減量について【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第2回】

VITUP読者の皆様、こんにちは。前回のコラムは自己紹介で終わってしまったので、さっそく第2回のコラムをお届けします。

今回のテーマは「減量」。

前回のコラムで少し触れたように私はレスリング選手だった学生時代、試合の前には平均8~10㎏、最大12㎏の減量を経験しています。あくまでも試合で勝つことを目的とした減量であり、あいにくダイエットしたい方にオススメできるものではありません。ボクシング、柔道、レスリング、ウエイトリフティング、ボディビル……階級別で争われる競技には減量がつきものです。競技種目や人によってそのやり方はさまざまだと思いますが、残り1㎏がきついのはどんな種目であっても、誰であっても同じでしょう。
3月1日におこなわれた山中慎介選手vsルイス・ネリ選手のボクシング世界バンタム級王座決定戦は、減量を巡って大きな波紋を呼びました。この試合に関してはすでに多くの報道がなされているので詳細は割愛しますが、前日計量で山中選手が一発クリアする一方で、ネリ選手は1回目の計量で2.3㎏オーバー。2回目でも1.3㎏オーバーで失格となり、王座をはく奪されたのでした。減量を経験したことがある人ならば、この数字が常識ではありえないものであることがわかります。本気でリミットまで落とす気があったとは思えないレベルです。

もしかしたら減量の経験のない人は「1㎏でそんなに違うの?」と思うかもしれません。確かに減量をしていないナチュラルウエイトの状態での1㎏は、それほど大きな差はないと思います。しかし、トップレベルの闘いで減量幅が大きい者同士となれば、それはより大きな差となって表れます。前述したように減量で本当にきついのは最後の1㎏、最後の数百グラムです。その一番きついところからギリギリまで絞った人間と、余力を残している人間とでは、その消耗や回復はまったく違ってきます。

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個人的なことになりますが、この1㎏の違いによる闘いをあえて経験したことがあります。高校時代のことで、舞台は春の全国選抜大会への出場権をかけた関東選抜大会。この大会は東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨の1都7県の予選を上がってきた24名が7枚の全国への切符をかけて争う大会でした。開催時期が2月の寒い時期ということもあって、高校生の健康面を配慮して計量は各階級1㎏オーバーまで認められるというレギュレーションでした。最後の1㎏はきついので選手にとってはありがたい話ですが、この時、私はあえてリミットまで体重を落として試合に臨みました。目標は予選の突破ではなく全国制覇だったため、先生から1カ月後の全国選抜をにらんでリミットまで体重を落とす指示を受けたのでした。結局この大会は2位で予選を突破したのですが、たかが1㎏、されど1㎏。相手が大きく感じたり、自分のパワーダウンが気になったりして不安を感じたことをよく覚えています。

高校生レベルでもギリギリのところからの1㎏は大きな差となります。それが世界戦ともなればどれだけ大きなハンデとなるか容易に想像がつきます。ネリ選手の競技に対する冒とくは許しがたく、引退をかけてこの試合に臨んだ山中選手の心中を思うと、不憫でなりません。相手に勝つ前に自分に勝たないと勝負の舞台にすら立てないのが、減量のある競技です。ネリ選手は試合には勝ったのかもしれませんが、自分との闘いに勝てなかった彼を真の勝者と認める人はいないでしょう。