5月23日、後楽園ホールで久々のリング復帰を果たした女子プロレスラー・ジャングル叫女(きょうな)。ヒザの負傷により、何度も手術を繰り返した末の、まさに執念と悲願の復活劇だった。

ヒザの故障はプロレスラーにとって避けては通れない、いわば職業病ではあるのだが、彼女の場合はちょっとばかり事情が違う。経年劣化とダメージの蓄積によってヒザがパンクしてしまったわけではなく、まだキャリアも浅い段階での負傷だった。
「じつは道場での練習中にやっちゃったんですよ。別に難しいことや危ないことをしようとしたわけじゃないんです。リングの上でタックルの練習をしていただけなので」
なにげない日常の光景だった。しかし、ほんの少しだけ違和感があることを本人はわかっていた。でも、言えなかった。
「そのころ、足の親指を骨折していたんですよ。ただ、まだ若かったし、筋力も体力もあったから、これぐらい大丈夫だ、と試合に出続けていました。でも、やっぱり普通にマットに足をつくと指に痛みが走るので、いつもかかとから足をつけるのがクセになっていたんですよね。あとから考えたら、それがすべての元凶だったんです」
プロレスラーたるもの、それぐらいのケガでは休まない、というのは昭和からあった風習。特に目に見えない部分のケガほど、そういう傾向は強くなる。とはいえ、さすがにそんな根性論はなくなっていたが、彼女はプロレスデビューの年齢が遅かった。大学卒業後、青年海外協力隊員としてセネガルに2年間、滞在し、現地で小学校の体育教員を務めていた、という異色の経歴があるからだ。
帰国後にプロレスラーになったので、ほかの選手と比べると、かなりの遠回りをしてしまったことになる。彼女が所属していたスターダムには当時、キッズレスラーとして小学生からリングに上がっていた選手もいたからなおさら、である。
持ち前の体力のおかげで、なんとなく骨折をファンに隠しながら、試合をし続けることができてしまったことがいちばんの不幸につながってしまったのかもしれない。
かかとから着地し、そのまま動くという不安定な態勢のまま、いつものように低い姿勢からタックルに入った瞬間、ジャングル叫女のヒザは悲鳴をあげた……。(#2に続く)
