「太極拳元世界チャンピオン」の女性社長とジム経営者対談!【髙田一也のマッスルラウンジ 第54回】薩田有紀代さん①




大好評「マッスルラウンジ」。今回は千代田区飯田橋と港区田町に店舗を展開する、完全個別指導型パーソナルトレーニングジムBiP(ビップ)の代表取締役を務める薩田有紀代さんが登場。太極拳の元世界チャンピオンという異色の肩書を持つ薩田さんは、どんな経緯でパーソナルトレーニングジムの経営を始めることになったのでしょうか。

「マニュアル通りにいかないので、奥が深いなと」(薩田)
「外見以上のプラスの効果を感じていただきたい」(髙田)

髙田:薩田さんはどんな経緯でジム経営をされるようになったんですか。

薩田:私が立ち上げたわけではないんですが、もともとBiPとして3店舗やっていたところを、今のオーナーが前のオーナーから買ったんです。もともと、今のオーナーは田町店のお客さんとして通っていて結果が出たので、このジムいいなと思ったらしくオーナーにお会いして、「このジムを譲っていただけませんか?」と相談したそうです。「じゃあ田町店だけじゃなくて、3店舗全部お譲りしますよ」と買ったのが、去年の2月です。オーナーは他の会社で手一杯だったので、知り合いの知り合いだった私にお話が来て、去年4月から参画しました。もともと箱もあり、トレーナーもあり、お客さんもいる状態でスタートしています。

髙田:ジム経営に携わられていたことはありましたか?

薩田:ないです。それまでは、マーケティングリサーチの会社でリサーチャーをやっていました。いろいろな自動車メーカーさんとか、アパレルメーカーさん、食品スーパーさんとかのリサーチの仕事ですね。

髙田:この業界に入ってみていかがですか。

薩田:いやぁ、奥が深いですね。お客様は一人ひとり体が違うので、同じようにやっても結果は出ませんからね。マニュアル通りに「はい、どうぞ」とはいかないので。楽しませるポイントもそれぞれ違うので、奥が深いなと思います。

髙田:私はそのクライアントさんにとっての最適なトレーナー像を構築するという考えで指導しています。その方がどういうトレーナーを求めているかを、どれだけ識別できるかがポイントだと思っていて。

薩田:なるほど。

髙田:自分のコンセプトは曲げずに、どれだけ伝わるように工夫するかという感じです。もう17、18年くらいパーソナルトレーナーをやっているので、そんなに難しいことではなくなってきました。

薩田:うちのトレーナーはみんな20代で若いので、まだまだですね。

髙田:若手には、とにかく自覚を持たせることが大切だと思っています。クライアントさんから見たら、若いも若くないも関係ないので。研修の時も「20歳であろうが一時代を築いているような人もいるわけだから、年齢のことは考えないように」と教えるところから始めます。

薩田:それはそうですよね。お客様はプロを求めて来られているわけで。お客様の中にはいろいろな年齢や職業の方がいらっしゃるので、会話をする中で疑似体験ができると思うんです。たとえば、経営者ってこういう仕事なんだとか、俳優はこんな仕事なんだとか。そこから学んでくださいねという話をトレーナーにはしています。

髙田:薩田さんは現場にも行かれるんですか。

薩田:行きますよ。田町店は事務所と同じビルに入っているので、しょっちゅう往復しています。見学とかお客様のカウンセリングを私が担当することもあります。

髙田:そういったノウハウは勉強されたんですか。

薩田:トレーナーを見て盗んだり、他のスポーツジムさんにも行かせていただいて自分が受ける側になってみたり、とかですね。

髙田:そうすると、クライアントさんの求めているものが何となくわかると。

薩田:そうですね。マーケティングリサーチって、聞くお仕事なんですよ。お客様のニーズがどこにあるのかなというのは、もともとやっていた部分なんです。

髙田:自分がパーソナルトレーナーになった頃は、パーソナルトレーナー自体がそんなにいなかったですし、それで生計が立つ人なんて日本では数えるほどしかいなかった時代だったんです。そんな状況で、まず自分だったらどういう人から習いたいかを客観的に考えたんですよね。年上の方から見ても、この人にみたいになりたいと思える要素を少しでも持ったトレーナーでなければならないだろうと思いました。

薩田:そういう生きざまは顔に出ますし、体にももちろん出てきますし。

髙田:そうですね。それを続けることによって、どれだけ人生にメリットがあるのかを伝えられるか。外見はわりと簡単にクリアできますし、指導するのも比較的簡単なんですけど、外見以上のプラスの効果を感じていただきたいという思いがあります。

薩田:うちのジムでも、最初はそんなに笑顔が出なかったお客様がいつの間にか笑顔になったり、会社でも「明るくなったね」と言われるようになったというお話も聞きました。

髙田:運動は精神的なプラス効果も高いですからね。

薩田:体が変わると自信がつくのかもしれないですね。

髙田:そうですね。現場のパーソナルトレーナーに求めるものはありますか。

薩田:お客様がわざわざお金と時間を投資してくれるのは、「結婚式までに痩せたい」とか、「スーツをかっこよく着こなせるようになりたい」とかの先に、何かがあるからだと思うんです。それぞれの「理想の自分」みたいなものが。でも、最初はなかなか本心を言いにくいと思うので、トレーナーは「寄り添う力」のようなものをつけなくてはいけないなと思います。今もうちのトレーナーはできているとは思うんですけど、もっとつけていかないといけないですね。

髙田:自分はウエイトトレーニングをやったことによって人生がすごくよくなったので、みんなも絶対やったほうがいいよというところが始まりなんです。

薩田:髙田さんご自身もウエイトトレーニングをやられてから変わったんですか。

髙田:この連載でも何度かお話をさせていただいているんですが、自分は生まれつき体が弱かったんです。ほとんど運動をしたことがなかったですし、体育も全然できなかったですし。体もすごく華奢で、大人になっても体重が50kg前後から全然増えなかったんです。こういう風に生まれてきたのは運命だから仕方がないとあきらめていた部分があったんですけど、25歳の時にこんな自分でいいのかなと思い立って、何とか改善しようと始めたのがウエイトトレーニングだったんです。筋肉をつけたいというよりは、とにかくしっかり生きていくためにはどうしたらいいかを考えた時に、鍛えて強くなることかなと。それまでまったく運動ができなかったので、激しい運動には目が向かなかったんですよね。徐々に鍛えられるウエイトトレーニングだったら、もしかしたら自分にもできるんじゃないかと思って。

薩田:水泳やマラソンなどにはいかずに。

髙田:子どもの頃にやったこともあったんですけど、無理だったんですよね。ジムもちょっと敷居は高かったですけど、通い始めたら数ヵ月でいろいろなところが改善されて、そのままハマっていったという感じです。

取材・構成・撮影/編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP

薩田有紀代(さつた・ゆきよ)
株式会社BiP代表取締役社長。大日本印刷株式会社、株式会社クロス・マーケティングを経て2018/4~BiPに参画。会社員時代から、太極拳の武術的動きの真髄を用いた身体の根本的な動かし方と、陰陽五行論に基づく考え方をお伝える活動を行う。印刷会社における研究所や工場の生産性向上・人材育成・教育の経験、消費者調査やマーケティング理論に基づき、独自の視点でBiPの経営を行っている。「人はなぜ、カラダを変えたいのか?」。人間心理に基づく、BiPオリジナルトレーニングメソッドを提供。
●太極拳実績
・2013年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:白級個人戦・団体戦)
・2015年、太極拳世界大会。
黄級個人戦2位、藍級団体戦3位
・2017年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:黄級個人戦)
BiP公式HP