第2回ではプロテインにさまざまな種類があることを紹介し、第3回からは第2回で紹介した分類について、桑原さんに詳しく解説してもらいました。今回はホエイペプチドについて。
ホエイペプチドとは、ホエイプロテインのWPC(純度が80%前後のプロテイン)を、酵素を用いて加水分解してペプチドにしたものです。
ペプチドの定義が曖昧なところもあるのでどの程度の分解かは明確ではありませんが、分子量からするとざっと50個くらいのアミノ酸が繋がった状態にしているものが多いように思います。
ペプチドはタンパク質よりも吸収が速いという特徴がありますが、分解を進めるほど味的に苦みが生じてしまい、水などでシェイクして直接飲用するタイプには向かなくなってきます。ジペプチド(アミノ酸が2つ)やトリペプチド(アミノ酸が3つ)まで分解したホエイペプチドの製品も存在していますが、結果としてあまり細かいペプチドにまで分解をするのではなく、ぎりぎり苦みなどの味的な部分をクリアできているところでとどめている製品が多いと思います。
また、分解を進めれば進めるほどコストもかかってくるので、価格的な問題も生じてきます。昨今人気のEAAと同等の価格になってしまうのであれば、むしろEAAでいいのではないかという発想も生まれてきますので、このあたりの判断が難しいところでもあります。
プロテインよりは吸収スピードが速いのは間違いありませんし、栄養価的にもホエイという点で非常に優れていますから、摂取シーンなどを限定して活用すれば価値の高いサプリメントにもなりえます。
誤解が多いのは、仮にジペプチドやトリペプチドまで分解したとしても、それは必ずしも希望のアミノ酸が繋がったペプチドではないという点です。例えば、バリン-ロイシン-ロイシン-ロイシン-イソロイシンといった繋がりのペプチドではなく、あくまでも元はWPCであったものを分解してペプチドにしたものということです。
EAAとホエイプロテインの中間なのでどっちつかずという状態になるのか、双方のメリットを受け継いだ万能型のサプリメントになるのか、これからの動向に注目したいですね。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。