【ちびめがメガネ】今年のガクボはココに注目だ!~全日本学生ボディビル選手権プレビュー~




注目のボディビル・フィットネス大会のポイントやみどころを、観戦マスターのちびめがが語るこのシリーズ。今回は、いよいよ明日に迫った「全日本学生ボディビル選手権」に向けて、大会の注目ポイントを語ってもらいます。

学生フィジークは佐村君の上位は堅いけど
純粋な目で大会を楽しめる

――今年は日体大にはじまり、帝京大、早稲田大、東大、神奈川大(※記事は11月公開予定)とインタビューで回ってきて、いろいろな選手の話を聞いてきましたが、ついに全国の舞台が今週末に迫ってきました。台風が心配ですけど、きっと無事に開催されることを祈って、まずは関東大会を学生フィジークから振り返っていただきたいです。

まず、思ったより出場人数が少なかったな~というのはちょっと残念。エントリーが54人と少なくはないですけど、初開催で令和元年に初代チャンピオンになれるチャンスがあったので、もっと集まるかなとは思っていました。 その中で優勝した佐村直紀君(日体大4年)はさすがでした。

――9月のオールジャパン選手権のジュニア(172cm以下級)でも優勝しており、やはり頭一つ抜けていました。

アウトラインやバルクは他の選手ともすでに差があるので、そこを1週間で覆すのは簡単ではないので、全国でも彼の優勝は堅いなとは思います。関東以外は見ていないので断言はできませんが……。 ただ2位以下に関しては、他の選手もポージングなどこの期間でも改善できる点や、当日に向けて調整し直せる点は十分にあるので、入れ替わりの可能性は大いにあると思います。

――2位は日体大のルーキー國武知弘君。これはけっこうな驚きですが、終始笑顔で、1年生らしくステージを楽しんでいる姿が印象的でした。

4月に日体大バーベルクラブのインタビューで少しだけお話しましたが、イキイキしていましたよね。顔がかなり小さいので、体のバランスの良さがより際立って見えたのかなって思います。実績がない國武君がここに割り込めたのは、やっぱり審査員の方々も選手の名前をそんなに知らないので、 先入観無しにすごく純粋な目で見てもらえた結果ではないでしょうか。

國武知弘君(日体大1年)

――逆に、3位の川村圭吾君(帝京大4年)はものすごく悔しそうでしたね。

審査結果票を見ても、かなり際どい差だったとは思いますけどね。川村君とは大会後に少しやり取りしましたが、調子は決して悪くはなかったし仕上がりも良かったと言っていました。ただ個人的には、もっと自信持ってほしいなと感じましたし、ステージを楽しいんでいいんじゃないのかなとは思いました。同じく帝京の森信太君が4位に入ったのも、かなり意外でしたよね。

――5月のインタビューでは、「腕と脚に自信があるのでボディビルに出場する予定」と話していたので、フィジークとのダブルエントリーは驚きました。

全体的にデカいというのはあの時から感じていましたけど、ここまで絞ってフィジーク体形に仕上げてくるとは。帝京は今年クラブが新設されたばかりですけど、ボディビルで入賞した高橋明生君や渡邊祥也君、世界大会に行っている辻大成君も含め、なぜこれだけの選手がここに集まっているのか不思議なくらいです。よほど、主将の高橋豊友君の求心力がすごいのかなぁと 。

――あとは、指導者の影響も?

バズーカ岡田隆先生 のように、帝京は川田茂雄先生が実は裏でいい指導をしているとか。取材の時は、「自分なんて出なくていいですから」と控えめだったのに……大会終わったら、話を聞いてみたいですね。

――関東の上位選手に各ブロックの選手も加わるわけですが、佐村君の上位は堅いとしても、他はなかなか予想が難しい。

そうですね。正直私も、地方の学生フィジークまでは生で観られていないので。下馬評を覆すような選手が出てくることに期待したいです。先ほども言いましたが、この学生フィジークに関しては審査員の方もそうですけど、観客としていらっしゃる方もいろんな先入観をなしに観ることができるので、ある意味、競技として一番面白いかもしれませんよ。

“三天王”を崩す選手は現れるか?

