試合中ほぼ走りっぱなし、ジャンプにコンタクトなど、フィジカル要素が詰め込まれた競技であるバスケットボール。漫画・SLAM DUNKでおなじみの同競技には5つのポジションが存在し、各々が支え合ってチームを形成している。
コート上の監督と呼ばれるポイントガード(PG)、外角シュートやPGの補佐を務めるシューティングガード(SG)、オールラウンドな得点能力に優れたスモールフォワード(SF)、ゴール下を主戦場とするパワーフォワード(PF)、ゴール下の要となる大黒柱・センター(C)がそれぞれの役割をはたしているのだ。
そこで本企画では各ポジションの選手に注目し、必要なフィジカルやトレーニング方法を紹介する。今回話を聞いたのは、PFとして東京2020オリンピックでも活躍した名古屋ダイヤモンドドルフィンズの張本天傑選手。進化系PFとも言える、彼のフィジカルに迫った。
筋力アップだけでなく、機動力の維持も至上命題
今回注目するパワーフォワードとは、バスケ漫画・SLAM DUNKの主人公である桜木花道と同ポジションだ。「リバウンド王!」という名セリフが示すように、シュートミスしたボールを拾ったり、チームの大黒柱・センターの補助をするなど、ゴール周辺で“黒子”に近い仕事を担うのが古くからパワーフォワードの役割だった。
しかし張本選手はPFの役割をはたしつつ、ドリブルでの切り込みや外角シュートなどで、相手の守備陣形を広げる役割も担う。これはアメリカのNBAから広まった「ストレッチフォー」と呼ばれるPFの発展形だ。もはや黒子ではなく、チームの花形ポジション。そんな「進化系・桜木花道」とも言えるプレーを体現できるのが張本選手の真髄といえるだろう。
「自分のチームだとストレッチフォーもそうですが、スモールフォワードのポジションをこなすこともあります。大きな外国人選手ともフィジカルで闘えて、小さくて素早い選手にも対応できるというのが自分の強みだと思っています」
198㎝の体躯に似つかわしくない走力や、強固なディフェンス力を備えた張本選手は、チームを根本から支える存在となっている。そんな彼がフィジカル面で意識しているのは「機動力を保ちつつの筋力アップ」なのだという。
「太りすぎても動けなくなってしまうので、シーズン中はベスト体重をキープしながら、走力を落とさないようにすることを意識しています。日本代表ではストレッチフォーに専念することが多く、ゴール下でのマッチアップが多くなるので、バランスを見ながら体重や筋肉量も増やしていきます」
筋トレばかりして走る練習をおろそかにしては、本番では通用しない――。ウエイトトレーニングでフィジカル強化に努めるだけでなく、練習では試合後に28mのコート2往復を5本、エアロバイクを漕ぐなどスタミナ面での追い込みも欠かさず行なっている。そして、ゴール下でのコンタクトにおいては、足腰のみならず胸の筋肉も重要になるとのことだ。
「手で守ろうとするとファールを取られてしまうので、ドリブルでの切り込みもゴール下の押し合いも、胸で止めることを意識しています。クッションになる大胸筋がないと骨が折れてしまう場合もあるため、胸のトレーニングはすごく大事だと思います。それから下半身はコンタクトに対して踏ん張る際に必要だと感じますね。上半身はもちろん、下半身も意識して鍛えるようにしています」
(後編に続く)
張本天傑(はりもと・てんけつ)
1992年1月8日生、愛知県出身。中部大学第一高等学校、青山学院大学を経てトヨタ自動車アルバルク東京に入団。2016年シーズンからは名古屋ダイヤモンドドルフィンズに移籍した。日本代表としても豊富な実績を持ち、チームを支える存在となっている。198cm、105kg、ポジションはPF-SF。
◆張本選手が所属する、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのHPはこちら
取材・文/森本雄大
写真提供/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