マネージャーから闘う側に転身 “まったく強くない”女子レスラーが愛される理由




「がおーっ!」

彼女が雄叫びをあげると、会場の空気がいっぺんに変わる。両国国技館だろうと、後楽園ホールだろうと、大田区総合体育館だろうと、地方の小さな体育館だろうと、この空気感の変化だけはおんなじだ。

彼女の名前はメガトン。マリーゴールドに所属する女子プロレスラーだ。

【写真】まさに愛すべき弱さ リングに立つメガトン

写真提供/マリーゴールド

上下ツナギのコスチュームに身を包み、顔面にはペイント、そしてビンビンに立てた髪の毛。その佇まいはまさに令和の極悪女王……と言いたいところだが、残念ながら、そうではない。冒頭で書いた「空気感の変化」も、極悪レスラーが登場してヒリヒリするのではなく、お客さんの顔がイッキに笑顔になり、会場全体が穏やかなムードになる、という意味なのだ。

ある地方会場で小さなお子さん連れのお客さんがリングサイドで観戦していた。初めて見るプロレスラーの迫力にお子さんが「怖い!」と泣き出してしまった。そこにメガトンが近づいていって至近距離から「がおーっ!」と叫んだ。あぁ、なんて余計なことを……これは大泣きしてしまうぞ、と誰もが思った次の瞬間、小さなお子さんはメガトンの顔を指さしてキャッキャと大爆笑したのだ。その光景に会場全体がほっこり。子どもは本質を見抜くというが、きっと、あのお子さんは瞬時にわかったのだろう。メガトンは決して怖くないし、まったく強くもないということを。

そう、メガトンは弱い。

もともとはプロレスラーではなく、悪役軍団や外国人選手のマネージャーとしてマリーゴールドのリングに登場した。普通、マネージャーといえばリングサイドから的確な指示を飛ばし、レスラーをコントロールするのがお仕事になるのだが、メガトンは逆にレスラーのわがままに振り回され、ついには「お前が足を引っ張るから負けるんだよ!」と難癖をつけられ、ユニットから追放されたことも。

ペイントして、チェーンをぶん回しているのに、なんともいえない悲壮感が漂うメガトンの姿に、いつしか観客は「かわいそうだけど、おもしろい」と彼女を応援するようになり、今では登場しただけで客席から「がおーっ!」の声が飛びまくる。会場が一体となって盛りあがれるから、メガトンの試合は楽しい、となり、ある意味、会場人気はトップクラス。まさに天性のいじられキャラ……いや、愛されキャラなのだ。

ただ、弱いのである。だからメインイベンターにもなれなければ、団体が管理するベルトに挑戦することもまずない。それでも評価されるのはケガなく、試合に出場しつづけている、という部分にもある。

「じつは試合でケガをしない方法を私は知っているんですよ、がおーっ!」

はたして、その方法とは?(#2に続く)