プロレスラー、俳優としてトップに立った男の哲学
リングネーム“ザ・ロック”、本名ドウェイン・ジョンソン。プロレスラーとして、俳優として、世界最高峰の地位に上り詰めた男である。その哲学が、この言葉に凝縮されている。
Blood, sweat and respect. The first two you give. The last one you earn.
Dwayne “The Rock” Johnson (The official Facebook page for Dwayne “The Rock” Johnson, January 7, 2012)
この男をドウェイン・ジョンソンと本名で呼ぶ人たちの多くは、彼を俳優として認識していることだろう。中には、アメリカのプロレス団体WWEで活躍したザ・ロックを知らない人たちも、多数いることだろう。無理もない。俳優としての経歴は20年近くに及び、2016年には、フォーブス誌の「世界で最も稼ぐ男優」ランキング1位の座に輝いたほどなのだから(6450万ドル)。
だが、その栄光の軌跡の始発点は、WWEのザ・ロックにある。レスラーの人気競争が激しいWWEは、新陳代謝が早い世界であり、飽きられれば直ぐに解雇される。そんな厳しい舞台WWEに、ザ・ロックは、本格的な俳優転向後もスポット参戦を繰り返し、ファンたちを熱狂させている。WWEにおける公式名では、レスラーはレスラーではなく「スーパースター」であるが、ザ・ロックほどその呼称に相応しいスーパースターは稀である。
更には、次期大統領選に立候補という話すら聞こえてくる(Washington Post Web版、2017年5月10日)。冗談の発言に始まった話だが、何か現実的な期待感さえ漂っている。なお、現大統領のドナルド・トランプには、WWEオーナーと、代理のレスラーが負けたら自身が丸刈りになるという、実に馬鹿馬鹿しい勝負でWWEに登場し、勝利した過去がある。
何度もMuscle & Fitness誌やMen’s Health誌の表紙を飾ってきたその肉体。他のレスラーたちの追随を許さない、圧巻のマイクパフォーマンス。俳優としての名声、大統領候補という期待の声。ドウェイン“ザ・ロック”ジョンソンが、一身に浴びる絶大なるリスペクトは、大量の血と汗の結晶に他ならない。
痩せたい、健康になりたい、逆三角形になりたい、強くなりたい、試合で活躍したい。ジムには、あらゆる目的を持った人たちが集う。それぞれの目的の先には、リスペクトが待っている。だが、それは、ただ待つだけで与えられるものではない。ジムで、ロードで、大量の汗を流し、血を熱くたぎらせよう。「リスペクトは、お前が勝ち取るもの」なのだ!
文/木村卓二