日本のクロスフィット競技者たちが目標とする舞台「Japan Championship」。2019年の立ち上げから成長を続け、今では全国各地のクロスフィットジムを巻き込み、選手・観客・運営スタッフを合わせた総動員数は約1,600名、スポンサー・協力企業は約40社にのぼる大会へと発展した。
2026年大会では、これまでの東京から山梨県甲府市へと会場を移し、新たな一歩を踏み出した。広くなった会場では、これまで取り入れられなかった種目の導入や競技環境の改善にも挑戦。全国から集まった選手たちが日頃のトレーニングの成果を競い合い、多くの観客や仲間たちが声援を送った。
この大会を立ち上げたのが、自身も2011年からクロスフィットに取り組み、国内外の大会に挑戦してきた古屋信登(ノブ)さんだ。日本の選手たちにも競技の楽しさや、目標に向かって成長する喜びを知ってほしい。そんな思いから始まった大会は、どのように現在の規模へと成長したのか。創設の舞台裏から甲府開催に踏み切った理由、新たな会場での挑戦まで、古屋さんに話を聞いた。

まず日本に目指せる大会をつくろうと
――2019年にJapan Championshipを立ち上げたきっかけを教えてください。
「僕自身、2011年からクロスフィットのトレーニングを始めました。当時はアジアでも競技人口が少なく、いろいろな大会にチャレンジできる環境があったんです。毎年大会に出場して、翌年に向けて課題を見つけて成長していく。その過程が本当に楽しくて、人生のすべてをかけたいと思うぐらい夢中になっていました。ただ、年々韓国をはじめアジアでもクロスフィットが盛り上がり、競技人口が増えていきました。
そうなると、これから始める日本人が大会に出たいと思っても、目指せる場所のハードルが高くなってしまう。僕が経験してきた競技の楽しさを知らないまま、離れてしまう人もいるんじゃないかと思ったんです。
だったら、まず日本に目指せる大会をつくろうと。そこで競技の楽しさを知って、さらにアジアや世界の大会へ羽ばたいてもらえたらいいなと思ったのがきっかけです」
――大会をゼロから立ち上げるのは大変だったと思います。最初はどのような体制だったのでしょうか。
「じつは最初、一人でやりきろうと思っていたんです(笑)。僕の本業はジムの経営とトレーナーなので、大会運営がどれだけ大変なのか、まったくわかっていなかった。逆に、わからなかったから始められたのかもしれません。当時はまだ日本のクロスフィットコミュニティも今ほど出来上がっていませんでした。日本一を決める大会にしたかったので、トップ選手たちを運営に入れてしまうのも違うと思っていました。でも、実際に予選を始めてみると、一人では絶対に無理だとわかったんです。
そんなとき、本業でマーケティングやブランドパートナーシップを手がけるメンバーが、スポンサー営業やSNS運用などで協力してくれることになりました。さらに、日本語と英語の両方に対応でき、クロスフィットのコーチとしても豊富な経験を持つメンバーをヘッドジャッジとして迎えました。そこから少しずつ、大会の理念に共感してくれる仲間たちが集まるようになり、今の運営体制につながっています」
――今なら大会運営の大変さも十分わかっていると思います。もし2019年の自分に声をかけるとしたら、もう一度やろうと言えますか。
「今の知識を持ったまま2019年に戻って、もう一度立ち上げるかと言われたら、正直なかなか厳しいですね(笑)。でも、実際に続けてきて、毎年多くの人がこの大会を目標にしてくれるようになりました。選手のレベルも年々上がっています。日本のクロスフィットコミュニティにとって、まず目指す場所として認知されてきたことは、すごくうれしいです。まだまだ成長しなければいけない部分はたくさんありますが、一歩一歩、根付いていく大会にしていきたいですね」
新しい驚きや体験を届けたい
――今年は東京から甲府へ会場を移しました。ノブさんの地元での開催を振り返っていかがですか。
「まず、自分の地元で開催できたことは非常にうれしかったです。ただ、アクセスの良い都心で限られた広さの会場を選ぶのか、それとも地方に出て大きな会場を確保するのか、開催を決めるまでは本当に悩みました。地方開催となれば、選手が本当に来てくれるのか、観客は集まるのかという不安もありましたが、今回は実際にやってみないとわからないということで、挑戦することにしたんです。アクセス面では皆さんにご不便をおかけしたと思いますが、それでも予想以上に多くの選手、観客、ボランティアの皆さんが集まってくれました。本当にありがたかったですし、あらためてクロスフィットコミュニティのつながりの強さや、一人ひとりのクロスフィットに対する熱い思いを感じました。開催地が変わっても、これだけ多くの人が集まってくれる。それが何よりうれしかったですね」
――広い会場になったことで、大会の雰囲気も変わったように感じました。
「初めての会場だったので、正直チャレンジはかなり多かったです。ただ、せっかく大きな変化を加えるのであれば、コミュニティの皆さんにも新しい驚きや体験を届けたいと思っていました。その一つが、競技の幅を広げることです。これまでは会場の広さの制約から取り入れられなかったシャトルランなどの種目も、今年は新たに導入することができました。結果として、アスリートのフィットネスをより多角的に試す大会にできたと思っています。また、これまで選手の皆さんからいただいていたフィードバックをもとに、今年は競技レーンの広さにも投資しました。従来の165cmから180cmへと、1レーンあたり15cm広げています。今後はさらに、選手が横一列に並んでも、安全にバーベルを使った競技ができるだけのスペースを確保していきたいと考えています。
もちろん、レーンを広げるにはそれだけ費用もかかります。それでも、選手の安全や競技環境の向上に必要な投資はしっかり続けていきたい。そのためにも、スポンサー企業の皆さんからの協力や資金調達にも、これまで以上に力を入れていきたいと思っています。もちろん、運営面では反省点もたくさんありますし、決して現状に満足しているわけではありません。選手や観客、ボランティアの皆さんからいただいたアンケートの声もしっかり受け止めて、来年以降の大会をさらによくしていきたいですね」


