警視庁所属の柔道家・渡邉聖子選手は、体重無差別で日本一を争う「皇后盃 全日本女子柔道選手権大会」で初優勝を飾った。柔道女王の圧倒的なパワーの源に迫るインタビューの中編では、鬼頭祐介トレーナーとの出会い、そして柔道の試合におけるフィジカルの変化を聞いた。
トレーニング効果で体重差を克服し
無差別の闘いを制す!
――トレーナーをつけてのトレーニングを始めたのはいつからですか?
渡邉 昨年の6月くらいからです。それまで大学時代にトレーナーに教わったメニューを一人でやっていたのですが、スクワットをやってベンチプレスをやってという感じで、どうしてもパターン化してしまうんです。YouTubeでトレーニング動画を見ても、本当に自分に合っているのかもわからず、トレーナーの必要性を感じていました。そんな時に警視庁の同期に現在教えてもらっている鬼頭さんを紹介してもらいました。1回体験でトレーニングをやらせてもらったら、すごく楽しくてトレーニング指導をお願いしました。
――鬼頭祐介トレーナーは数多くのアスリートを指導している方ですね。
渡邉 そうなんです。野球、ラグビー、柔道…いろいろなアスリートを見ていて、その選手に合ったトレーニングメニューを考えてくれます。私の場合も、実際に試合の映像を見てもらって、片足になった時のバランスが悪いということで、それを改善していくためのメニューを考えてくれました。
――今年に入って2月の全日本シニア体重別選手権大会、そして4月の皇后盃全日本女子柔道選手権大会で連続優勝を飾っています。トレーニングが柔道に生きていることを実感できるところはありますか?
渡邉 自分の体にフィットしてきている感じはありますね。元々、ケガはしにくい体だったのですが、鬼頭さんと出会ってからよりケガはしにくくなったと思います。また、柔道をやっていても、力負けしなくなりましたし、受けの強さが身についた感覚があります。
――体重無差別の皇后盃では自分よりも50kg、30kg重い選手を相手にしても力負けは感じませんでした。
渡邉 重量級の選手を相手にしても力は負けていなかったと思います。鬼頭さんの考えているメニューは、重量をクリアできるようになるとドンドン上がっていくので終わりがありません。そうやって扱っている重量が増えていくのが数値でわかると、嬉しくてモチベーションが上がりますし、「これだけ上がっている」と自信にもつながります。これだけやっているのだから負けないと思って試合に臨めています。

試合の状況と似ているトレーニング
――単純な筋力アップだけでなく、柔道に生かせる力がついているのですね。
渡邉 競技に生かせるようにメニューを組んでもらっています。以前はスクワットもフルスクワットで重量を上げることを意識していたのですが、今は片足状態でやることに重点を置いています。柔道では片足で技をかけたり、踏ん張ったりする場面が多いので、それを鬼頭さん相談してメニューを組んでもらいました。私の場合、軸足(右足)は強いのですが、反対の足で立った時にバランスが崩れたり、体幹がブレたりという弱点を指摘してもらって、今はリバースランジや片足のボックスジャンプ、ウォーターバック・サイドジャンプなどを取り入れています。最初の頃は軸足ではない左足ではブレブレだったのですが、今はバランスも取れるようになってきましたし、強くなっている感覚はあります。
――上半身のほうも柔道を意識しているのですか?
渡邉 ウエイトトレーニングは週に2回で、上半身の日と下半身の日が1回ずつです。基本的に柔道の稽古をやった後にウエイトトレーニングを2時間やるので、ウエイト始める前からきついんですよ(笑)。

――柔道の稽古で全身の力をつかっているのできついですね。
渡邉 上半身の日は後半になると腕が張ってきてきついんですけど、これは柔道の試合と一緒なんですよね。柔道の試合でも1、2回戦は元気でも、試合を重ねて準決勝、決勝になると、乳酸も溜まって腕が張って、きつい状態で試合をすることになります。でも、普段のウエイトでも、セット数が重なって乳酸が溜まった状態でトレーニングをしているので、試合の時も意外ときつくないというか、最後までしっかり力を出し切れるようになりました。トレーニングの後半と試合の後半は体の状態、疲労感が似ています。そこでしっかり出し切ることで柔道でも勝てると思って、トレーニングでも追い込めています。
――常にきついところから追い込んでいるわけですね。
渡邉 2時間がっちりトレーニングなので、柔道の練習が終わってからいく時は「きついな」って思うこともあるんですけど、トレーニングが終わった後は、「きつかった。でも楽しかった」ってなっています(後編に続く)。

