自宅で綱のぼり、週末は8km超ラン 柔道女王・渡邉聖子をつくった幼少期




警視庁所属の柔道家・渡邉聖子選手は、体重無差別で日本一を争う「皇后盃 全日本女子柔道選手権大会」で初優勝を飾った。本来63kg級の渡邊選手は、決勝では自身よりも30kg以上重い選手に真っ向勝負の末に勝利しての栄冠だった。体重差をものともしない圧倒的なパワーの源に迫るインタビューの前編は、子どもの頃のトレーニングとターニングポイントについて聞いた。

【写真】渡邊選手が実践する高強度トレーニング

5人きょうだいで切磋琢磨
自宅で毎日綱のぼり

――渡邉選手は5人きょうだいでお姉さん、お兄さんの影響で柔道を始めたそうですが、子どもの頃から体力づくりのトレーニングはしていたのですか?

渡邉 父が柔道をやっていて体力や筋力の大切さをわかっていたので、子どもの頃から基礎体力をつける練習はしていました。土曜日と日曜日は、家から4~5kmのところにある寒川神社まで走って、お参りしてまた家まで走って戻るということをしていました。

――往復すると8km以上走っていたのですね。

渡邉 はい。最初のうちは結構きつかったんですけど、お参りするのは楽しいし、そこで休憩もできるので、段々と慣れていって当たり前にやるようになっていました。家に帰ってきてからは綱のぼりです。

――自宅に綱のぼり用のロープがあったんですか?

渡邉 父が太いロープを使ってつくってくれたんです。座った状態から腕だけでのぼるのを5本、多い時だと10本のぼっていました。その後に柔道の内股をイメージした足上げのトレーニングです。足に錘をつけて跳ね上げる運動を100回。それが終わってから腕立て伏せ、腹筋、背筋というメニューでした。

――しっかり基礎体力をつけていたのですね。

渡邉 柔道が強くなるためにも力は大事だからということで、父も一緒に腕立て、腹筋、背筋をやっていましたし、きょうだいも一緒なので、みんなで切磋琢磨していました。
家にベンチプレスもあって、兄は小学生の時からやっていました。私や姉、妹がバーベルを使ったトレーニングを始めたのは中学生になってからです。小学生の頃は走ったり、自重のトレーニングが多かったですね。

25kgプレートを装着してのチンニング。子どもの頃から綱のぼりをしてきた強さが感じられる

トップ選手との対戦で
フィジカルの重要性を感じる

――子どもの頃から基礎体力トレーニングやウエイトトレーニングに取りくんできて、大変だったことはありますか?

渡邉 ないです。私は綱のぼりも大好きですし、きつい時はありますけど、嫌だと思ったことはありません。腕だけで綱をのぼると、腕の筋力と同時に腹筋もつくので一石二鳥だと思ってやっています。

――柔道は全身の力が必要だと思いますが、渡邉選手が特に重要だと思うのどの部分でしょうか?

渡邉 一番は体幹だと思います。体幹がしっかりしていないと、引く時にブレてしまうし、相手に崩されやすくもなってしまうので、体幹が一番大事だと思います。体幹の強化は私もまだまだ必要だと思っているので、そこはしっかり強化しつつ、上半身、下半身も強化している感じです。

――柔道の試合をしていくなかで、フィジカルの重要性を感じるようなターニングポイントはありましたか?

渡邉 子どもの頃から力は強いほうだったこともあって、あまり力の差やフィジカルの壁みたいなものは感じたことがありませんでした。でもシニアのトップで試合をするようになって、髙市(田代)未来さん(※オリンピック3度出場の実力者)と対戦した時に、すごく力の差を感じました。未来さんはいなしてもブレないし、奥襟から崩そうとしても何をやってもブレなくて。柔道の試合では、技がうまかったり、組み手がうまかったりしても、体の力が強くない選手はあまり嫌ではないんです。でも、体の力が強い選手と対戦すると、崩すにも組み手をつくるにも、何をやるにしても力を使うのですごく疲れるんです。未来さんと対戦して、「やっぱり体の力は大事なんだ」って思いました。

組み手、崩しからもフィジカルの強さを感じさせる(写真/柔道マガジン)

――世界のトップで闘っている選手のフィジカルの強さを身をもって体感したのですね。

渡邉 そうですね。国際大会に出場するようになると、外国人選手とも闘うことになりますし、海外の選手の試合を見る機会も増えます。国際大会で試合を見ていても体の力が強い人が勝っているなと思ったんです。警視庁に入ってからはエニタイムフィットネスで、個人でウエイトトレーニングをやったいたのですが、世界で勝つためのフィジカルを手に入れようと思ったら、自分だけでやっていくのは限界があるなと思いました。何かを変えないといけないと思って、トレーナーを探すようになりました(中編に続く)。