2024年のワールドカップ出場を目指し、挑戦を続けるスピードクライミング選手の大嶋あやのさん。彼女の原点はTBS系列の人気番組『SASUKE』であり、女子選手史上2人目の1stステージクリアを達成。SASUKEナンバーワン女子選手との呼び声高い存在です。
そんな彼女がVITUP! 動画コンテンツ『美筋女子TIME』に出演し、現在の活動に至るまでの紆余曲折を語ってくれました。
【トーク動画】大嶋さんが語る「人生の壁を超える」ための思考法。“クライマーあるある”や奇抜な私生活も告白
「仕事はいつでも元に戻せる」目標を見据えて安定を捨てる
日本女子体育大学を卒業後、都内の信用金庫に就職した大嶋さん。海外版SASUKE『Ninja Warrior(ニンジャウォーリアー)』で日本代表を経験したことを皮切りに、「日の丸を背負って世界で戦いたい」という思いが芽生えたのもこの頃でした。高い目標に到達するには多くの練習が必要になりましたが、仕事との両立に苦戦を強いられます。
「当時は17時過ぎに仕事が終わってクライミングジムに行って、帰ってくると日付が変わっていました。夜中の2時から朝の6時まで4時間寝て仕事に行く毎日なので、いつも会社の昼休みに昼寝していましたね。どんどん不健康になっていきました(笑)」
そこからスピードクライミングに打ちこめる環境を整えるのに約1年。徐々に実績も伴い、もう少しで日本代表に入れるというレベルまで到達しました。そのタイミングで大嶋さんは一念発起し、信用金庫を退職する決断をします。
大学で勉強した幼児発達学を活かし、フリーでキッズパーソナルトレーナーの活動をしていたものの収入はアルバイト程度。生活の柱を手放してでも挑戦を決行した背景には、大嶋さんのある思いがありました。
「昔から子どもたちに『夢を持ちなさい』っていう大人はたくさんいるじゃないですか。私は幼少期にそういう大人に対して『夢持ってるんですか?』って思っちゃうタイプだったんですよ。だから自分がこれから子どもに関わる時には、何かに対してがんばっている姿を見せられる状態にしたかった。仕事はいつでも元に戻せるから、挑戦した先に何があるかを伝えていけるようにしたいなと思ったんです」
プロのクライマーから一転、突然の契約解除
決断をした大嶋さんの元に大きなチャンスが到来します。プロのクライマーとしての契約先が見つかり、クライミングを仕事にすることに成功したのです。
しかし、「人生最高潮でした」と歓喜に沸いたのも束の間、約半年後には契約解除を言い渡されてしまいます。そこで大嶋さんは初めて、正社員としてのあてがなくなるという事態に直面しました。お金がない、遠征にも行けない――。不安で眠れない日々を過ごす中、声をかけてくれたのは同棲中のパートナーでした。
「『一個仕事失っても死なないでしょ。寝なくても寝てもお金入ってこないよ』って言われて、たしかにそうだなと思いました。悪い時って自分で流れを変えようとしても変わらないから、今自分が置かれている流れに身を任せる。何とかなるって思えるようになりました」
ピンチの時こそ凪のような心で。大嶋さんは何もしない時間をつくって趣味をしたり、いろいろな人に会いにいく方向に舵を切ります。その結果、目標ややりたいことに賛同し、助けてくれる仲間に出会うことができました。
「私が挑戦し続けたSASUKEもなかなか反り立つ壁(1stステージ最後の難関)が突破できなくて、ネットで叩かれて辞めようか悩んでいたんですけど、仲間やスタッフのみなさんの『もう少しやってみたら?』っていう声に押されて、続けたらクリアできました。悪い時にもがいても沼にハマっていくだけなので、まわりの声を聞いたり流れに乗ることはすごく大事だと実感しましたね」
現在はキッズパーソナルトレーナーとしての仕事も軌道に乗り、生活の基盤も安定してきました。2024年は目標であるワールドカップに向け勝負の一年。かつて味わった困難も力に変え、大嶋さんは世界への挑戦を続けていきます。
【大嶋さんが出演したトーク動画はこちら】
文/森本雄大
写真提供/大嶋あやの