「まずは日常生活を返してください」2度の手術失敗と車いす生活 ジャングル叫女を襲った5年半の停滞




道場での練習中にヒザの前十字を傷めてしまったジャングル叫女はその4年後の2020年秋、ついに左ヒザ前十字靭帯と右ヒザ外側側副靭帯断裂により欠場を余儀なくされた。

この時点でもう手術しか選択肢はなかった。手術をしなければリングには戻れないからだ。

波乱万丈なプロレス人生を送ってきたジャングル叫女。最近では『町の消防団員』という意外な一面も©ジャングルオフィス

【写真】ジャングル叫女のアザーフォト集

「簡単な手術だ、と聞いていたので、じゃあ、お願いしますって感じだったんですけど……その手術がまさかの失敗に終わってしまったんです」

手術の失敗により、さらに欠場期間が延びた。いや、それどころか日常生活でも車いすや杖に頼らなくてはいけない状況に。さらに1年後、2回目の手術も失敗。ちょっと考えられない不幸に目の前が真っ暗になった。

「まずは日常生活を返してくださいって感じですよね。2度の手術の失敗で筋力が著しく低下してしまって、リハビリも思うようにいかない。医療ミスには憤りしかないですけど、あのとき、足の指の骨折の時点で立ち止まっていたらな、とも思います」

どうしてもリングに復帰したい。そこにはかつての盟友だった木村花さんとの悲しい別れがあった。

「みんな辛い思いをしたんですけど、プロレスを続けているみんなはリングでいろんなものを吐き出せていた。でも、欠場している私にはそれすらできない。私だけ、完全に時計の針が止まってしまっていた。一時は『花は私にプロレスをさせたくないのかな』と真剣に思ったこともあったんですよ。さあ、復帰しようと思った矢先に手術の失敗があったり、本当にそういうタイミングで前に進めなくなることが何度も続いたので、あぁ、これは天国の花が私を復帰させないように、きっと、なにかしてるんだって」

それはきっと間違ってはいない。

今、復帰したら、もっと大きなケガをして、本当にリングに上がれなくなっちゃうよ、と花さんは復帰を焦るジャングル叫女の想いを引き留めてくれていたのではないか? きっと、そうに違いない。

何度かエキシビジョンマッチへの出場や一時的な復帰を繰り返し、最初の手術から4年半が経った昨年4月、プロレス界の人間国宝と呼ばれた高橋奈七永が引退することを聞いた叫女は一夜限りの復帰戦として、5分間限定マッチを行なった。

「そのとき奈七永さんに言われたんですよ。『プロレスを辞めることなんて考えなくていい。ダラダラやればいいんだよ」って。そのひとことで救われましたね』

その数か月後、オリンピック選手なども担当している理学療法士に出会い、懸命のリハビリで徐々に筋力が戻ってきた。3か月ごとに成果が出てきて、本人が復帰の目安と考えていた「8割」まであと一歩のところまで順調に回復。今度は花さんも邪魔をしないんだから、本当に復帰できる、という手応えが日に日に強まっていった(#3に続く)。