【坂井Pのイチオシ】「血を吐くほどのトレーニングをしてリングに立つことに美を感じます」中野たむ③




マルチテレビプロデューサー・坂井美継さんの感性をくすぐる人たちを紹介するこのコーナー。今回は中野たむさんの第3弾。ハードな練習にもぶつかっていく彼女が考える美とは? そして彼女がこれから進む道についてです!

――プロレスラーとして理想の体重・体型になれた今は、どのような食事をとっているのですか?

中野 以前ほど糖質・脂質のカットはしていないですけど、気をつけてます。朝は白米を食べますし、鶏肉をサバにしたり、別のお肉にしたりして、それまでは鶏肉だったタンパク源を、他に置き換えるという意識でいます。お祝い事だったら、焼き肉にも行きますしね。私、甘いものが大好きなんですよ! ポテチもパンケーキも、大好き。制限する前は、お菓子しか食べていなくて。ダンサーのときは、そうでした。不摂生でしたね。でも今も1週間に1回ぐらいは食べますよ。その分、トレーニングをがんばればいいかなって。

――自身の体の、長所と短所を教えてください。

中野 ハムストリングスが強くて、デカイので、スクワットは得意です。ハムが強いと、ジャンプ力がある……んだっけな? 弱点は、腹筋。ダンサーのころから、腹筋はずっと苦手意識があって、まだまだ鍛えたいなって。芯がないから、バンと蹴られたら、フラフラしちゃう。

――かつてはアイドルグループ・カタモミ女子の一員でしたが、モデル活動もしていましたよね?

中野 ファッション雑誌だったら『Soup.』とか『KERA』にスナップを載せていただきました。あと、『ザ・ノンフィクション』に出てからは、『B.L.T.』の取材もありました。

――モデルは傷が厳禁で、プロレスラーは傷が勲章。この折り合いは、どのようにしてつけていますか?

中野 私は美しさって、ハードなことをやっているからこそ、出ることもあると思っています。汗まみれになって、青アザをつくって、涙と鼻水でグシャグシャになっている姿って、すごく美しいと思うんです。血を吐くほどのトレーニングをしてリングに立つことに、美を感じるし、青アザができると、「強くなったな!」ってうれしくなるんです。勲章じゃないけど。最近は、有刺鉄線デスマッチルールの試合をするようになって、今日も背中に傷跡がたくさんあるんですけど。気には、なるんですよ。でも、試合中はアドレナリンが出ちゃって、殴ったり、殴られたりが楽しくなっちゃう。それも含めて、“中野たむの美しさ”を出せればいいんじゃないかって思います。

――大仁田厚さんと展開しているデスマッチ。怖くないですか?

中野 めちゃめちゃ怖い! 死ぬかもしれないし、試合前はいつも「始まらなければいいのに」って思っています。でも、それさえも、芸術的に見えてきちゃった、2回目か3回目かに。違う領域に行っちゃったというか。今は、大仁田さんや周りの方がつくっている世界を、いつかは自分でつくってみたいなぁと思うようになっています。

――最後に。今、筋トレに励む女性が増えています。そんなみなさんにメッセージを。

中野 筋トレは、単純に楽しいです。汗を流すことは、ストレス発散にもなりますし、生活に覇気を持たせられます。私、実はマイナス思考なんですけど、落ち込んじゃったときは、筋トレをするようにしているんです。なぜかと言うと、筋トレをすると、すべての邪念が取り払われるんです。これは、ほんとっ! 自分の体と向きあって、汗を流すことで、嫌なことを忘れられたり、リセットできたり……。前向きな気持ちになれて、体もキレイになれて、一石二鳥。実際、体を動かしている人って、若いですもん。


――確かに、そうですね。女子プロレスラーも含めて。

中野 年齢不詳が多いこの女子プロ界で、なんでプロレスラーがこの仕事を続けてるかというと、きっと、体を動かすことで、人生の希望をそこに見いだしているからだと思うんです。科学的なことはわからないですけど、体を鍛えるということは、人生を豊かにする。自分が筋肉と一緒に、ステップアップしていくというか。思いどおりにならないことが、人生にはたくさんあるけど、筋肉は裏切らない、絶対に。外面の強さは、心の強さにつながるから、筋肉ってすごいんですよ。自分で話していて、今、そう思いました(笑)。

――実践者として、説得力がありますね。

中野 まだ、紆余曲折してますけどね。でも、私、中野たむは、これからも自分の体と相談して、いろんなことに挑戦していきたいと思います。中野たむだけが追求できる美しさを見つけていきたいなって、今日、このインタビューを受けて思いました。天井から頭を吊られている感覚とか、歯みがきのときに腹筋に力を入れてみるとか、そんな些細なことで扉は開かれると思うから、みなさんもいろんなことに挑戦してほしいです。私も……ね。

聞き手/伊藤雅奈子 撮影/神田勲

<取材協力>
ヒロ鍼灸整骨院