――ボディビルのほうは、触れるまでもなく相澤隼人君(日体大2年)の優勝はほぼ間違いないでしょう。なので、やはり注目は2位以下。とはいえ、五味原領君(日体大4年)と長瀬嘉剛君(早稲田大4年)を含めた“三天王”は鉄壁でしょうか。

堅いとは思いますけど、並んでみるまで分からないのがボディビル競技ですので、 波乱があるのでは?と思いますね。むしろ起きて!(笑)。個人的に感じたのは、もし長瀬君が もう少し黒かったらどう見えていたのか……です。今回の福生市民会館のステージは、照明の影響なのか? 全体的にかなり色白に見える感じでした。もっと黒かったら果たして……。

――2位の五味原君は、あの日は体調を崩したとTwitterでも言っていてその中でも2位は立派ですが、逆に言えば長瀬君にも十分チャンスはありそうです。

五味原君は14日のジュニア選手権も出場予定ですし、どこにピーキングを合わせてくるか……中1日空けて両方に合わせてくるのか。長瀬君は学生大会一本なので、そこの調整の差が出てくるかもしれないですね。

――フィジークと同様に、ボディビルも各ブロックからどんな選手が出てくるのかは楽しみ。

去年の高校選手権優勝の宇佐美一歩君(阪南大1年)も、この1年でかなりデカくなったという噂を聞いているので期待してます。隼人君を筆頭に日体大2年の八巻晴太君もそうですけど、エリート街道というか、高校生の時から結果を出していた選手が大学でも活躍しているのはここ数年のガクボの新しい流れのような気がします。他にも、岡山大、愛知学院大といった名門からもどんな選手が出てくるのか、楽しみです。

中央が宇佐美一歩君(阪南大1年)。昨年の高校選手権にて

――関東4位の佐村君、5位の高橋明生君(帝京大2年)も含め、このあたりの争いは本当に予想できない感じがします。

当日に並んでみたときの印象、立ち位置などを考えると関東とは順位が変わってくることは大いにあると思います。隣に誰が並ぶかによっても変わるので、立ち位置の運はけっこうあるんじゃないかと。フィジークもそうですけど、一発目の印象が勝負を大きく左右するかもしれません。あと佐村君、フィジークの選手という印象がありましたけど、ボディビルでもかなり様になっているなぁって。フィジークでは見られない、雄叫び顔が印象的でしたね。そんな顔するんだ?って。

――ガクボと言えば部分賞も。関東の腹部分審査では、かなり珍しいバキュームのポーズもありました。早稲田大OBの和田駿君のTwitterによると、2013年以来とか。

もう臼井審査委員長の気まぐれというか(笑)。私はこれまでやったのも見たことがなかったです。隼人君でさえも「そんなのやったことないよー」みたいな顔をしていたのは面白かったです。果たして全日本でも臼井先生はやらせるのか?

関東学生でのバキュームポーズ

――どの部分もやっぱり相澤隼人君の優位は今後もゆるがないでしょうけど、もしかしたら?ってのは見どころですよね。

やっぱりこういう、規定ポーズじゃないポーズがあるのがガクボの楽しみなところですよ。だから各大学のインタビューをしたときに、「部分賞狙ってみなよ」みたいな話をみんなにしていたんです! 結局隼人君がもっていくにしろ、ピックアップされただけでも自信になると思いますし。部分賞もですが、フリーポーズもね。個人的には、全日本でも国際武道大の斎藤魁斗君のフリーポーズが楽しみにしています。

――フリーポーズといえば、楽曲も個性豊か。

スカしてる曲が多くなかったですか(笑)。カッコイイというか、クールな曲が今の流れかもしれませんね。まぁポージングってことを考えれば、そっちのほうがしっかり見せられるのかな(笑)。

――でも、アニソンは強しというか。「ダンベル何キロ持てる?」の「お願いマッスル」は絶対に誰か使うだろうな、とは思っていました(笑)。

それもガクボならでは(笑)。そういえば、意外にというか、アイドル曲が関東ではなかったですね。以前はAKB48などの曲も多かったのに。時代の流れですかね。

――さて、そろそろ話をまとめましょう。

フィジークにしてもボディビルにしても、上位の選手に大きな変動がないのは、この競技ですからある程度仕方がないことかなと思います。でも1週間あればポージングなどを修正することはできますし、最後の調整、そして当日の運も含めればまだまだわからないので、選手たちのみなさんはぜひ最後まで頑張ってほしいと思います。

――大会当日の選手それぞれの臨み方もですし、応援する側の声も助けになると思います。

その通りです。例えばですけど、東大は観客席から応援の「かけ声」はもちろんですけど、「もっと審査員のほうを向け!」「隣との間隔を詰める!」「笑顔!」といったアドバイスのような言葉が飛んでいて、うまいなぁと思いました。そういうところは、個人だけではなく部としての経験もあると思います。

――ただ応援するだけではなく、選手のサポートになる声も大切だと。

はい。そういうところも含めてガクボの良さだと思うので、選手たちはもちろん観客としていらっしゃる方も楽しんでほしいです!

取材・文/木村雄大
写真/高野明喜(インタビュー)、木村雄大(競技)