誰もがおそらくやったことであるであろう、ストレッチ。体を伸ばすこと……と、みんな理解はしているだろうが、実はもっと奥が深いもの。この連載企画では、そんなストレッチのエキスパートである長畑芳仁先生に、ストレッチの奥深さを話してもらう。第1回は、そもそもストレッチとは?
ストレッチとは動物の体の自然な反応です
ストレッチとは、ごくごくかんたんに言えば「筋肉を伸ばす」ことです。筋肉の端は骨に付着していて、反対側の端は関節をまたがって、別の骨に付着しています。筋肉の端と端を遠ざけて、伸ばす行為がストレッチです。
人の体は筋肉が伸びたり、縮んだりすることで動きます。筋肉が硬く、こわばっている。そういったときは、筋肉の長さはいつもより短縮した状態にあります。すると、当然のことながら、動きは制限されてきます。人間が本来動かせるはずの可動性が失われてしまうのです。
本来の動きができなくなると、スポーツだけではなく、日常生活においても様々な不都合が生じてきます。突発的に動こうとした際に筋肉が突っ張ってしまい、痛みを発症してしまうかもしれません。筋肉の短縮は肩こりや頭痛、腰痛の原因にもなります。
そういった原因を自然に取り除こうとするのがストレッチです。猫や犬もストレッチをします。哺乳類だけではなく、亀もストレッチのような動作を行います。筋肉(骨格筋)がある生物は、何らかのストレッチを行っているようです。筋肉が短縮すると、何かしらの不快さを感じるのでしょう。筋肉をもとの長さに戻したいという自然な反応だと考えられます。
我々人間も、朝起きたときに背伸びをする人は多いと思います。それは「さあ、筋肉を伸ばそう」という意識を持って行っているわけではないはずです。また、別の誰かが「ストレッチしなさい」と指示しているわけでもありません。
筋肉の短縮を解消したいから、自然に伸ばす。おそらく、脳から「筋肉が縮んでいるから伸ばしなさい」という命令が出されているのでしょう。ウイルスなどと闘う免疫と同じように、ストレッチは筋肉が縮んだことによる不都合を解消するために、人の体に備わっている「機能」なのです。「あくび」のようなものだととらえればわかりやすいでしょう。
※本記事は、2017年に公開した記事に加筆・修正を加えたものとなります
写真/長谷川拓司
長畑芳仁(ながはた・よしひと)
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP