承認欲求ではないリアルな事情 インスタフォロワー約22万人・現役女子アスリートが発信をする理由




ふとInstagramを開くと、綺麗に割れた腹筋と、弾けるような笑顔が目に飛び込んできた。

フォロワーは約22万人。“世界一過酷なレース”とも呼ばれるスパルタンレースでアジア上位の成績を残し、現在は近代五種でオリンピック出場を目指している陣在ほのかさんだ(フォロワー数は2026年6月時点)。

【写真】陣在さんのプライベートショットや競技写真

一見すると、華やかなインフルエンサーのようにも映る。しかし本人は決して、注目を浴びる目的で発信を続けたわけではない。そこには、競技者として生きるための理由があった。

「結構聞かれるんですよ。『何の仕事をしてるんですか?』とか、『どうやって生活してるんですか?』とか。今は応援してくださってる企業さんのサポートもありますし、SNSのお仕事だったり、イベント出演だったり、撮影のモデルみたいなお仕事をさせてもらうこともあります。スポーツを続けるために、自分で発信を続けないといけないんですよね」

現在の日本では、陸上選手の多くが実業団などに所属し、仕事と両立する形で競技を続けている。一方、陣在さんはフリーという道を選んだ。競技のために使える時間が多くなる一方で、自分で競技費用を稼がなければならない。

「みんなが仕事に行くように、私は大会に出ている感覚です。スパルタンレースとかも、近代五種の練習をするためのお金が必要だから出ている部分もあります。レースに出ればYouTubeの動画にもなるし、SNSにもアップできる。優勝すれば賞金もあります。だから、大会に出ること自体が仕事みたいな感覚でもあります」

現在はスパルタンレースだけでなく、近代五種、トレイルランニング、HYROX(ハイロックス)、ウルトラマラソンなど複数競技に挑戦する“マルチアスリート”として活動中だ。その背景にあるのは単純に“挑戦好き”というだけではない。

「いろんなスポーツをやることで、自分を知ってくれる人を増やしたかったんです。スパルタンレース一本でやっていても、その世界の人しか見てくれないので。マイナースポーツって、自分から発信しないと本当に広がらないんですよ。野球とかサッカーだったら、その世界でがんばっていればメディアが取り上げてくれて、知名度が上がっていくと思います。でも、スパルタンレースだとアジアで何位になっても、それだけじゃ何も伝わらない。だから自分で発信して、応援してくれる人を増やしていく作業が必要なんです」

近年は“アスリート×SNS”という形も珍しくなくなった。しかし、その裏には地道な作業がある。2021年からSNSでの発信を始めた陣在さんは、コツコツと投稿を積み上げてきた。

「本職がインフルエンサーでも動画クリエイターでもないので、練習しながら写真や動画を撮って、編集するのは結構大変です。動画編集を専門の人にお願いしたいと思ったこともあります。そこも結局はお金がかかるので、難しい部分ですね。応援してくださっている皆さんに自分のできることでお返ししたいので、いろいろ試行錯誤しています」

まさに「スポーツをするためにスポーツをする」という生活だ。そんな中で昨年、肩の手術を経験したことで、競技だけで生きることのリスクも痛感した。

「肩を手術した時に、『自分が動けなくなったら、この稼ぎ方はできなくなる』って感じたんです。だから、スポーツ以外の柱も作らなきゃいけないなって。結局、アスリートってそこが壁になってくると思うので」

かつては正社員として働いていた時期もあった。しかし、レース出場のための休暇取得が難しくなり、「スポーツをするために働いているのに、それができなくなるのは違うと思った」と退職を決断した。決して安定した道ではない。それでも、彼女は競技の世界から離れようとは思わなかった。

「やっぱり勝負する世界が好きなんですよね。肩の手術をして大会に出られなくなった時に、それをすごく感じました。練習だけしていても、やっぱり物足りないんです。スポーツをやるからには、ずっと勝ち続けることを目標にしてるので。今、一番大きい目標はオリンピック出場ですね」

その言葉には、競技者としての誇りと魂が宿っていた。そんな彼女に2026年、志を揺るがす大きな試練が訪れることになる――。(#2に続く)