プロレス界屈指のパワーの持ち主・宮本和志③【人物クローズアップ「筋の旅人」】




 

プロレス界屈指の力自慢・宮本和志選手のインタビュー第3弾。今回は現在のトレーニング方法や取り組み方についてのお話です。ベンチプレスやスクワットは300㎏というパワーを生み出す方法とは!?

トレーニングは食事と一緒
毎日やらないと寝られない

――現在のトレーニングについてお聞きします。基本は毎日ですか?

宮本:日曜日以外は毎日です。月曜日が足、火曜日が胸、水曜日が背中、木曜日は肩、金曜日は二頭筋、土曜日が三頭筋。種目は4~6です。胸、足、背中の大きい筋肉に関しては、6種目やるときもありますし、二頭筋とか三頭筋になるとちょっと種目も少なくなります。

――メニューはご自身で考えているんですか?

宮本:自分で考えています。一つ決めていることは、前回の内容と同じにしないということです。同じ種目を続ける筋肉が刺激に慣れてしまうので、前の週と同じトレーニングはやらないようにしています。たとえば今日は肩の日でショルダープレス、フロントレイズ、サイドレイズ、リアレイズでしたが、次回は違う種目にします。同じ種目をやるとしてもサイドレイズならワンハンドでやるとか、座ってやるとか、まったく同じことはやらずに刺激を変えるようします。トレーニング歴も25年くらいになるので、メニューの引き出しはそれなりにありますから。

――すごく考えているのですね。

宮本:トレーニングはライフワークというか、食事するのと一緒ですよね。だから毎日やらないと寝られないぐらいですよ(笑)。体の調子が悪くなる。メニューを変えるとは言っても、ビッグスリーは別です。これをやらないことにはトレーニングをしたことにはならないと思っています。僕自身、プロレスという競技をやっているということもありますけど、木で言ったら、大木をつくるためにはビッグスリーだと思うんです。木の枝をつけるには、二頭筋とか三頭筋とか小さい筋肉。まず大きい筋肉をがっちりやって、その後にいろいろ肉付けをするという感じです。

――その考え方はずっと変わらず?

宮本:ずっとですね。たとえばトレーニングが2種類あって、簡単なものと難しいものがあるとしたら、絶対に難しいほうをやるようにします。そうしないと筋肉に効いてこないし、体に負担をかけないと成長しないですから。その考え方はトレーニングを始めてから25年間変わっていないです。

――これだけ筋肉がついていると、そこにさらに負荷をかけていくのは大変ではないですか?

宮本:最近ではスクワットも300㎏ぐらいでやらないとダメなんですけど、重量だけではなくて、うまくウエイトを筋肉に乗せるという意識を持って、常に考えながらやっています。

――ベンチプレスはどれくらい挙げるんですか?

宮本:昨年、ロード・ウォリアーズのアニマル・ウォリアーがセコンドについてくれる試合があり、日本のヘビー級レスラーとして恥ずかしくないように体を仕上げようと思ってトレーニングをしていたんです。その時期にパワー(リフティング)の挙げ方ですけど、300㎏まで挙げたことはあります。ただ、それは筋肉を大きくするとか、強くするというのとは違うやり方なので、普段はやりません。あくまでも記録として300㎏まで挙がったので、それを一つの目安として、今度は200㎏ぐらいでいかに効かせるかということを考えてやっています。今は200㎏でも止めたりということもできるし、ナローでやったり、ワイドでやったりとか、ハイレップスでやるときもあれば、静止してやるときもあるし、やり方はさまざまですね。

――一般トレーニーの方にアドバイスもいただきたいのですが、宮本選手ぐらいの高重量を挙げようと思ったら、どのような段階を踏んでいけばよいのでしょうか?

宮本:トレーニングをしている人にとって、重さって一つの目安だと思うんですよね。人が挙げているのより重たいのを挙げたいと思うでしょうし、以前よりも重たいものが挙げられるようになれば、それが成長の証になります。必ずしも重さがすべてではないですけど、一つの目安にはなりますよね。ただ、高重量を追い求めるとケガをする恐れもあるので、それだけはまず気をつけないといけないと思います。そうしたなかで重たいものを持ち挙げたいと思ったら、日々のトレーニングと自分を信じることが大事だと思います。やる前に「ちょっと難しいな」とか「怖いな」と思ってしまったら、必ず自分にブレーキがかかるので、高重量は挙がりません。高重量にチャレンジするときは自己暗示ではないですけど、「これは絶対に挙がるんだ」「挙げるぞ」と自分に言い聞かせてやると、自分の持っている力を発揮できると思います。

――たしかに不安な気持ちでは力は発揮できませんね。

宮本:あとは人それぞれルーティンがあると思います。ベルトを締めて、リストラップを巻いて、「よしいくぞ!」っていうルーティンも大事ですね。自分のルーティンをきっちり決めて、いけると思ってトライする。パワーリフティングの試合では、アンモニアをかいで覚醒させてやる人もいるんですけど、そういうのと似ているかもれないですね(笑)。

 

※次回はこれからの体づくりやモチベーションの高め方について

取材/佐久間一彦 撮影/安 多香子

宮本和志(みやもと・かずし)
1979年2月22日、福島県出身。学生時代は相撲、アームレスリング、ボディビルでならす。2000年に全日本プロレスに入門し、2001年8月19日、後楽園ホールでの馳浩戦でデビュー。2004年には無期限アメリカ遠征を行ない、APWテレビジョン王座、HIWヘビー級王座、TWEテキサスヘビー級王座など数々のタイトルを獲得。2005年に全日本プロレス退団後は、さまざまな団体で自慢のパワーを発揮している。