コンテスト当日よりも、翌日のほうが筋肉の張りがよかった。これはボディビルにおける「あるある」ネタである。選手たちは筋肉をパーン!と張らせた状態でステージに立てるように、大会当日は炭水化物をたくさん食べてみたり、舞台のそでで腕立て伏せをしてみたりするのであるが、筋肉の張りのピークを出番のタイミングに合わせるのは経験が必要で、なかなかに難しいものだ。実のところ、筆者はこれまで一度もうまくいったことがないという体たらくだ。大会終了後にドカ食いをして、朝起きたら筋肉にエネルギーが充満してしまい、バキバキの体になっている。毎年、その繰り返しだ。
出番まであと数分。「今回こそは!」という気持ちで舞台袖でパンプアップに励むも、疲れが溜まっているのか、筋肉はまったく張ってこない。ダメだこりゃ。
出番直前にゼッケン番号順に整列する。ちなみに、番号は身長順で、背の低い人から並んでいく。パンプアップ前とさほど変わらぬ状態のまま列へ。ちなみに筆者の番号は「10」。「9」番と「11」番は20代の選手。様々な年齢の選手が横一線になって競いあう。これもボディビル競技のおもしろいところではある。
練習時間を確保できなかったので、ポージングはほぼぶっつけ本番。ボディビルを始めた当初、もっとも驚いたのがポージングのキツさと難しさ。筋肉に力を入れた状態をキープしなければいけないので、すっごくシンドイのです。で、約1年ぶりにやってみたポージングは……。
結果は予選敗退。今年も決勝ラウンドには進めませんでした。敗因は「努力不足」です。
大会の1カ月ほど前から、なんとかくこのような結果は予測できてはいた。ただ、負けることは目に見えているのに、トレーニングと減量をやめることはできなかった。なんのためにこんなキツいことをしているのか、自問してみても明確な答えが出てこない。これは不思議な感覚だった。
減量期間中、とくに後半になったあたりで「コンテストに出場するのはこれで最後にしよう」と思うのもボディビルのあるあるネタ。筆者も「今年は棄権しようかな」「もう来年は出るのをやめよう」といった思いが何度も脳裏をかすめるも、その反面「減量幅を5kg以内に収めれば、もっと楽に調整できるのでは」「オフシーズンの食事をもっと工夫してみよう」と来年に向けて対策を立てる自分がいた。たぶん、またいつか出場するんでしょうなと遠い目。楽しいか、楽しくないかと言われれば決して楽しいわけではなく、キツいかキツくないかと言われれば間違いなくキツいのだけれど、かといってやめる気にもなれない。ボディビルって不思議な競技です。