プロテインがおいしくなった秘密②
時代の最先端を行くDNSに直撃取材 第2回




アスリートファーストの思いから生まれたのが……

日本で「おいしいプロテイン」を開発したDNS。彼らの挑戦はまだまだ続く。彼らが取り組んだのは、これも今までまったくなかった「飲むプロテイン」の開発だった。

 
「DNSホエイプロテインG+」のリリース後も、満足することはなかった。
 
外山「一つは価格です。もっと買いやすくするためにホエイだけ、グルタミンなどを入れずに作ったらどうなるだろうと『DNSプロテインホエイ100』の開発に着手しました。1㎏4800円が衝撃的な価格だったとしても、そこまでのスペックはいらないからもっと手軽に使いたい人もいるかもしれない。最終的には1㎏で3900円まで価格を下げることに成功して、かなりアメリカの基準に近づけました」

しかし、すぐに次の課題が明らかになった。

外山「もう一つはさらに吸収スピードを上げること。ホエイ100とは逆に、価格ではなくてスペックを求める人もいるかもしれない。1秒でも早く吸収を、ということでホエイペプチドとグルタミンペプチドのみで『DNSホエイプロテインスーパープレミアム※』」を作りました」
(※ホエイプロテインスーパープレミアムのリニューアル前のバージョン)

2003年、「G+」「ホエイ100」「スーパープレミアム」の三本柱で基本のラインナップを作り上げると、次に液体プロテインとゼリー、バーといったサプリメントの開発に着手する。プロテインを日常的に使うようになったアスリートから、シェイカーを洗うのがめんどくさい。そもそも混ぜるのがめんどくさい。といった意見が出たためだ。これらの手間を解決しつつ、間食としても摂取できるものを作り始めた。

外山「プロテインドリンクとバーはアメリカにありました。アメリカでは『ゼリーは子どもの食べ物』という認識があるらしいですが、日本ではゼリー飲料が流行していたので、いける! と。どれも作りづらかったんですけど、ドリンクは本当に苦労しました。そもそもタンパク質は熱を加えると固まる特性があるんです。タンパク質があまり含まれていないドリンクであればよかったのかもしれませんが、それではプロテインドリンクとは呼べない。工場の方に何度『そんなにたくさんタンパク質が入ってるのはありません』と言われたことか(苦笑)」

誰もやったことがないからこそ、挑戦する価値がある。全員が情熱を持ち仕事を進めていった。

外山「ゼリーに関しては世界中どこを見ても前例がないので、全くノウハウがなくて。見た目がマヨネーズみたいに濁っちゃって途方に暮れたこともありましたし、プルプルに固まって飲めない状態になってしまったこともありました。最後は理想的なミールリプレイスメントゼリー、1食を置き換えても大丈夫というJel-Xという製品ができて本当に良かったです。結果的に製品化できたから『できたじゃん』って言えるんですけど、当時は途中まで誰もわからないですから。ほんとにできるかどうかわからない中で、あるのは熱意だけ。パッションで突き進んでいました」

「飲むプロテイン」を開発したのは社員全員のパッションが原動力だった

ときには24時間稼働している工場で朝方まで立ち会うこともあった。

外山「社内はみんな、よっしゃやるぞ! という感じでした。工場の方々にも常々そういうことはお話しして。どこまで共感していただけたかどうかはわかりませんが、聞いたことがない会社だけどやってくれるんじゃないの、みたいな期待感というか、一緒にやっていこうみたいな気持ちは持ってくれたのかなと思います。『会社の仕事でやらされてるんで~』ということではないので、熱意は感じ取って頂けたかなと思います」

この熱意は、現場担当者を引き継いだ今も受け継がれている。外山さんの話を眞里谷さんが引き継ぐ。

眞里谷「現在も、パッションでぐいぐい押していこうぜというのは同じです。作業手順も創業当時とほぼ同じで。選手やスタッフの意見から『新しいものを作ろう』という話があって、まずコンセプトを決めて、使う原料や成分を考えて。次においしくするための試作・開発、味の評価、パッケージやサイズを決めて本格製造を始める、という流れです。私たちは設計図を書いて、あとは工場で実際のものを作っていくイメージになります」

G+の誕生から10年余り、2014年にDNSは全商品に対して大幅リニューアルを行った。例えばスーパーストイックは甘味料を削ぎ落して「ストイック」と改称。そして2016年には最上級グレードのプロテインである「スーパープレミアム」の見直しも行った。

眞里谷「一番いいプロテインはなに? って言われたときに『これだよ』と自信を持って言える、最上級のスペックを持たせました。筋肉を作るために最も効率的で合理的なプロテインにしようと。現行のスーパープレミアムには、体内ではロイシンが代謝されることで生成されるHMBという成分を入れています。HMBは筋肉の合成には効果があるというデータが数多くある成分です。1㎏で税込7560円ですが、このスペックで7000円台に抑えることができたのはほぼ奇跡ですね(笑)」

パッケージはもちろんパッションレッドを採用し、筋肉質な男性を前面に押し出した。

眞里谷「商品って、中身だけじゃなくてデザインもサイズも形も大事で。それを見たときに『あ、自分に必要だ』って思えないと買わないじゃないですか。コンセプトはもちろん、ターゲットの性別や年齢など、総合的に考えています」

眞里谷さんたちは、リニューアルの際に、ひとつの戦略を立てた。

眞里谷「リニューアルした際に、『サプリメントをライフスタイルの中にも組み込んでもらおう』という思いが生まれました。例えばホエイ100やG+はカッコいい体の人が普段使いできるイメージで、良い体を想起させるようにジーパンを履いてもらっています。ストイックはタンパク質しか入ってないので、全体をモノトーンでバキッとした質感で表現して。スローは栄養補給が長く空いてしまうとき、例えば寝る前に摂って頂きたいのでシーツとともに寝ているイメージです。スーパープレミアムは筋肉をつけるというのを第一の目的にしている人に摂ってもらいたいので、ジムで撮影して現場感を出しました」

モデルはアメリカンフットボールIBMビッグブルーに所属する栗原嵩選手。DNSの契約選手であり、肉体もプレーも超一流のアスリートだ。

眞里谷「私たちは『アスリート』を自分をよりよくするために自らを鍛える人のことと定義しています。スポーツ選手も当てはまりますし、一般の方であってもアスリートと呼べる方はいます。彼らが日常生活で気をつけていることは、人間であれば取り入れられる要素はあるはずです。アスリートのためのアスリートの会社だからこそ、世界基準の考え方や行動を日本中に広めていきたいと思います」

 

取材・文/松川亜樹子

取材協力
株式会社ドーム
社長室 サプリメント事業部
部長 外山裕之氏
開発チーム チームリーダー 眞里谷慎司氏
戦略チーム チームリーダー 岡先聖太氏