を連動させてやるのが効果的じゃないですかね」
筋肉を大きくするためのトレーニングから、試合を意識した筋トレへ。それはまた、プロレスラー飯田沙耶の個性にもつながった。これからも、マッチョゴリさんはマッチョゴリさんらしく、彼女の決めゼリフ「この筋肉とともに!」闘っていく。