夢に向かって暮らせる健康的な社会を実現したい【「うんちは健康成績表」鈴木啓太(AuB株式会社代表)】vol.4




元サッカー日本代表であり、現在は腸内フローラ(腸内細菌の生態系)解析事業を行うベンチャー・AuB(オーブ)株式会社の代表取締役を務める鈴木啓太氏。これまでに約700人1,400検体にも及ぶアスリートの“うんち”を基にデータの分析をするなど、腸にフォーカスしたアスリートのコンディション管理、パフォーマンス向上を目標に、日々研究を行っている。最終回は、今後のビジョンについて。

アスリートのみならず一般の方の健康に寄与していきたい

――現在も日々研究やビジネス展開を考えておられると思いますが、お話いただける範囲で今後の展開について教えてもらえますか。

鈴木:まずはビジネス面で言えば、商品のラインナップを揃えていくというところはあります。ただ我々は何かをプロダクトとして提供するだけではなく、人に寄り添ったサポートが必要だと思っています。人ってなかなか継続してやり続けるのが難しいじゃないですか。でもなんでアスリートたちはあそこまで、自分の体を痛めつけてまで取り組み続けることができるのか。そういった面に対して、我々ができるサポートを考えて作っている段階です。研究としては、新たな菌の発見などに取り組んでいるというところです。

――サポートをしていくなかで、実現したいことがありますか?

鈴木:僕たちがどんな世界を作っていきたいかというと、いつまでも自分の好きなこと、自分の夢に向かってチャレンジし続けていける世界なんですよ。そうすることができたら素敵だなと思います。人間は、チャレンジすることや夢を追いかけること、好きなことをやっているときが一番輝いているときだと思います。できないことができるようになること、それが人生の喜びだとも思っています。それをするためには、まず何より健康でなくてはいけないですよね。

――健康であることは、そういったことの土台となりますね。

鈴木:そうなんです。で、その土台がどこにあるかと言ったら食べることであったり、寝ることであったりするじゃないですか。そこに対して、腸内環境が関わっているのは間違いない。腸をしっかりと整えること、そのためのお手伝いをしていきたいです。それができると、超高齢化社会である日本が世界に対してもリーディングカントリーになると思います。いまは65、70歳が定年となっていますが、健康寿命が延びて80歳まで働けたほうがいいじゃないですか。我々が腸という面からサポートしていくことで、いつまでも楽しく暮らせるようになったらいいなと思います。そういうところを我々がアスリートの研究のデータを基に、一般の方々に貢献していきたいですね。

――トップアスリートとして活躍され、腸からの健康を小さいときから気にかけてきた鈴木啓太さんだからこそ実現できることだと思います。

鈴木:とはいえ僕は研究者ではないので、研究者たちがやっていることを世の中の人たちへ、「これは大事だよ」とどれだけ広められるかが大切だと思っています。僕は菌のことに詳しいわけではないです、自分の実体験から、絶対に大事だとわかっているから一般の人にも知ってほしいし、そのために「AuB BASE」を飲んでほしい。皆さんに健康になってほしいと、一番思っている人間かもしれません。研究者の方々と一般の方をつなぐ役割ができれば。

――そういった立ち位置というのは、現役時代の献身的なプレースタイルから通じているものがあるのかと思います。

鈴木:そうなんですよ(笑)。僕よりサッカーが上手な選手とか、今の環境であれば優秀な研究者はいっぱいいるんです。だから僕は、せっせと走りまわって(笑)。僕の人生は、どこまでいってもそうなんだなと思います。それが自分の生き方というか、勝手に使命だと思っています。

――ちなみに、今は会社の代表という立場ですが、現役時代に接した指導者の言葉で、今にも通じているものは何かありますか?

鈴木:いっぱいありすぎて甲乙つけがたいですね。あえて言うなら……2012年から浦和レッズの監督を務めたミハイロ・ペトロヴィッチさん(以下、ミシャ)ですね。彼が監督としてやってくる前年の2011年、レッズは低迷して残留争いをしてしまう、苦しくて苦しくてしょうがないシーズンでした。そこで翌シーズンにやってきたミシャが最初のミーティングで、「オマエたちはサッカーを楽しくやっているのか?」と言うわけですよ。4、5万人が入るスタジアムで恥さらしみたいなゲームをして、プレッシャーしかなくて、心の中では「楽しいわけないだろ」と思っていました。そうしたら、「サッカーは楽しくやらないとうまくならないぞ」って言われたんですね。もちろんそれはわかっていたし、「楽しくやっていたけど今は楽しくできないんだよ」と思うわけですよ。

――難しいシーズンを終えたばかりですからね。

鈴木:ただそう思っていたらミシャが、「では、試合の勝ち負けの責任はすべて私が持つ」と。「でも、君たちにも責任はある。毎朝起きたときに練習場に行きたい、サッカーがやりたいという気持ちを持つことだ。それは君たちの責任だ」という話をしたんです。それを聞いたときに、確かにそうだなと。楽しくやらなければうまくはならない、いいアイデアも出てこない。自分たちは、試合の勝ち負けを気にしているからプレッシャーも感じて堅くなる。じゃあ、その責任はすべて監督に渡してしまって、あとは楽しくやればいいじゃないかと思えるようになったんです。

――それが今につながっているわけですね。

鈴木:ビジネスに置き換えて考えれば、僕はいま監督ですよね。従業員の人たちが楽しくやってくれたら、毎朝仕事をしたいって思ってくれたら、こんなに成長する会社はないと思うんです。自分からアイデアを出して、自分で頑張れる。そういうところは、一流の監督と一流の経営者は同じなんだということを感じました。責任の所在を明確にして、どうやったら朝起きたときに仕事をしたいと思ってもらえるか。これは自分が30歳から34歳までがサッカーが一番うまくなったからこそそう思います。だからそういう意識をこれからも持って会社を動かして、皆さんの健康に寄与していければと思っています。

夢に向かって暮らせる健康的な社会を実現したい【「うんちは健康成績表」鈴木啓太(AuB株式会社代表)】vol.4

鈴木啓太(すずき・けいた)
1981年、静岡県出身。AuB株式会社代表取締役。元プロサッカー選手。2000年に、東海大翔洋高校から浦和レッズに加入。ベストイレブンに2度輝くなど、16年にわたり浦和一筋でプレー。2006年にはイビチャ・オシムが監督に就任した日本代表にも選出され、オシムジャパンでは唯一、全試合先発出場を果たす。2015年シーズンをもって現役を引退。同年にAuB株式会社を設立。サッカーの普及に関わりながら、腸内環境にフォーカスした研究を日々行い、その知見やアイデアを事業化。2019年12月にはAuB初商品であるサプリメント「AuB BASE」を発売し、自社ECサイトAuB Storeにて好評発売中。「とくダネ!」(毎週月~金曜朝8:00-9:50、フジテレビ系)の金曜日スペシャルキャスターとして出演中。