サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第48回は、タンパク質はいくら摂ってもいいのか?という疑問について。
■過剰摂取は脂肪として貯蓄される
糖質、脂質、そしてタンパク質を三大栄養素と呼びますが、それはこの3つの栄養素だけがカロリーを持っているからです。
カロリーのないところからはエネルギー(ATP)はつくられませんから、どれほどビタミンやミネラルなどの栄養素を充足させたとしても、大前提はおおもととなるエネルギー源の摂取ということになるのです。
三大栄養素にはそれぞれの役割があって、糖質は即効型のエネルギー源と言えます。お金に例えるならば普通預金のような役割です。それに対して脂質は貯蓄型のエネルギー源ですから、定期預金のような役割となります。そしてタンパク質ですが、これは体の材料となるのが主たる役割のため、カロリーは持つもののエネルギー源となる順番としては後回しです。いわば不動産のような位置づけになります。どれもいざという時にはエネルギー(お金)に換えていくわけですが、それぞれに優先順位があるのです。
三大栄養素として区別されるくらいですから、カロリーがいかに大切かがよくわかるかと思いますが、すぐに使われない余剰となったカロリーは、一部は排泄されますが、その大半は定期預金の脂肪として貯えられることになります。これは飢餓の歴史を背負った人類が生き延びてこられた、重要な機能と言えるかもしれません。
つまり、仮にタンパク質であっても、過剰に摂取すれば太るということになります。ただし、脂肪に変わっていく順番があるため、糖質や脂質の過剰摂取に比べれば太りにくいということは言えるかと思います。
太らないと思って必要以上のプロテインを飲み続ければ、筋肉の材料として使われる分を超越し、体内では脂肪として貯蓄されてしまうことになります。そして太るという以上に、肝臓や腎臓といった内臓への負担のほうが心配かもしれません。
タンパク質はアミノ酸として取り入れられますが、アミノ酸にはアミノ基(-NH2)があり、使われなかったアミノ基はアンモニア(-NH3)へと変化してしまいます。アンモニアは体内では猛毒なので、すぐに肝臓で解毒をし、腎臓でろ過をする必要があるのです。このことが大げさに取り上げられて、プロテインを飲むと肝臓を悪くするなどといった噂が流れたりしますが、それは極端なケースであって少々の過剰分は問題ありません。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。