ケガから復帰し五輪金メダルを目指す 世界選手権を制した女子柔道家のボディケア




柔道では投げ技、寝技の攻守両面において、筋力と同時に柔軟性は不可欠なもの。また、ケガ予防の面でも試合前後、練習前後のストレッチは欠かせない。昨年、柔道女子70kg級で初の世界一に輝いた田中志歩選手に、歩みを振り返ってもらいつつ、ストレッチの重要性や今後の目標について聞いた。

【写真】田中選手が実践するストレッチの様子

柔道は肩甲骨の柔軟性が大事 足の指を1本、1本ストレッチ

山口県出身の田中選手は、現在も100 ㎏超級の選手として活躍する兄・源大選手とともに5 歳から柔道を始めた。並行して水泳とバレーボールにも取り組んでいたほか、小学5 年生の時には山口県から世界へ羽ばたくトップアスリートの人材育成を目的とした「YAMAGUCHI ジュニアアスリートアカデミー」のセレクションにて、セーリングとレスリングの2 競技で合格。レスリングを選択し、高校までは柔道との二刀流で全国レベルの活躍を見せてきた。

柔道ではインターハイ優勝、レスリングではジュニアクイーンズカップカデットの部優勝と、どちらの競技でも世代トップクラスの実績を残してきた。同じ組み技格闘技でありながら、求められる柔軟性は少し違うという。

「レスリングはブリッジをしたり首の柔軟性がないと大ケガをする危険がありますし、タックルフェイントへの反応などで膝が柔らかくないといけません。柔道はそこまで首や膝の柔軟性は重要ではないかもしれませんが、肩甲骨の柔軟性がレスリングよりも大事です。背負投にしても、内股にしても、肩甲骨の柔軟性が必要になるからです。ケガ予防という意味で、柔道ならではと言えるのが足の指のストレッチです。練習前にしっかりやっておかないと、畳の隙間に挟まった時に開放脱臼してしまうことがあります。私は練習前には指1 本、1 本、両手でつかんで動かすようにしています」

世代でもトップクラスの実績を残してきた田中選手(写真/ 柔道マガジン)

田中選手は高校卒業後、バルセロナ五輪71 ㎏級金メダリストの古賀稔彦氏が総監督を務めていた環太平洋大学に進学。これを機にレスリングを辞めて柔道に一本化するとともに、ストレッチの重要性も意識するようになった。

「大学では必ず練習前と練習後に結構長い時間、ストレッチをやっていました。最初は強制的にやらされていた感じでしたが、しっかりやることで練習での動きや練習後の疲労感が違うこともわかって、それからはギアを使ったり、自分で必要なものを取り入れるようになっていきました。今はみんなでやるストレッチのほかに自分が必要だと思う部分のストレッチも一人でやりますし、練習後は部屋でも筋膜リリースをしています。血行を流すと翌日の疲労が全然違うので、時間を決めずに自分で納得するまでやっています」

ケアの重要性も学び、充実した練習環境で鍛えられた環太平洋大学時代には、体重別の日本一を決める講道館杯で2 連覇を達成するなど、国内トップレベルの大会で活躍。国内にとどまらず、グランドスラム、アジア大会といった国際大会も経験し、順調にトップ選手としての階段を駆け上がっていく。

そして大学卒業後の2021 年4 月からJR 東日本の所属となると、70 ㎏級の選手でありながら体重無差別で争われる「皇后盃 全日本女子柔道選手権大会」で見事に初優勝を飾った。

翌2022 年にはグランドスラム・テルアビブを制して、IJF ワールドツアーで初優勝。実績と勢いが評価されて初めて世界選手権代表の座をつかんだ。しかし、この晴れ舞台となるはずの世界選手権が悪夢の舞台となってしまう(後編に続く)。

◆本記事は日本ストレッチング協会 協会誌「CREATIVE STRETCHING Vol.72」で紹介された内容を再編集したものです。

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