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ヴェイパーフライ、レーザー・レーサー……競技に使う用具の話【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第99回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? ご心配をおかけましたが、肉離れから1カ月が経ち、問題なく歩行できるようになりました。この後はリハビリをして、走ったり、跳んだりできるようにしていきたいと思います。

さて、毎年、正月恒例の箱根駅伝が終わった後は、ジムのランニングマシンが混雑ぎみになります。テレビで学生たちの走りを観た皆さんが、気分だけ箱根ランナーになるからです。本来なら私も箱根ランナー気分で走りたいところでしたが、負傷が完全には癒えていないため断念しました。

箱根駅伝といえば、ナイキの厚底シューズこと、「ヴェイパーフライ」が話題を呼んでいます。高い反発力があり、足への負担が少ないと言われるこのシューズにより、陸上長距離界で好記録が続出しているのです。箱根駅伝では10区間中7区間で新記録が出て、新記録を出した7選手中6選手が、このシューズを使用していました。ところが、世界陸連がこのシューズの使用を禁止にするかもしれないというニュースが報じられました。選手の努力を否定することはできませんが、飛躍的な記録更新の背景には、このシューズの存在があることは明らかであり、遅かれ早かれこうした事態になることも予想できました。

基本的に用具を使うスポーツの場合、競技の進化の歴史は、用具の進化の歴史とも言えます。好記録続出という部分で思い出されるのが、競泳のレーザー・レーサーです。水の抵抗が軽減されるこの水着の出現により、好記録が続出したことを覚えている方もいるのではないでしょうか。2008年の北京オリンピックでは、このレーザー・レーサーを着用した選手により、20個を超える世界記録が更新されました(2010年に使用禁止に)。

用具をつくるメーカーは選手が最大限に力を発揮できるように尽力します。しかし、スポーツは人がやるものであり、主役はあくまでも人間。用具が必要以上に注目されたり、道具の良し悪しで勝負が決まることは好ましいとは言えません。どこまでが許容範囲かというのは、本当に難しい問題だと思います。

小難しい問題は専門家の方に任せるとして、ここではスポーツの用具に関する、雑学を一つ紹介しましょう。

どんな競技でも選手が平等に闘えるように、競技に使用する用具にはある程度の規定が設けられています。たとえば卓球のラケットは、素材の85%以上は天然の木である必要があり(15%以内は違う素材でもOK)、ラバーの厚さは4.0㎜を超えてはいけないという規定があります。また両面は必ず赤と黒でなければなりません。卓球は試合前にラケット交換というルールがあり、ラバーがデコボコに貼られていないか(デコボゴだとボールが不規則な変化をする恐れがあるため)、ラバーが小さく木の部分が露出していないかなど、お互いのラケットの状態を確認します。ラケットは勝負を左右する大事な用具なだけに、それだけ規定が細かいのです。

たくさんの規定がありつつも、卓球のラケットは大きさに関する規定が国際ルールで定められていません。つまり、テーブルのような大きさのラケットを使ってもいいのです(日本国内では「J.T.T.A.A.刻印とメーカー名の表示が必要」という規定があります)。もっとも、大きさは自由とは言っても、大きすぎたら扱うのが難しくなり、小さすぎたら的が狭くなり、いずれにしても不利になってしまいます。ラケットの大きさは規定を設けなくても、だいたい同じ大きさに落ち着くということなのでしょう。うまくできているものですね。

ちなみに重要な用具でありながら、大きさ(長さ)に規定がないのは、アーチェリーの矢も同じです。自分の体に合ったサイズにカスタマイズすることがルールで認められています。また、ボッチャのボールは重量やサイズに規定はありますが、表面の材質や硬さなどには規定はなく、選手がオリジナルのボールを持つことができます。

このように、競技によって用具には規定があったり、なかったりするのです。スポーツの主役はあくまでも選手であり、用具は面白さの一つと考えて見てもらえればいいのではないかなと思います。

 

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。