【Trainer’s File】清水康志さん




実際に指導現場で活躍するパーソナルトレーナーに話を聞くこのコーナー。第1回は本誌の企画でもお馴染みの清水康志さんに指導のときに心がけていることなどを伺いました。

 

一般の人にもわかりやすく伝えること

自身も本格的にトレーニングを始めたのは遅かったという清水さん。トレーニングに取り組みだしたきっかけと、パーソナルトレーナーを目指すようになった経緯から聞いてみました。

「もともとは空手をやっていて、トレーニングもしていましたがあくまでも空手のための補助という位置付けでした。空手を辞めたときに“このまま体を動かさなくなるのは良くないな”と思い、それからですね。本格的にというか、それまでサブだったトレーニングがメインになったのは。始めは自分が教える立場になるとは想像していませんでしたが、先輩たちに親切に指導してもらったりしているうちに、自分も何かわからないでいる人がいたら、教えてあげられるようになりたいと思うようになりました。その気持ちが今のパーソナルトレーナーという仕事に繋がっているのかもしれませんね」

そんな清水さんがパーソナルトレーナーとして活動するようになった大きなきっかけは、2012年に出場したベストボディ・ジャパンというコンテストで優勝したこと。これによって、本格的にパーソナルトレーナーへの道を歩むことになりました。

「自分としては結果はもちろんうれしいですが、それが自信になったということはないのですが、周りの人たちが“その知識や経験を活かすべきだ”とおっしゃってくださって、自分も何かの役に立てるならと、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)の指導員の資格を取ることにしました。内容は丸2日間の講義を受けて、その後に試験というものなのですが、講義をしてくださるのが石井直方先生や谷本道哉先生といった錚々たる面々で、その講義を受けられるだけでもためになりました。試験にも無事合格し、パーソナルトレーナーとしての活動を始めることになりました」

パーソナルトレーナーとして、ジムでの指導を行うようになった清水さん。指導の中で心がけていることを聞いてみました。

「相手のことをよく見るということと、とにかくわかりやすく伝えることですね。実際にジムで初心者の方を指導していると、専門用語でなくても言葉の意味が伝わらなかったり、意味はわかってもその通りに体が動かせないという人もいらっしゃいます。例えば“肩甲骨を寄せる”といっても、体を動かすことに慣れていない人は、どうやっていいのかわからない。そんな場合は“大きく息を吸って胸を張ってみましょう”と言い替えたりします。一度できてしまえば、あとは問題ないのですが、そこにいくまで、どう日常的な言葉に置き換えて伝えるかは、常日頃から考えていますね」

どんな時にパーソナルトレーナーを利用すべき?

そんな日頃の努力もあり、指導がわかりやすいと定評があるが、これまでに多くの人に指導を行ってきた経験から、どんな人がパーソナルトレーナーを利用するべきなのでしょうか?

「一番は、初めてトレーニングをされる方ですね。やはり知らないことが多いですし、知らないまま我流で行うと、ケガをしてしまう場合もある。逆に言えば正しい知識やフォームを身に付けるチャンスでもあるんです。初めに正しいフォームを身に付けておけば、後からの成長にも大きく関わってきますから。クルマを運転しようと思えば、最初はみんな教習所に行きますよね? それと同じだと思って、最初はパーソナルトレーナーを付けたほうがいいです。

あとは、トレーニングをしていて停滞を感じたときや、調子が良くないときです。客観的に見ると不調の原因が姿勢にあったりすれば、すぐわかりますし、新しい方法を採り入れれば停滞していた記録も伸びるはずです。同じ動作でも意識を変えるだけで効果が大きく違ったりしますから、最近伸び悩んでいると感じているならパーソナルトレーナーを付けてみてください」

近年は高齢者向けの筋力トレーニングなども注目を集めていますが、そうした部分でも心がけていることはあるのでしょうか?

「何といっても脚の筋肉ですね。脚は大きな筋肉が多いですが、使っていないと衰えるのも早いんです。ですから、上半身中心のメニューを希望される人にも、できるだけ脚のメニューを組み入れるようにしています。目立つのはどうしても上半身なので、腕や胸などの筋肉を付けたいという人が多いのですが、しっかりした土台ばないと立派なビルは立たないのと同じで、下半身が弱っているのに上半身だけを鍛えるとバランスが悪くなってしまったりしますから」

また、最近は都市部と地方の“フィットネス格差”のようなものも気になっているという。

「やはりどうしてもトレーニングジムもパーソナルトレーナーも都市部に集中しがちですからね。でも、高齢化の進む地方こそ、高齢者向けのフィットネスなどに力を入れるべきだと思うんです。自治体が体育館を作ったり、箱モノは整っているところも増えていますが、せっかく設備があっても活かされていなければ意味がありません。そこにきちんとしたパーソナルトレーナーがいて、それぞれの方に応じた指導をしたりメニューを組んだり、場合によってはセミナーをしたりということができれば、格差も解消されていくと思います。そのためなら、私はどこへでも足を運ぶつもりです」

清水康志
1969年生まれ。日本ボディビル・フィットネス連盟2級指導員。2012年に出場したボディコンテストをきっかけに、トレーナーとして活動開始。30歳を過ぎてから本格的なトレーニングに取り組んだ自身の体験をもとに、「トレーニングを始めるのに遅すぎるということはない」「安全に正しく取り組めば必ずよい結果が出せる」をモットーに幅広く活動中。